てきすとぽい
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【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 6
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あの暑い夏
(
如月恭介
)
投稿時刻 : 2014.09.03 21:56
最終更新 : 2014.09.05 21:34
字数 : 1118
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更新履歴
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2014/09/05 21:34:27
-
2014/09/03 21:56:24
あの暑い夏
如月恭介
もうず
っ
と昔のことだけれど、そのころの渋谷の街は、比較的健全な若者たちもけ
っ
こう多くて、どちらかというとお洒落な街に分類されていたような気がする。
僕も違わずいた
っ
て普通な青年で、その暑い夏の日の夜、やはりその渋谷にいた。
「お見合いをすることにな
っ
たの」
「え
っ
……
」
驚いたわけじ
ゃ
ない。彼女の真意が読めなか
っ
ただけだ。なにも言わない僕にしびれをきらしたのか、彼女は眉間にしわを寄せた。
「もう待てない
……
」
「あ、うん
……
」
小さく頷いてみせたものの、じつは彼女の言葉の意味なんてま
っ
たく理解できていなか
っ
た。もちろんそんなことは、彼女にはす
っ
かりお見通しだ。
「もう二十四なのよ。つきあ
っ
て三年にもなるし。私のことどう思
っ
てるの?」
「あ、うん
……
」
言わなくてもわか
っ
てるだろう、と口には出さずに心の中でつぶやいた。でもそれは僕のとんだ勘違いで、彼女が欲しか
っ
たのは、「好き」だとか「愛してる」なんていう、数年もたてば何の価値もなくなるような戯れ言ではなか
っ
た。
僕の煮え切らない態度にいよいよ我慢ならなくな
っ
たのか、彼女はいつになくいらついた様子で、終いにはバ
ッ
グをつかんで、「もういい」と吐き捨てて立ち上が
っ
てしま
っ
た。そして、「私なんてどうな
っ
てもいいんでし
ょ
!」と言い残して、店の出口に向か
っ
て歩き始めた。あわてて僕は後を追
っ
た。あたりまえである。たしかに今と比べれば渋谷の街はず
っ
と安全だ
っ
たけれど、それでもや
っ
ぱり渋谷の繁華街である。放
っ
ておくわけにはいかない。
け
っ
き
ょ
く僕たちは道玄坂まで行き、もう電車もなか
っ
たし、その夜はラブホテルに泊ま
っ
た。そしてその僕の行為が、彼女にしてみればYesとうつ
っ
たらしく、翌日の彼女はいた
っ
て上機嫌で、弾ける笑顔を絶やさなか
っ
た。
それから数日後
――
「いつにする?」
「いや、まだち
ょ
っ
とはやいし
……
」
もちろん、結婚の話だ。ほんとうは迷う理由なんてなにもなか
っ
た。彼女は正直で美しくて、それになにより優しか
っ
た。でも僕は迷
っ
た。いろいろと自信がなか
っ
たのだ。でもそんな僕の思いは、彼女には通じなか
っ
たようだ。
「もういい!」
ガチ
ャ
ンと電話が切れた。
それから三
ヶ
月後
――
僕は横浜の市立病院の廊下で息を切らし、神にも祈る気持ちで佇んでいた。連絡を受けてからまだ一時間たらず、いまだに信じられなか
っ
た。そしてようやく手術室のドアが開き、白衣姿の先生が現れた。そのとき先生の言
っ
た言葉が、いまだに僕の脳裏に焼き付いて離れない。
「残念でした
……
」
交通事故とはいえ、今でも僕は、自分の責任だという思いを捨てきれない。そして暑い夏が来るたび想い出すのだ。かつてのあの渋谷の街の明るい景色と、弾けるような彼女の笑顔を
――
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