来たれ てきすとぽい作家! 800字小説バトル
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投稿時刻 : 2014.10.26 23:41
字数 : 800
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 まどろみの中から目覚めると、駅舎は砂浜にあた。
 あたりがかすかに青白く染まている。薄暗い空間が、波の押せては返す音で満たされていた。
 暗がりの中、幼い子どもがこちらを見ていた。
――お母さまを迎えに来たの
 そう言て走り出した小さな背中を、私は追た。
 セーラー服に身を包んだ少女を見つけた。風が吹いて、肩まである美しい黒髪がさらりと靡いた。私は黙てその背中に近づく。足元に飛沫がかかる。その冷たさに、今が冬であることを知た。
――娘さんが探していたわ
 話しかけると、少女は初めて私に気付いた様子で、しかし驚きより先に嫌悪をあらわに、眉を顰めてこちらを見やた。
――子どもなどいないわ
――でも、あなたを迎えに来たと言ていたわ。四歳ほどの女の子よ
 ますます少女の眉が寄た。
――子どもなどいないわ。四年前に、産まずに殺したもの
 私たちの足元に、またひどく冷たい水が押し寄せた。今までより大きい波は、私たちの足首まで浸し、勢いよく引いていた。
――この海で?
 問うと、険しかた少女の顔が、くしりと歪んだ。
――産んではいけないと言われたのよ。産まなければ、私たちは関係を続けられるし、いつか一緒になろうて、言てくれたのよ。だから、私は、なのに、どうして、先生、先生……
 ほろり、と涙が零れて、頬から顎から滴り落ちた。それが再び押し寄せた波に飲み込まれた。その途端、少女の姿は霧となり消えた。
 水平線の向こうがわずかに赤みを帯び始めた。しばらくすると、穏やかな波を割て、轟音と共に飛沫が上がり、塩水に濡れた汽車が浜に乗り上げた。汽笛が響いた。
――お母さまは?
 現れた女児が不安げに首を傾げる。
――お母さまはまだこちらへは来られないの。さあ汽車にお乗りなさい
――冷たいのは嫌。二度と嫌
――大丈夫よ、もう寒くないわ。次の駅にはお父さまがいらるわ。そうしたら、いつかお母さまがやてくるまで、二人で待ていなさいね
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