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第7回てきすとぽい杯 誤字修正版投稿所
〔 作品1 〕
不戦勝
(
晴海まどか@「ギソウクラブ」発売中
)
投稿時刻 : 2013.07.28 01:20
字数 : 3712
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感 想
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不戦勝
晴海まどか@「ギソウクラブ」発売中
目が覚めた。胃が重たくて、喉がひどく渇いていた。
二日酔いだ、と自分の体の状態を判断し、腕をも
っ
そりと伸ばした。目覚まし時計は、午前八時半を指している。
一人暮らしのワンルー
ムマンシ
ョ
ンの一室。カー
テンの隙間から洩れ入る光で、部屋の様子は一望できた。俺は長袖のシ
ャ
ツにジー
パン姿のまま、ベ
ッ
ドに横たわ
っ
ていて、ベ
ッ
ドの下にはジ
ャ
ケ
ッ
トやトー
トバ
ッ
グが放り出され、脱いだ靴下が左右ばらばらに丸ま
っ
て部屋のすみに転が
っ
ていた。
昨晩、どうや
っ
て部屋まで辿り着いたのか覚えていない。
目覚まし時計のすぐ横に転が
っ
ていたiPhoneに触れた。今日の予定
……
所属している軽音サー
クルの話し合い。
めんどくせー
。口の中で呟いて、だが体を起こした。さすがにサボ
っ
たら、色んな奴に怒られそうな気がする。今日はそういう話し合いの日だ。
ベ
ッ
ドから降りて冷蔵庫にあ
っ
た水のペ
ッ
トボトルにそのまま口をつけて一気に飲んだ。冷たい軌跡が体に刻まれ、目が覚める。胃はまだ重いが、のろのろとシ
ャ
ワー
を浴び、何も食べずに部屋を出た。
大学までは徒歩五分。近い。サー
クル棟の地下にある部室を覗くと、メンバー
は半数以上が揃
っ
ていた。集ま
っ
ているメンバー
は全員、俺と同じ二年生で、あと一
ヶ
月で三年生になる。今日は、二年生の会員十五人で集ま
っ
て、次期会長を始めとした役員を決める日なのである。
「お前、よく来られたなー
」
Fenderの青いエレキベー
スを抱えて俺に声をかけたのは、俺と同じ経済学部でもある大橋だ。
「潰れて起きられないんじ
ゃ
ないかと思
っ
てたわ」
「そうな
っ
てたら、お前、むち
ゃ
くち
ゃ
怒るじ
ゃ
ねー
か」
はは
っ
と笑う大橋は、気さくではあるが根はものすごくまじめだ。そして、大橋の彼女、南田もまたしかり。ギター
担当の南田とベー
ス担当の大橋は、うちのサー
クルの名物カタブツカ
ッ
プルだ
っ
た。
午前十時になり、定時にな
っ
た。揃
っ
たメンバー
は十四人。まさかの南田の姿がなか
っ
た。あ
ぁ
、あいつは。大橋が口を開いた。
「今日は急用だ
っ
て。昨日の結果で問題ないから、話進めといてくれ
っ
て」
メンバー
の間に瞬時に動揺が走
っ
たのがわか
っ
た。が、俺は事態がいまいち飲み込めていなか
っ
た。
「昨日の結果
っ
て?」
俺の質問に、さして広くはない部室がしんとな
っ
た。
「
……
ま、ある程度予想はしてたけど」
大橋がそう前置きをして、続けた。
「お前が次の会長な、有賀」
ちなみに、『有賀』というのは俺の名前である。
話し合い、という名目で集ま
っ
たはずだ
っ
たのに、結論はほぼ決ま
っ
ていた。俺が会長で、副会長は大橋で。おかしいだろ! と俺は今までのないくらいのテンシ
ョ
ンで突
っ
込んだのだが、ま
ぁ
ま
ぁ
ま
ぁ
、なんて大橋はにこやかに笑んだだけだ
っ
た。
話し合いはもはや話し合いではなか
っ
た。抵抗する俺とそれをいなす大橋の掛け合いであ
っ
という間に一時間が過ぎてしまい、ここらで休憩でもするか、ということにな
っ
た。
俺は部室を飛び出し、すぐさま電話をかけた。相手はもちろん南田である。
もしもし? 電話口の南田の声は明るい。
「お前、なんで今日来ないんだよ!
っ
ていうか、なんで俺が会長なんだよ!」
南田はしばしの沈黙のあと、答えた。
「どこかでお茶でもする?」
俺はそのまま話し合いをとんずらし、大学を出て南田に指定されたフ
ァ
ストフー
ド店に向か
っ
た。電車で一駅先。
窓ガラス越しに、南田はにこやかに俺に手を振
っ
た。ジ
ュ
ー
スのストロー
をくわえ、カウンター
席を陣取
っ
ている。フ
ァ
ストフー
ド店に入
っ
た瞬間、油の匂いで二日酔いの胃がもだえそうになるのを堪え、注文もせずに俺は南田の隣のスツー
ルに腰掛けた。
「どういうことだよ」
「有賀くん、昨日の記憶、ほんとにないの?」
言われて、考え込む。重たい胃がピクリと動いた。
昨晩は、サー
クルの同学年のメンバー
で飲み屋にいた。サー
クルの次期役員を決める前に、ざ
っ
くばらんにみんなで飲もうぜ、と言いだしたのは大橋だ
っ
たか。ともかく、ま
ぁ
そういうことで飲み会だ
っ
たわけである。
軽音サー
クルというと、その名のとおり軽そうなサー
クルに思われがちだが、うちのサー
クルに限
っ
て言えば半分はそうでなか
っ
た。半分、というのは名物カタブツカ
ッ
プル、南田と大橋の二人を中心とする練習熱心なグルー
プのことを指す。残りの半分は、俺を筆頭とする、楽器とかや
っ
てれば女の子にモテたりするんじ
ゃ
ね? という軽いノリのグルー
プを指す。
とま
ぁ
、そんなわけだから、次期会長は南田か大橋がなるのが妥当だというのが当然の流れだ
っ
た。大橋は表に立つタイプではなく、裏でメンバー
のサポー
トに徹するのが常だ
っ
たので、そうすると自然に次期会長は南田で、となるはずだ
っ
た。
だから、ま
ぁ
ざ
っ
くばらんに話そうぜという会だ
っ
たわけだけど、俺はビー
ルのジ
ョ
ッ
キを傾けることに注力していたわけだ。ぐびぐびぐび
っ
と飲んで、もう一杯! なんてのを繰り返していたら、少し経
っ
てから南田にジ
ョ
ッ
キを持つ手を止められた。
――
有賀くんも次期役員のこと話しようよ。
南田の細くて白い手を見た。ギター
の練習のしすぎでかたくな
っ
た指先。ふわ
っ
としたブラウスの腕、細い首、目は大きいのに小さな顔。生真面目すぎなければ、も
っ
と大々的にモテるだろうにと思わずにはいられない。ま
ぁ
でも、大橋
っ
ていうカタブツで顔もそこまで悪くはない彼氏がいるしいいのか。こいつらどこまで進んでるのかな、なんて下品な俺は考える。
――
別にいいじ
ゃ
ん、どうせ南田が会長になるんだから。
――
そういう問題じ
ゃ
ないでし
ょ
。ち
ゃ
んと話合わないと
――
――
じ
ゃ
、俺が会長でもいいわけ?
――
その気があるなら、別に私はそれでもいいと思うよ。
俺は立ち上が
っ
た。そのときには、は
っ
きりい
っ
てかなりでき上
っ
ていた。
――
今回の選挙では、この有賀に! 有賀党に清き一票を! あ、有賀党でありがとうだ! なんち
ゃ
っ
て! カハハハ!
「
……
でも、だから
っ
てそれで本当に俺がやるわけないだろ!」
「そうかな? みんなも面白が
っ
てたし、それはそれで面白いんじ
ゃ
ない
っ
て話にもな
っ
てたし、じ
ゃ
あ有賀くんにやらせてみるか
っ
て話にな
っ
たんだけど」
南田はそう笑んだ。そこで、気づいた。いつもの毅然ときり
っ
とした雰囲気の南田らしくない、なんだか疲れたような顔。
「
……
何かあ
っ