第12回てきすとぽい杯 誤字修正版投稿所
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林檎の彼女 再び
orksrzy
投稿時刻 : 2013.12.15 01:53 最終更新 : 2013.12.15 01:55
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- 2013/12/15 01:55:14
- 2013/12/15 01:54:33
- 2013/12/15 01:53:44
林檎の彼女 再び
orksrzy


「もう、リンカちんは僕にぞこんなのである
 私は口にだらしない笑みを浮かべて、氷の世界から夜のネオン輝く世界へと移た。
「それはダーリンが素敵すぎるから
 金髪巻き毛のスタイル抜群の女、リンカちんは私の腰に手を回している。その手つきはいやらしい以外の何物でもない。私は有頂天である。
「リンカちんの頼みだから、事故起こした妹さんの示談金も払てあげるよ
 それは嘘である。私はとある人物から逃亡中のみであり、金など無い。だが、リンカちんの前ではいい格好がしたいのだ。それに私はこの後、リンカちんとラブホテルに行きたいのである。その料金を払う事さえ、私にはつらいものがあるが、ここが正念場であるので、私は涙を飲んで男の誓いと男根的な物を立てるのである。
「さすが、ダーリンはマジ素敵
 リンカちんの甘い香水の匂いが私の鼻腔をくすぐる。いい日である。こんな日が私に訪れようとは、もはや心に浮かべることさえなかた。
 私はとろんとした目つきで薄暗い道の先を見つめた。
 と、そこに誰かが両足を地面に根付かせたように、微動だにせず、立ている。
 暗がりにいるその人物が、低い声音で言葉を放た。
「上出来だよ、リンカ」
 
 私は雪のちらちらと舞う夜の繁華街を彷徨ていた。
 人々は浮かれた様子で顔を赤く染めて、時に笑い声を上げながら、歩いている。
 この地方では一番の盛り場で、私はコートの襟を立てて顔を隠し、人ごみを縫て進む。
 私はとある理由から、日本全国を逃げ回ていた。大学に通う私は、大学生らしい恋愛をしていた。彼女とは雑誌に載ているデートスポトを巡たり、おしれな喫茶店でお茶をしたり、夜空を眺めて将来の夢を語たりしたものだ。けれど、ひとつだけ、おかしなことがあた。それは彼女がいつも右手に林檎を持ていた事だ。彼女は林檎が大好きであり、私より林檎のほうが大事だと言てはばからなかた。私はシクであた。どうして、私が赤い果物一つより下なのだと苦悩した。
 そんな折、私は林檎病という伝染病にかかた。正式名は伝染性紅斑という。
 私は喜び勇んで、彼女に連絡すると彼女はすぐに、当時私の住んでいたアパートへやて来てくれた。しかし、そこで事件が起こた。彼女が私を殺そうとしたのだ。彼女が言うに、林檎と私がハイブリドしたものを食べたいというのだ。
 もちろん、私には理解不能である。林檎と私は別個の存在として見て欲しいし、私は林檎より上の存在として見て欲しい。しかし、彼女の中では、林檎病の私=食べたいという図式が成り立つらしく、私は彼女から逃れるための放浪の旅に出る羽目になた。
 そして、私は今この街を当てもなく彷徨ているわけである。
 物思いにふける私に笑顔を向ける女がいることにその時、気づいた。
 赤いサンタのコスプレをしている。非常に良い体つきをしており、乳がでかい。とても重要なところである。その女は乳がでかいのである。
「ねえ、ダーリン、ちとそこの店、寄てかない?」
 むむ、馴れ馴れしい、と私は不快に思おうとした、が、その女はその豊満なおぱいを私の腕に押し付けてきた。むにむにと魅惑的な感触である。
 であるから、私は女に爽やかな笑みを向けた。
「僕は旧帝国大学の一つに通ているんだ」
 聞かれもしていない事を言た。私の自慢は学歴しかない。他に自慢できる要素はない。
「すごーい。頭いいんだ。私、リンカて言うの。そこの店に入らない?」
 そうやすやすと引かかる馬鹿がいるものか。私は不機嫌な表情をしようとした、が、女はおぱいを押し付けてくるのである。
「いらいませー
 気づくと私は店の椅子に座ていた。隣にはリンカちんがいる。不思議だ。一体、何が起こたのだ? 自問するが、答えは出ない。おぱいに負けたなどという理由ではないはずなのだが……
 しかし、この店は寒い。店全体が異常ともいえる低温である。壁に温度計が表示されている。見ると、マイナス30度である! 椅子も机も何もかもが氷でできている。
「ここて、アイスパブなんだよね
 リンカちんは慣れた様子で、氷でできた椅子に尻を付けている。私は冷たいのが嫌なので、氷の椅子に尻をつけそうでつけない状態でいる。俗に言う空気椅子の状態である。根性をつけるために体育会系の部活でやらされる奴である。私はこんな場所で何をやているんだという虚しさに襲われたが、おぱいを思い浮かべ、黙て耐えた。
「ダーリンてイケメンだし、私だたら、絶対彼氏にしてるな。あ、ドンペリでいいよね」
 リンカちんは私の返答を待たず、高級酒を注文する。
 これはいかん。私はリンカちんに強く注意をしようと思た。リンカちんがその様子に気づいたのか、私を見る目が変わる。よし、いい展開である。このまま、言てやれ、私。
 その時、リンカちんは私の手を掴むと、そとその豊満な乳に当てた。とても、柔らかかた。
「おお、いいよいいよ。お母さんの入院費ね、いいよ、払うよ
 気づくと、私はおおいに酔ぱらていた。驚きである。一体、何が起こたのだ? 自問するが、おぱいに負けたわけではないと心の中の私が言う。
「ダーリン、ありがとう。じあ、ちと、外出してさ、いいことしようか?」
 おおお、なんという事だ! 向こうからお誘いである。これは怪しいと普通は思うかもしれないが、いや、いいのである。おぱいおぱいである。
 私はリンカちんに適当に都合のいい話をしまくると、氷で覆われた店を後にする。
 すると、夜道に立ていた人影がリンカちんに声をかける。
「上出来だよ、リンカ」
 冬とはいえ、店の中と比べると生ぬるい空気が私を包んだ。
 嫌な汗が浮かぶ。電灯の乏しい光がその人影の顔を照らす。
 ――林檎の彼女である!
 右手に林檎を、左手に包丁を持ている。
 私は慌てて、リンカちんに店に逃げるように伝えるが、リンカちんは私の脛を蹴りつけた。痛みで、はわわと声を上げた私は地面に倒れ込む。
「これで金はもらえるんだね?」
 先ほどまでの甘い声はどこへやら、リンカちんが低くかすれた声で林檎の彼女に問う。
「もちろんさ。林檎病になたこいつを食うだけだ」
 彼女が一歩、また一歩と近づいてくる。私は地面をのた打ち回る。
「あと、この男、私にデレデレしちてさ、親の入院費とか妹の事故の示談費とかも払うて言てたから、それもよろしくね」
 リンカちんがそう言て、私を蹴りつけた。おほと私の喉から声が漏れる。どこか嬉しげな響きが含まれていたことを、私は認めない。
「はあ?」
 ここで彼女が恫喝するような調子で息を吐いた。暗がりで分からないが、眉間にはしわが寄ているだろう。彼女は怒ると怖いのだ。しかも、今は凶器を持ている。危ないぞ、リンカちん、と渦中にいる私はどこか他人事なのであた。
「なによ? 私のおかげでこのダサイ男、見つけられたんでし? だいたい、こんなレベルの低い男に逃げられるなんて、あんた、よぽどだよ?」
 リンカちんがトゲのある口調で言い放た。なるほど、女王様タイプだたか、と痛みが引き始めた私は真面目顔で頷く。
「この男を馬鹿にするのはいい。けれど、私を馬鹿にするのは許さないよ!」
 ええ、それはそれでツライよ、と私は涙をそと流したが、誰もそんなこと気付かない。
「バカ! なに、林檎持てんだよ」
 リンカちんがスカートからカミソリの刃を取り出した。
「へえ、死にたいんだね、あんた」
 彼女がどこか楽しげな声音で挑発する。
 争いの前触れ。それは私が逃げるチンスである。
 私は立ち上がると、一目散に彼女のいない方向の道をひた走る。
「やば、私の男が逃げる!」
 彼女の叫び声が聞こえる。それは料理を食べそびれた幼児の声に似ていた。
「だめだめ。逃がさないて。バカをこれで切り裂いてやるよ。私は学園じスケバンで通てたんだ」
 スケバンて昭和過ぎるだろ、今は2013年だぞ、という私の心中の叫びはともかく、二人で争いあてくれるのならば、それでいい。
 私は雪の降る街をまた逃亡するのである。どこまでも逃げるのである。林檎の彼女からの魔の手に捕まらまいと、必死に今日も逃げるのである。
「ちなみに、林檎病はもうとくに治てるよ!」
 私は叫ぶが、彼女が吐き捨てるように言い放た。
「食べるしか道は残てないんだよ!」
 私は彼女の固い決意にぶるぶる震え、夜の街へと消えていくのであた。
       了
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