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時事ネタなようで時事ネタじゃない小説賞
〔 作品1 〕
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〔
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髑髏の星
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2015.11.03 21:31
最終更新 : 2015.11.17 21:04
字数 : 2181
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2015/11/17 21:04:34
-
2015/11/03 21:31:19
髑髏の星
茶屋
「Trick
or
treat」
そんな言葉が、いつ始ま
っ
たのか僕にはわからない。
ハロウ
ィ
ンの起源はもともと古代ケルトの収穫祭だ
っ
たらしいが、死者が訪れる日とも言われ、さらには魔女や精霊から身を守るために仮装し始めたなどなど、世界的なインター
ネ
ッ
ト辞書の日本語版を見ても起源は入り乱れては
っ
きりしない。古代ケルトと言
っ
ても範囲はそれなりに広い。諸部族の信仰が征服やキリスト教の流入によ
っ
てドロドロと入り交ざ
っ
たような存在がハロウ
ィ
ンなのかもしれない。
日本では、ほとんど仮装した子供が近所を訪ねてお菓子をもらうか、騒ぎたいだけの大人の仮装祭にな
っ
ている。その仮装が、何処かオカルテ
ィ
ッ
クな死者や穢れを連想させる属性の魔物というのはどうにも興味深いものである。日本にも仮装祭のようなものは昔からあ
っ
た。今は『伝統的・歴史的』と言われる地方性の高い祭に圧されて消えかけてしま
っ
ているが、仮装祭は素朴に庶民に親しまれた祭だろう。何も現代のように仰々しい仮装をしなくても、面を被
っ
て、祭を楽しむのだ。
ある種の非日常。
他界。
仮装の祭はある意味では「ハレ」というか、非日常性の高い祭であろう。
仮装祭には死者も入り混じ
っ
ているという怪談をよく聞くのはその強い他界性からだろうか。
多分、地域のそんな素朴な祭は少しずつ消え、より都会的なハロウ
ィ
ンがもてはやされるというのは、なんとも奇妙なものである。
そんなハロウ
ィ
ンの深夜、一つの小天体が地球に最接近した。
数日前から、一部のオカルテ
ィ
ストは「隕石の衝突」「人類滅亡」と騒ぎ出していたが、ノストラダムスに懲りたメデ
ィ
アはあまり大きく取り上げられることはなか
っ
たが、それなりには話題にな
っ
た。
果たしてこの天体は地球に衝突して霊界の門が開かれるという事なども起きなか
っ
たが、奇妙な素顔をさらした。
NASAにより公開された小天体の画像の一つに髑髏に見える画像が一つ、あ
っ
たのである。
確かにその画像は髑髏に見える。
けれども、それはた
っ
た一枚の画像に過ぎない。微妙な角度と光源によ
っ
て、奇跡的に見えた髑髏である。
ハロウ
ィ
ンとの符号が面白いのはもう一つ、その小天体が「死んだ」彗星と推測されたことだ。彗星は太陽風などの影響によ
っ
て表面の揮発性物質が尾を引く天体だが、その揮発性物質を失
っ
て核、骨だけが残
っ
た「死んだ」彗星だと推測されるらしい。
かつては煌びやかな尾を引く彗星として地球に近づいたこともあ
っ
たかもしれない。
けれども、もはやその衣装は剥がされ、残されたのは軌道上を進むただの死骸だ
っ
た。
ハロウ
ィ
ンの日に訪れたのは、巨大な死者だ
っ
たのだ。
そしてその死者はち
ょ
っ
としたいたずらに「その顔」を見せてくれたのかもしれない。
「Trick
or
treat」
ハロウ
ィ
ンの夜、彼女は、そう言
っ
て笑う。
「はいはい。今年も新発売と期間限定のポ
ッ
キー
は揃えておいたよ」
「へ
ぇ
、今年もいろいろ出たんだね
ぇ
。じ
ゃ
、来年もよろしく
ぅ
」
「たまには、お菓子なしで、いたずらでもしてもらおうかな」
「だー
め」
僕も笑う。
「そういえばさ。今年は隕石が落ちるかも
っ
て話があ
っ
たんだよ」
「へ
ぇ
」
「それで、僕と選ばれし仲間たちは近所の拝み屋の婆さんに頼まれて伝説の武器を集めてその隕石の落下を防いだんだ。大変だ
っ
たよ。その後に駆けつけてきたんだから」
「何それ、雑すぎだよ」
「ほんとだ
っ
て」
少し二人で笑
っ
て、しばし、沈黙が続く。
「もう、行かなくち
ゃ
」
「うん」
「じ
ゃ
、また来年」
「うん、また来年」
世界は、終わらなか
っ
た。
けれども、死者は去
っ
てい
っ
た。
ハロウ
ィ
ンは終わり、人々は仮面を脱ぎ去る。
子供たちのお菓子はまだ残
っ
ているかもしれないけれど、ゴミもまた残された。
「ハレ」の日に払い落された「ケ」を拾
っ
て捨てるのも、また「ケ」に戻
っ
た人間の仕事なのだ。
昨日は、彼女の命日だ
っ
た。
僕は彼女の墓前に添えたポ
ッ
キー
は、いつもいつの間にかなくな
っ
ている。
カラスが運び去
っ
たのか、彼女の両親かお寺の人が片づけてくれたのか。
でも、彼女は食べてくれたんだ
っ
て、僕は信じたい。
彼女の存在。
それだけが、僕の信仰だから。
参考文献
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