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デッド・ライン
『アイズ‘ ルーム』に映し出されている男の人は、しきりに体をねじらせて、画面の向こうから何かを訴えかけています。
ところが、画面の向こうの音は、わたしたちには聞こえないのです。
無音放送なのです。
男の人はやせ細って、弱々しい目つきでわたしたちを見ています。
その目には、わたしたちへの恨めしい気持ちがあるようにも見えます。
しかし、わたしたちもまた、一体どうしたらいいのか分からないのです。
そのうち、画面の右隅の数字――タイムリミットを示した――は、刻々とゼロに近付いていきます。
逆に、大きな数字――視聴者数でしょうか――は、先ほどよりも大きくなりました。
みんな、期待しているのです。
このタイムリミットが何を指すものなのか。
ゼロになったらどうなってしまうのか。
インターネット上の書き込みも、その話題で持ちきりです。
真ん中の数字は相変わらずゼロのままです。
男の人にも、このタイムリミットが見えているのでしょうか。
画面いっぱいには、必死で何かを叫ぶ顔が映し出されています。
まるで、この世の終わりかのような表情で。
わたしたちは、その表情を、息をのんで見つめますが、ついにタイムリミットを迎えます。
ゼロ。
ゼロゼロ:ゼロゼロ:ゼロゼロ
画面は真っ暗になり、わたしたちの顔が画面に映し出されます。
放送は終わってしまったのでしょうか。
固唾をのんで見守る中、画面は沈黙を守ります。
しかし、いつまで経っても画面は真っ暗なままです。
やがてこの番組を見ていた人は飽きてきます。
そうして、リモコンでチャンネルを変えようとしたとき。
画面が煌々と灯り、わたしたちの手は止まります。
画面には、まだ幼い女の子が映し出されていました。
放送は終わってはいませんでした。
画面の右上には、ひときわ目立つフォントで書かれた文字――
『アイズ‘ ルーム』