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アイズを見つめるアイズ
あの放送は今でも続いているようです。
不思議なことに、わたしたちはあの部屋が何なのか、おおよそ見当がついているのにも関わらず、放送は終了することなく、今日もまたボタン1つで誰かの存在を“値踏みする”ことができます。
一体、誰があの部屋を放送しているのか。何故、誰も放送を止めないのか。
それは、今となっては分かりません。
わたしたちは、もう日常に戻って来たのですから。
いいえ。
完全に日常に戻る前に、ひとつだけ。
実は、ひとつだけ、わたしたちの認識に誤りがあったことを、わたしは知っています。
それは、右隅の数字の1番上。
視聴者数全体を表していると思っていた数字。
真ん中の数字――お金を支払った人の数――がゼロでなかったとしても、一番上の数字がゼロになることがありました。
これはつまり1番上の数字には、真ん中の数字は含まれていない、ということです。
この意味を、わたしたちはよく考えた方が良いのかもしれません。
この放送は有料放送です。
しかし、お金を支払わなくても見ることができます。
わたしたちは、都合よく“見ない振り”ができる環境にいます。
ボタン1つで、わたしたちは誰かの部屋を見ることができて、見ないこともできます。
考えることができて、考えないこともできます。
助けることができて、助けないこともできます。
そんな世界にわたしたちは生きているのです。
そして、この世界こそが――
『アイズ‘ ルーム』
(完)
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