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第壱回 あらすじ指定<s>大喜利</s>大会
〔 作品1 〕
鯉のぼりと鶏
(
なんじや・それ太郎
)
投稿時刻 : 2013.05.03 00:44
字数 : 1652
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鯉のぼりと鶏
なんじや・それ太郎
【あらすじ】
この小説は、とある事情で離ればなれにな
っ
ていた兄妹が、(メイドと、そのメイドに異常なまでに課金する人)にな
っ
た様子をごく淡々と描いていくものだ。
多分そんなに面白くはならない。なぜなら、兄妹の日常なんて所詮は平凡な
……
「さ
ぁ
、お兄ち
ゃ
ん! (平家みちよの合戦)の準備はもう出来ています。早速(スギち
ゃ
んへダメだしをしまし
ょ
う)!」
奈津子、お前は黙
っ
てなさい。失礼、もう一度紹介し直そう。これは、主人公である僕が超ブラコンである妹をはじめとする様々な女性と
……
「あ! ひ
ょ
っ
として(平家みちよの合戦)じ
ゃ
無く
っ
て(自称面白い大学生に現実を突きつける)の方が良か
っ
たですか?」
良いから黙
っ
てなさい。え
っ
と、要するに(ケー
タイ小説)です。
あなたは「甍」という漢字が読め、そしてその意味を知
っ
ているだろうか?
そうか、ならば話は早い。
その日も自称「偏差値が高い割には思い切
っ
たバカができる大学生スギち
ゃ
ん」こと杉山くんが、
「甍(いらか)の波と雲の波
〜
♪」という古めかしい歌を口ずさみながら美術部の部室に入
っ
て来た。
そう思
っ
たのも束の間、自称「その気になればお笑いで天下が取れる大学生スギち
ゃ
ん」は、
急に同じメロデ
ィ
の替え歌で、「岩国柳井光下、松徳山新南陽♪」などと歌い始めたのだ
っ
た。
その時、部室にいた僕と木嶋奈津子は杉山くんのことを完全にスルー
。
しかし、そんなことでくじける杉山くんではない。
昼飯の時にカツ丼を食う日には、「カツ丼を食
っ
て勝つどん!」を少なくとも20回は繰り返す杉山くん。
「ねえ、新南陽の次はどこだ
っ
け?」と木嶋の周りをくるくる回りながら何度も尋ねる。
「徳山は広域合併で周南市に名前が変わ
っ
たでし
ょ
?」
ミケランジ
ェ
ロのダビデ像のチンコのところに手をや
っ
たまま、木嶋が素
っ
気なく応じる。
彼女が眺めている美術全集の表紙がダビデ像で、たまたまそうな
っ
ただけの話なのだが。
「たまたま」とい
っ
ても、あれだ。触
っ
ているのはサオの部分だが。
「駅の名前は徳山だからいいんじ
ょ
」と真顔で答えたものの、最後に噛んだ杉山くん。
「新南陽の次は防府だよ」代わりに僕が答えてあげる。
「いいかい、広島の大学生にと
っ
てこの歌は必須なんだ。広島駅で山陽本線下りの電車に乗るだろう?
そうしたら、『この電車は柳井に停まりますか?』なんて尋ねられることがある。
どうせ俺らは西広島や五日市、廿日市あたりで降りてしまうんだが、やはり質問された時にはきちんと答えたい。
だからこうして山口の駅の名前を歌で覚えて
……
。おい、聞いてる?」
「そういえば母の田舎じ
ゃ
、鯉のぼりと養鶏はご法度だ
っ
たの」
杉山くんの話など聞いていない、とばかりに木嶋が僕に話しかける。
「うちの実家、大都会松江じ
ゃ
あ、端午の節句は旧暦で六月だ
っ
たなあ」
釣られて僕もそんな話を始めた。
そう、僕は島根県松江市で育
っ
たのである。
なので地名といえば広島のを覚えるのに精一杯で、山口の地名を覚える余裕などない。
だいたい広島も山口も市の数が多すぎる。お隣の鳥取を見習いなさい。
「なんで木嶋の田舎は鯉のぼり
……
」と杉山くんが切り出すと、最後まで聞かずに、
「源氏に居場所が知られないようによ」と木嶋が答えた。
「マジかよ
……
」僕は困惑して思わずそう呟いた。
「どうして平家の落人伝説がある田舎よ。何かおかしい?」
「いや、別に
……
」
木嶋はメイド喫茶でバイトをしている。
僕はお金が入ると彼女を指名し、萌えセリフを言わせ、たまには口説いたりもした。
目の前ではいつもふざけていたが、僕は木嶋が好きだ
っ
た。
だけど、き
っ
とそれはいけないことなのだ。
「お前には父親が同じ妹が一人いる」と昔から母はよく言
っ
ていた。
「平家の末裔らしいよ。出会
っ
ても間違
っ
て付き合わないようにね」
今日、僕は些細な会話の中からそれを嗅ぎつけてしま
っ
た。
僕はす
っ
と立ち上がり、「杉山くん、奈津子のことを頼んだぞ」と言い置いて部屋を飛び出した。
「何、あれ?」
「さあ」
という声を背中に、僕はどこまでもどこまでも走
っ
て行
っ
たのであ
っ
た。
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