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第5回 てきすとぽい杯〈平日開催〉
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PANDORA BOX
茶屋
 投稿時刻 : 2013.05.17 23:32
 字数 : 1957
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PANDORA BOX
茶屋


「拘束解除」
 その声をきかけに、ミナコの掌中に置かれた立方体のオブジクトが幾何学模様に沿て緑色の光を放ち始める。
「Jawohl, Herr Leutnant.
 立方体から電子的な男の声が響く。
 それと同時に箱は展開を始める。まるで機械じかけのパズルのように、奇妙な幾何学的形体をいくつも経過して、その大きさを増していく。
「展開終了と同時に目標を制圧」
「Ja」
 もはや立方体の原形は何処かへ言てしまい、翼の生えた人のような形の存在とかしていた。甲冑を纏た騎士のような、いやアニメに出てくるロボトのような姿といたほうがいいかもしれない。
「Waffe: Spiess」
 人型がそう音声を放つと、その手には槍のような武器が展開されていた。

「な、本当に安心していいんだろうな?」
「左様。御敵の防衛圏内は既に離脱しているはず故」
「そうか。それならいいんだが、何だか嫌な予感がする」
 荒野を疾走する影があた。
 地上からわずかに浮遊したバイクに似た乗り物に乗ているのは、キサラギというものである。そしてキサラギの会話の相手、それはバイク自身である。
「御大は気苦労が絶えぬな」
「うるせ
 ふと、何か、風を貫くような音が聞こえたような気がした。
「掴まられい!」
「は?」
 バイクは急激に加速し、ランダムに蛇行した。一瞬遅れて、背後に複数の爆発が生じる。
「くそ!やぱり撒けてなかたじか!!」
「面目次第もない!」
 爆煙を突き破て、羽を生やした人型の存在が姿を表わす。
「くそ!グラーシーザか」
「御大!!」
 槍撃を辛うじて避けて行くものの、衝撃が二人を襲う。
「鬼切、収縮!」
「御大!?」
「うるせ!形を変えるぞ!ガタガタ言わず収縮しろ!」
「御意」
 一瞬のうちにバイクが消え、キサラギは固い地面の上を転がるはめになる。強い衝撃がキサラギの体を打ちのめす。グラーシーザの槍はそれを見逃すはずがなかた。
 閃光。
 音。
 衝撃。
 一際大きな爆発が一体を包み込んだ。爆心地は大きくへこみ、クレーターのような形状を作り出した。
「Strategie Vollendung」
 グラーシーザの無機質な顔は表情を変えることもなく、爆炎を見つめていた。
 彼は『契約の箱』あるいは『パンドーラ』と呼ばれる意志を持た様々な形に変形できる兵器だ。その力を利用できるものは、契約者、グラーシーザにとてはミナコであり、たた今爆炎の中で消失した鬼切にとては、やはり一緒に消えたキサラギである。
 他の『パンドーラ』のことを仲間、だとは思たことがない。
 結局は戦う運命にあるのだ。
 はじめから、戦う運命に。
 だが、グラーシーザの意志機関には奇妙なわだかまりのようなものができているのも確かだた。
 そんな感情は、彼らにとては不要なものなのだろうか。
 わからない。
 だが、今、この時のグラーシーザにとては不要以外の何物でも無かただろう。
 その奇妙な感慨が、一瞬の隙になたのだから。
 気付くのが一瞬遅れた。
 気づいて避けた時には、右腕が肩から切り離されていた。
 日本刀を手にした人型の何かが、グラーシーザの腕を切たのだ。
「復活!」
 その声は、キサラギのものだた。
「Was?」
「鬼切装甲形態展開完了。危のう御座たぞ、御大」
「だが、うまく言たぜ?」
「御大には敵わぬ」
 キサラギは展開した鬼切を鎧として纏たのだ。
「反撃開始だ!」
「御意!」
 振り下ろされた刀を返して切り上げる。胸先三寸で避けたグラーシーザであたが、のけぞた形になて大きく体勢を崩していしまう。キサラギは大きく踏み込むと刀を持ち替え、グラーシーザの胸に突き立てた。だが、刀が胸を貫く前にグラーシーザは翼を大きく展開し、それを盾の代わりに刀を防いだ。
「グラーシーザ撤退だ」
 グラーシーザの聴覚機関にミナコの声が響いた。
「Nein」
 グラーシーザがミナコに逆らたのはその時が初めてだ。グラーシーザにはそれが何故だかわからなかた。だが、戦わなければならなかた。戦わずにはいられなかた。
「グラーシーザ、もう一度いう、撤退だ」
 ミナコは冷静だた。少なくとも表面上は。
 だが、そこに動揺があることはグラーシーザにはわかた。
「Ja」
 グラーシーザが槍で己の足元をつくと大きな爆発が起きた。爆炎が鬼切とグラーシーザを包んだ。

「見失たか」
「反応が御座らぬ。左様」
たく、来るときも速けり逃げるときも速いな」
「兵法に沿たやり方で御座るな」
「鬼切、収縮。んで持てバイクに展開」
「御大、たまには自分の足で歩いてみぬか」
「そういう冗談はこういう所ではやめてくれ」
 そう言てキサラギは周囲を見渡す。
 限りなく広い荒野。建物は一つも見えない。それどころ草木は一本も生えていない。
 まさに不毛の地、死の土地である。
 ここは関東。
 かつて大都市のあた場所。
 
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