でかい妖精
あるところにとてもでかい妖精がいました。でかい妖精はでかいです。大きさで言えばガンダム(18メー
トル、4階建てのビル)ぐらいあります。
しかしでかい妖精はでかいので普通の人間には見えません。都会の高いビルの間を飛び回ったり、公園の木の上の方に咲いた花の蜜を吸ったりしていますが、普通の人間には見えないのです。
ちなみにでかい妖精はそういう種族です。小さい妖精たちの中に生まれた突然変異とかではなく仲間もみんなでかいです。いじめられなくてよかったですね。
ある日、なぜかでかい妖精を見ることができてしまう人間がおりました。でかい妖精の数はそこまで多くはないですし、テレビにも映ったりはしないので、その人間は上京してくるまででかい妖精を見たことがありませんでした。
でかい妖精をはじめてみた人間はパニックです。ビルの間からでかい手やでかい顔が現れたのですからそれはもう当然のことです。都会にやってきた人の多さとストレスでおかしくなったのかと自分を疑い倒れてしまいました。
しかし都会の人は冷たいので叫び声をあげながら倒れた人間に近づく人はいませんでした。おかしい人には近づかないのが都会を生きる術です。しかしでかい妖精は違います。でかい妖精は別にちっぽけな人間など怖くないですし、でかい妖精は心の器もでかいので、倒れた人間のもとにやってきました(周りの人間を潰さないように足元3mほどの高さで飛んでいる)。
でかい妖精が倒れた人間を突きます。
倒れた人間はいきなり揺さぶられて目を覚まし、そして目の前のでかい妖精を見て、また叫び声をあげました。
「僕が見えてるの?」でかい妖精が尋ねます。
「ふぁうおhがbがひなえな;おhwg;うおあhbぐあ」人間は声にならない声をあげました。
「大丈夫だよ、食べたりしないよ」
でかい妖精は草食です。花の蜜やくだものを好みます。生臭い人間の肉は好きではありませんでした(食わず嫌いはいけないと人間の話を立ち聞きしたので試したことはある)。
でかい妖精は人間を掴みあげました。
でかい妖精の手に握られた人間の心臓はもう止まりそうでした。
ここからハッピーエンドにするのはどうすればいいでしょうか? 1000文字以内で答えなさい。
解答)
人間の頭には走馬灯が駆け巡っています。
人間の顔は風を強く感じています。なぜならでかい妖精が人間を握ったまま空を飛んでいるからです。それはすごい光景でした。ビルや人並みがちっぽけに見えて、人間の心はすべてを悟りました。そうすべてです。命も争いも労働も、愛も平和もなにもかも、すべてはちっちゃくてどうでもいいものだと気づいたのです(漏らしたものが空から降り注ぎましたがそんなものも気にはしません)。
人間はでかい妖精に尋ねました。
「あなたはいったいなんでしょうか?」
でかい妖精は答えました。
「僕はでかい妖精だよ」
でかいことはわかっていましたが、妖精だというのは言われてはじめて気づいた人間です。そういえばたしかに背中に半透明の羽が生えているなとも人間は思いました。絵本や漫画で見る妖精のイメージそのままです。でかさ以外は。
「私をどうする気ですか?」
「倒れていたから風を受ければ元気になるかなと思って」
「ありがとうございます。少し元気になりました」
「よかった」
でかい妖精が笑います。
「君は僕が見えるんだね。めずらしいや」
「そうですね、どうしてでしょう?」
謎です。きっと運命ってやつだ!
「友達は多いほうがいいから、僕はうれしいよ」
人間はでかい妖精と友達になった!
「そうですね、私も都会に出てきたばかりで友人がいないので新しい友達ができてうれしいです」
人間は悟っています。友人ではなく友達、人ではないことを受け入れているのです。
「じゃあ僕は東京を案内してあげるね」
そう言ってでかい妖精は飛ぶスピードをあげました。風圧で人間の首は折れそうですが、そんな小さなことはでかい妖精にはわかりません。
でかい妖精と人間は東京中を飛び回りました。でかい妖精を見ることはできない一般の人々には空中を高速で動き回る人間が見えていましたが、まばたきをしている間に消えていたのでみんな目の錯覚だったと受け入れ、おおごとにはなりませんでした。
高速空中観光を終えたでかい妖精と人間は最初に出会った地点に戻ってきました。
「今日はたのしかったね、また遊ぼう」でかい妖精は言いました。
「今日はありがとうございました、また誘ってください」足がガクガクの人間は社交辞令を伝えました。
笑顔のでかい妖精は飛び去りました。
残された人間はなんとか近くのベンチまで移動し座りました。地面に倒れたら心配したでかい妖精が戻ってくるかもしれないからです。
人間はきれいなお月さまを見上げてつぶやきました。
「東京はすげえな……」
でかい妖精は笑顔で東京の空を飛んでいます。
とても楽しそうなのできっとハッピーエンドなのでしょう。
きっと人間も楽しかったはずです。
採点)
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