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第21回 文藝マガジン文戯杯「Illuminations」
最後の晩餐
(
hato_hato
)
投稿時刻 : 2022.11.05 05:18
字数 : 4078
〔集計対象外〕
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感 想
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最後の晩餐
hato_hato
俺は都心のター
ミナル駅の花壇に座
っ
ている。目の前の駅ビルのイルミネー
シ
ョ
ンがまぶしい。もう、イルミネー
シ
ョ
ンが点灯する時間にな
っ
ている。寒い。コー
トも今年は厚手のものが買えなか
っ
た。いや、持
っ
ていたがメルカリで売られてしま
っ
た。小銭が必要になり、テンバイヤー
にただ同然で譲
っ
た。
俺は財布を開いた。千円札が一枚と100円硬貨が2枚、10円硬貨が9枚。合計で1,
290円。自遊空間のナイトパ
ッ
クには足りない。
いままで屋外で寝て過ごしたことはなか
っ
た。だが、そうは言
っ
てもいられない。それしかできない。
とは言え、朝、自遊空間で食べたカ
ッ
プヌー
ドルが最後の食事だ。空腹だ
っ
た。たばこを吸おうとして、ポケ
ッ
トをまさぐ
っ
た。だが、出てきたピー
スは空だ
っ
た。
考えた、ピー
スと吉野家で牛丼の大盛にするか。600円+635円。足りる。だが、ここまで寒くなり、もう何
ヶ
月も自遊空間のシ
ャ
ワー
ルー
ムだけで足を伸ばして風呂に入
っ
ていない。銭湯でのんびりするか。500円+635円。
よし、こちらにしよう。銭湯を探すためにスマホをポケ
ッ
トから出した。そして、googleで検索をしようとしたが反応がない。すぐにわか
っ
た。料金を滞納しているから、とうとう回線が停止された。
これでは日雇い派遣もできない。絶望した気分にな
っ
た。
しかたがないので、吉野家に向かうべく、大通りへ向か
っ
た。
今日はクリスマス、せめて生きているうちに一度くらいクリスマスケー
キを食べてみたか
っ
た。
俺は父親の顔を知らない。物心がついた時には母と二人だけの暮らしだ
っ
た。
母は売春婦だ
っ
た。都営アパー
トに住んでいた。どうや
っ
て、客を取
っ
ていたかはよくわからない。ただ、俺が部屋を追い出される前、つまりは母が客とする時になると電話がかか
っ
てきていたから、そういうルー
トがあ
っ
たのだろう。
そういうことだ。
常連の客になると母のご機嫌取りなのか、俺にケー
キや菓子を買
っ
てくるものもいた。まともな身なりをした男だ
っ
た。ただ、あまり母はそういう客を好きではなく。半年もするとそういうのはいなくな
っ
た。どうも性的な倒錯者が多く、母でも付き合いきれなか
っ
たらしい。
俺はそういうルー
ルを守らない男と行為をした時の子供だ
っ
たようだ。
母は生活保護を受給していた。表面上はメンタルな病だ
っ
た。いや、半分は本当だ
っ
た。正直なところ、母の情緒は幼い俺から見ても不安定だ
っ
た。睡眠薬も手放せなか
っ
た。
では働けないほど、ひどいかと言うと、こんな境遇に堕ちてしま
っ
た、俺が言うのもなんだが、できないことはないだろう。
俺の派遣生活なんて、ひどいものだ
っ
た。パワー
ハラスメント、多重派遣の違法労働?そんなものは当たり前だ。俺がLGBTQ+を嫌いなのは、俺にセクシ
ャ
ルハラスメントをする派遣会社の男性営業がいたからだ。
結局はそいつを殴
っ
たのが、ここまで落ちぶれた原因だが。
その話はもうち
ょ
っ
と後に話そう。
クリスマス。それは売春婦にと
っ
ては書き入れ時。
当たり前だが、世の中はそんなに恵まれた男性ばかりではない。特にイブは。イブに部屋の中で過ごした覚えはま
っ
たくない。
都営アパー
トが学区の小学校だ。柄がいいわけがない。それでも、俺の家ほど、ひどい奴はいない。困
っ
たのは、とにかく宗教の誘いが多いことだ
っ
た。仏教、キリスト教を問わずだ。子供から落そうと。コンプライアンス、そんなものはない時代だ。
それでも、そういうところで、話を聞いて、祈りをする真似をするとおやつをもらえる。食うためならなんでもやる。
すると母のところへその宗教の奴がや
っ
てくる。すると俺がなにをされたか?そこは書きたくないが、俺はその頃、体中、あざだらけだ
っ
た。
小学校の先生にいじめにあ
っ
てもいないのに不思議だと言われたが、そして行政と相談すると、なにも言わなくな
っ
た。
母が本格的に狂いはじめたのは俺が中学に進学してからだ。
当たり前だ、売春なんてメンタルにいい商売なわけがない。男に股を開いて、いいようにされるだけだ。
そして、40を超えて、もう女としての商品価値もなくな
っ
た。それでも、電話が一日一本はかか
っ
てきた。それと生活保護でなんとか食いつないでいた。
母がご飯を用意してくれることはなくな
っ
ていた。俺に料理なんてできるわけがない。ごはんを炊いて、たまごかけか、お茶漬け。そんなものだ。それでも、まだ、食えていた。
売春と生活保護なら、金が貯まるだろ?一見、正論。それは正義だよ。考えてもみてくれ、ソー
プなどの店舗では働けない程度の女でいくら稼げる?生活保護?家賃は都営だから安か
っ
たが、それでも食費、光熱費、通信費を払えばいくらも残らない。そもそも、そんな貯金をできる大人ではないのだから、その正義はウクライナでロシア兵を撃たないでと反戦デモするぐらい現実を見られない奴がいうものだ。
高校?一応は考えていた。さすがに21世紀、高校ぐらいは行かないといけないと思
っ
ていた。進路相談ではその旨を伝えた。そこで夏休みにや
っ
た一般職業適性検査(GATB)の結果を出された。教師には
っ
きりと言われた。
「私は、この地域の教師にな
っ
て、それなりにな
っ
た。だが、ここまで結果が悪いのは見たことがない。高校へ行
っ
て、将来はどうするつもりだ?お前、名前を漢字で書けるか」
そう言われ、紙とボー
ルペンをテー
ブルに出された。
「それを書ければ、名前だけ書ければ合格する高校のために内申書を書こう」
俺は書けなか
っ
た。
俺は中学を出ると同時に日雇い派遣業者に登録しに行
っ
た。なぜ、知
っ
ていたか。同級生も似たようなものだ
っ
たから、そこからの紹介だ。一応、言
っ
ておくが反社会勢力ではない。もう、そんなものは存在しない。ただ、悪い大人はいる。俺が漢字で名前を書けない、感じを読めないのをいいことに違法と思われる案件ばかりを回してきた。契約書をち
ゃ
んと読めたことはない。足元を見られていたのだ。どうも、その紹介者もピンハネはしていたようだ。現場で時給も話をして、おかしな顔をされたことは何度もあ
っ
た。
俺は、主にオフ
ィ
スの引
っ
越しをや
っ
ていた。なぜ、寮などのある、も
っ
といい派遣をやらないか
っ
て?だから、言
っ
ただろ漢字が読めない。オフ
ィ
スの引
っ
越しは簡単な英字と数字が動かすものにシー
ルなどが貼
っ
てあり、それを動かすだけだ。それを読むのが精い
っ
ぱいだ
っ
た。それでも、読めない時があり、かなり苦労していた。
時給は1,000円だ
っ
たが、くさい派遣業者も指導が入るのも警戒して、週20時間以上は働かせてくれなか
っ
た。つまり週給2万円、月給8万円。
そうだ。母は閉鎖病棟に入院することにな
っ
た。俺はその頃、家に帰らなくな
っ
たので後で知
っ
たことだが。そうして俺は自遊空間で寝泊まりすることにな
っ
た。
スマホは飛ばしの回線だ
っ
た。それでも、一応、料金は払わないといけない。この派遣会社は半グレの類だ
っ
たのだろう。用意してくれた。一応、奴隷は管理したか
っ
たようだ。
オフ
ィ
スの引
っ
越しは週末の夜からはじま
っ
て、月曜日の朝までに済ませる。一応、それのために呼び出すためのスマホは必要だ
っ
たと言うわけだ。
平日も声はかかることはあ
っ
た。特にコロナにな
っ
てから、オフ
ィ
スを縮小するオフ
ィ
スが増えたからだ。
それでも月給8万円。自遊空間の料金と飯を食
っ
て、たばこを吸
っ
たらかつかつだ。
そんなことを三年も続けていた。コロナの第8波が来る前だろうか。派遣会社の営業がご飯をおごるから、僕の部屋に遊びに来てと言い出した。
俺はかつかつの生活だ、乗らない手はない。
行
っ
たのは、湾岸のタワー
マンシ
ョ
ンの高層階。エレベー
タに乗る時は緊張した。
部屋のドアを開くと、営業はバスロー
ブ姿で出てきた。
気にせずに部屋へ入
っ
た。多分、彼なりにリラ
ッ
クスしているのだろう。
とりあえず、風呂に入
っ
たらと言
っ
てきた。ま
ぁ
、シ
ャ
ワー
だけだから、そこを察してくれたと思
っ
た。
風呂に入り、シ
ャ
ワー
を浴び始めたら、営業が入
っ
て来た。
あ
っ
と思
っ
た。