◆hiyatQ6h0cと勝負だー祭り2025秋
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フレーバー・オブ・ラブ
投稿時刻 : 2025.11.03 20:46 最終更新 : 2025.11.04 16:54
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目次
1. 第1話退屈な毎日が急に輝き出した
付記
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更新履歴
- 2025/11/04 16:54:03
- 2025/11/03 22:39:25
- 2025/11/03 20:46:27
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フレイバー・オブ・ラブ
根岸 豪志


第1話退屈な毎日が急に輝き出した

朝6時。ponziは目を覚ました。最近は睡眠薬もからだに合ていて生活リズムはいい。しかしponziの気分は晴れない。悩み事が多いのだ。就職活動、恋愛結婚、文学賞受賞。何一つうまくいかない、思うようにいかない人生。50歳を迎えたが、いまだに独身子無しで仕事も障害者就労のグループホーム住まい。統合失調症持ち。実家が裕福で、亡くなた父上は東大卒の弁護士、母親は中規模財閥の令嬢であた。しかし、いつまでもその境遇に甘えていられるトシではない。

SNSをチクするとLINEに親友の60歳男性、トミーさんからメセージが入ていた。

「ponziさん。今日船堀で一緒に昼飯食いませんか?ともちんも一緒です」
47歳、ponziの元カノのともちん。トミーさんと3人で仲良しグループを形成している。
「分かりました。11時船堀で待ち合わせしましう」
ponziが返した。
グループホームで提供される朝食を済ませ、ponziは朝活に入た。

動画配信サイト「ポコチ」を開く。
「まこ」の枠に入室する。25歳公認心理師のまこだ。
「おはうー
「ponziさん、おはよう!」
「高市早苗政権の積極財政政策を受けて日経平均株価は52000円台まで急進している」
「この「積極財政」論こそがponziさんが「イトー派経済学」において長年研究してきた成果であり、れいわ新選組を中心とした左派政権誕生の際の目玉政策としてあたためてきたものだ」
「故森永卓郎先生。中野剛志先生。飯田泰之さんなど。積極財政を支持する経済学者は左派が中心。右派の緊縮財政論と長年対峙してきた」
「飯田泰之さんは高市早苗首相の経済政策のブレーンであり、海城高校のponziさんの同級生でもある」
「積極財政論はほとんどが左派経済学者たちによて進めらてきたもの。その上澄みを旧安倍派で統一教会信者、裏金議員の高市早苗と麻生太郎らに掠め取られたのは慚愧の極みだ」

ponziさんのナラテブにまこはうなづく。
「赤恥をかかされた格好の右派。特に長年ponziさんと反目してきた緊縮財政派の急先鋒、維新の会と千葉6区衆議院議員F巻親子は殺したいほどponziさんを逆恨みしている」
「LGBTの研究、気候変動の研究、goki医学など。ponziさんの紡ぐナラテブはまだまだ続く。正直、あんな連中とかか患てる暇はない」
「次の衆議院議員選挙がいつあるか分からない。高市人気にあやかていきなり解散総選挙に与党は打て出るかもしれない」
「ponziさんは立憲民主党推しだ。次の衆議院議員選挙では麻生太郎の福岡8区、萩生田光一の東京24区などを含めすべての選挙区で本気で勝ちにいく」
「なにしろトランプ現象、参政党現象などなんでもありの時代だ。この傾向は当分続くと見ている」
#改ペー
第2話病める時も健やかなる時も

2024年の衆議院議員選挙のとき、ponziの住むグループホームの近くでバタフライナイフをチラつかせた金髪の若者、おそらく10代、が数人たむろしてponziを睨んでいた時期があた。ponziのような生き方をしていればそれはいつ殺されてもおかしくはない。

2024年6月に府中刑務所から出所した反社のかつての親友ワタさんから手紙が届いたことがあた。

「ponziさん。今回は俺がむかし世話になた茨城の後藤田組の若頭に頼んで鉾を収めてもらいました。ponziさんが、すべての親類縁者家族友達から見放された獄中生活でも唯一、自分に手紙のやり取りや差し入れを続けてくれてたこと。周囲の人間に聞いてもponziさんの良い噂しか聞きません。あんな高潔な人間はいないと。あいつらもそれはわかてくれて、「上に言われてきたからどんないけすかねヤツかと思てましたけど、普通にグループホームに住む障害者じないですか。俺たちでもあの人は殺せない」て言てました。ponziさん気をつけてくださいよ。今回はうまくいきましたが次はやばいかもしれないですからね」

ワタさんからの手紙。ponziも少し気を使うようになた。なによりも「いのち」を大切にしなさい、というのは師匠の東大教授でクラシク音楽家の伊東乾(いとうけん)の教えでもあた。泥をかぶり地べたを這いつくばてみずから率先して現場で生きることによて市井のみんなからの理解は初めて得られる。ネトではしばしば誤解を受けるponziだが、実は言葉より行動の人間なのだ。
#改ペー
第3話どんなに上手くいかないときだて人生捨てたもんじない

政治を語てるうちに少しむかしを思い出していた。ポコチの「うみちん」の枠に移動する。うみちんは37歳フイナンシルプランナー
「おはうー
「ponziさん、おはよう!」
「うみちん。高市早苗政権の積極財政政策で株価はめちめち上がてるけど。あれはponziさんたちの長年の研究の成果なんじ
「うそー。わたしの周りでも経済の専門家のあいだで話題になてるけど、ponziさんの名前なんて聞いたことないよ!」
「いいの!手柄は人に譲るのがponziさんの哲学なの!(´・ω・`)」

動画配信サイト「ポコチ」を終えた。「ポコチ」はponziの大事な研究の場であり、情報源でもあた。

10時近くなり、出かける支度を始める。歯を磨き、服を着替え、トイレを済ませて、10時30分にグループホームを出て徒歩で船堀に向かた。
船堀駅で、トミーさん、ともちんが待ていた。
「おはようございます!」
「どこ行きますか?」
「ガストかバーミヤン」
ともちんが、ガストがいいというので、
「じあ、ガストにしましう」となた。

ガストでは999円セールをしていた。ともちんはステーキをトミーさんはミクスグリルを頼んだ。ponziは遠慮して少しだけ安いハンバーグを頼んだ。
「戦前の支配階級で生き残ているのは天皇家だけなんですよ!」
「三菱財閥創始者の旧岩崎家の邸宅が江東区にあります。一般公開しています。でないと維持できない!」
統合失調症のトミーさんはご飯を食べているあいだも口角泡を飛ばしてまくし立てている。
「そういうのて、全部亡くなたお父さんやお兄さんから聞いた話なんですか?」
ponziが合いの手を入れる。
「親父は東工大から日石の取締役でした。兄貴は開成高校から北海道大学中退、そしてブルクスブラザーズ。2人ともなんでも教えてくれた!」

現在のトミーさんは障害者就労と年金で生計を立てている。ともちんは障害者就労と生活保護だ。ともちんのお父さんも一橋大学法学部中退のインテリ任侠でともちん自身も明治学院大学英米文学科卒。2人とも幼少期は大変裕福な家庭で育ち、気位が高い。ponziを含め似たような境遇の3人であた。
#改ペー
第4話flavor of love

ガストを出て3人で西葛西にあるトミーさんの家に向かた。トミーさんは92歳のお母さんと2人暮らしである。
トミーさんの部屋に入るとともちんは、
「あら、本棚が綺麗に整理整頓されている」と笑た。
「池田大作名言集!」
笑いながらトミーさんはponziに手渡した。かつてトミーさんは敬虔な創価学会信者であたが、ponziと出会て脱会した経緯がある。
トミーさんがデビド・ボウイのCDをかける。
「歴史上、最高のバンドが、ビートルズかローリング・ストーンズか決着はついてないんですよ!」
トミーさんの持論が始まる。

「疲れてきたね。帰るか?ともちん」
ponziがうながすと、ともちんはうなずいた。
近くのバス停まで3人で歩いた。ともちんは足が不自由でびこを引いている。
「トミーさんが創価学会に入たきかけはお兄さんの贖罪ですよね?若い頃、統合失調症で錯乱したお兄さんはナイフで人を刺した。でも、心神耗弱で不起訴処分になた。罪の意識に苛まれたお兄さんは、一番戒律が厳しい宗教を調べて創価学会に入信した。トミーさんはその残滓ですよね」

ponziが以前聞いた話をもとに要約してみせた。トミーさんはうなずく。
「本当は俺まで創価学会に入信する必要はなかたんです。だから、ponziさんと知り合て、創価学会幹部の目の前で「御本尊」をびりびりに破いても彼らは何も言わなかた」

葛西駅でトミーさんと別れ、ponziとともちんは錦糸町行きのバスに乗り換えた。同じバス停で降り、ponziはともちんと別れた。
「じあの。また明日の」
「うん。今日はありがと」
ともちんは手を振た。

帰りがけにひとりでスーパーに寄たponziは見切り品440円のシインマスカトを見つけ、ともちんに写メを送た。
「シインマスカト食べる?持てあげようか(笑)」
ともちんも笑いながら、
「今からうちくる?(笑)」と返してきた。
「行く!」ponziはかつての恋人ともちんのアパートに向かた。

「最近、ごみ捨て場にネズミが出てさー
ともちんは怪訝そうな表情を浮かべる。
「殺鼠剤とか撒いてんのかのー。子供が拾い食いしたら怖いの」
2人は会話しながらともちんの部屋に入た。
#改ペー
第5話いつかまた誰かと恋に落ちても

「ponziさん、最近どうなの?お疲れ気味のようですけど。なにか悩み事でもあるの?」
「いろいろあての。疲れているのではなく疲れ果てている」
「わたしも嫌いになて別れた訳じないし」ともちんはつぶやく。
数秒間見つめあた後、ともちんは静かに目を閉じた。軽く口づけをかわす。シツのボタンをはずし、インナーをめくた。美しい乳房があらわになる。
「なんか疲れてヤケになてんじない?」ともちんは照れながら笑た。
「そうかもしれない」
「もう、ほかにどこにも救いがないんじ」ponziはともちんの乳房に吸いつく。
ともちんのズボンを下ろそうとしたが、ともちんは、
「下はダメ」と拒んだ。
ponziは自分のボクサーブリーフを下ろした。大きくなていたが、ともちんは、
「フラもしないよ」と笑た。
「あのとき、なんでダメになたのかなて考えてたのよね。いろいろ急ぎすぎたのよ。もう高価な宝石も美味しい外食もいらない。そういうのは全部、あくんにもらたから」ともちんは20代のときに付き合てた元カレの名前を引き合いに出した。

ともちんもponziも乱れた着衣を直した。ともちんちの本棚にカズオ・イシグロの「日の名残り」や平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」を見つけた。カズオ・イシグロは英語版も数冊あた。
「わたし、平野啓一郎さん好きなのよね。カズオ・イシグロは「日の名残り」と「クララとお日様」だけ英語版もあるわ。「the remains of the day」、「klara and the sun」。平野啓一郎さんは「日蝕」と「マチネの終わりに」、「ある男」」ともちんは誇らしげに言う。
「平野啓一郎さんはゲンロンカフで何度か見たんじが、これでもかというくらい三島にこだわてんじな。本当に。三島の話しかしないのかていうくらい」ponziは答えた。
「あー、やぱりそうなんだ」ともちんは納得した様子だた。

「カズオ・イシグロは明治学院大学英米文学科に通てた20代の頃から読んでた。いつかノーベル文学賞取ると思てた人も多かたわ」
「ネトの友達にトマス・ピンチて教わたんじけど。なにか、とくにノーベル文学賞受賞してなきおかしい作家なんじけど、受賞させたら何しでかすか分からない変人でノーベル賞委員会が躊躇てると」
「どこの人?」
「アメリカ人」
「トマス・ピンチン…」ともちんはWikipediaで検索する。
「出た!トマス・ピンチン。88歳だて。だいぶ高齢だね」
「「碩学のフインマン」や「セカンドアカウント 坂本竜馬第二の人生」がピンチン的だと指摘された。面白いだけでなくすごく色んなジンルの小説を書く碩学的な人らしい」
「へー」ともちんは軽く相槌を打つ。
#改ペー
第6話新しい歌うたえるまで

「じあね」
ともちんちを出て、ponziは家路についた。いつもの道が今日は少しだけまぶしく見えた。ほんの3月前まで恋人同士だた2人。ともちんとの思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんだ。松戸のマンシンに2人で泊まてむさぼるように求め合た時期もあた。
本八幡のジエリーツツミにともちんに誘導されて初めて入た。宝飾品を買える大金など持ち合わせていなかたが、店員さんたちは愛想良く対応してくれた。ともちんは何でも知ていた。ponziが知らなすぎたのかもしれない。
思えば、ここまで本気で恋愛らしい恋愛をしたのは、50年生きてきてともちんが初めてだたかもしれない。3歳年下の47歳のともちんだ。

グループホームで世話人さんがこさえてくれた夕食を食べ終え、お風呂にも入り寝る準備をする。ともちんに借りたカズオ・イシグロと平野啓一郎に少し目を通す。実際ponziの部屋は書籍が山積みになているが半分も読んでいなかた。ただむかし父上の同僚で東大法学部卒弁護士の町井先生の名言を思い出した。町井先生は本が好きでいつも大量に書籍を購入しては机に山積みにしていた。父上が、
「町井先生。あんた、そんなに本買て本当に全部読むの?」と見咎めると、町井先生は、
「本ていうのは積んどくだけで意味があるんだ!」と居直た。
読者の秋。少し風情?に浸たponziであた。
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