◆hiyatQ6h0cと勝負だー祭り2025秋
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しろぴあ
投稿時刻 : 2025.11.03 23:30
最終更新 : 2025.11.03 23:34
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- 2025/11/03 23:34:08
- 2025/11/03 23:30:17
しろぴあ
根岸 豪志


第1話しろぴあ

下北沢を中心に活動してる中堅ガールズバンドのしろぴあ。そのボーカル、ギターがきーんである。東京近郊を中心に千葉、埼玉、神奈川のライブハウスを定期的にツアーして回ている。

同時に、きーんは動画配信サイト「ポコチ」のライブ配信も積極的に行ていた。副収入の確保としろぴあの宣伝などがおもな目的であたが。ガールズバンドしろぴあの固定フンは順調に増えていた。

そんなある日、ポコチの配信に自称作家、哲学者のponziさんというリスナーが現れた。最初は面白いおじさんだなという程度の印象であたが、次第にその話の深さ、面白さに引き込まれていた。

第2話ponziさん

下北沢の小さなライブハウスの薄暗い照明の中、ガールズバンド「しろぴあ」の演奏が始まる。ボーカルでギターのきーんが掻き鳴らす力強いコードに乗せて、少しハスキーな歌声が響き渡る。観客はまばらだが、それでも彼女たちの音楽には確かな熱がこもていた。
「しろぴあ」は、きーんを中心に結成された中堅バンドだ。東京近郊のライブハウス、千葉、埼玉、神奈川といた場所を定期的にツアーで回り、地道にフンを増やしてきた。ライブハウス特有の熱気と、きーんの飾らないMCが、じわじわと彼女たちの音楽を広げていた。
そんな中、きーんは動画配信サイト「ポコチ」でのライブ配信も積極的に行ていた。主な目的は、細やかながらも副収入を確保することと、何よりもバンド「しろぴあ」の宣伝だた。ライブの告知はもちろん、日常のちとした出来事や音楽への想いを語ることで、彼女の飾らない人柄に惹かれる固定フンが着実に増えていた。
ある夜のことだた。いつものように自宅の一室から配信を始めたきーんの画面に、「ponziさん」という見慣れない名前のリスナーが現れた。最初は、コメント欄に時折現れる面白いおじさん、くらいの印象だた。しかし、ponziさんの書き込む言葉は、他のリスナーとはどこか違ていた。
何気ないきーんの言葉尻を捉え、ふいに深い哲学的な考察をしてみたり、時には誰も思いつかないような奇抜な視点から日常を切り取てみたり。そのコメントは、最初はきーんを戸惑わせたが、次第にその話の深さと面白さに彼女は引き込まれていた。配信が終わた後も、ponziさんのコメントが頭の中で反芻されることが増えていた。
「一体どんな人なんだろう、このponziさんて…」
きーんは、画面の向こうにいる見えない哲学者の存在が、少しずつ気になり始めていた。

第3話お金では買えないもの

きーんがポコチの配信を続けるうちに、ponziさんのコメントは彼女にとて、もはや毎晩の楽しみとなていた。他のリスナーとの軽快なやり取りの中に、ふと現れるponziさんの深遠な言葉は、まるで静かな夜空に輝く星のようだた。時に難解で、すぐに理解できないこともあたけれど、その奥にはいつもハとさせられるような新しい視点があた。
ある日、きーんがふと漏らしたバンドの歌詞に対する悩みに、ponziさんはこんなコメントを書き込んだ。
「言葉とは、感情の断片であり、思考の残滓である。それを繋ぎ合わせ、意味を与えるのは、聴く者の想像力に他ならない。売れる歌が良い歌とは限らない。真に響く歌は、聴く者の魂を揺さぶる問いかけなのだ。」
きーんはこの言葉が妙に心に引かかた。売れないことへの焦燥感、もと多くの人に届けたいという渇望。そんな彼女の胸の奥底にあるモヤモヤとした感情を、ponziさんの言葉は静かに、しかし確実に刺激した。
それから数日後、きーんは勇気を出してponziさんにメセージを送てみた。「いつもコメントありがとうございます。もしよかたら、今度バンドのことで相談に乗てもらえませんか?」
しばらくして返てきたメセージは、意外にもあさりとしたものだた。「構いませんよ。下北沢によく出没します。近いうちにどこかでお会いしましう。」
数日後、きーんは下北沢の小さなカフで、初めてponziさんと対面した。そこに現れたのは、配信のコメントからは想像もしていなかた、くたびれたヨレヨレのジトを着た、痩せた中年男性だた。目は深く、知的な光を宿しているものの、全体的にどこか陰鬱な雰囲気を漂わせている。
「あの…ponziさんですか?」
「ええ、私がponziです。あなたは…きーん、さんですね。」
二人の間には、ぎこちない空気が流れた。きーんは、もと気難しい哲学者を想像していたのだが、目の前のponziさんは、どこか所在なさげで、話しかけづらい印象だた。
しかし、バンドの話、そして歌詞の話になると、ponziさんはまるで別人のように饒舌になた。彼の口から語られる言葉は、音楽の根源的な力、言葉の持つ多義性、そして聴く者の心に深く突き刺さるメセージの重要性など、きーんがこれまで考えたこともなかたような視点に満ちていた。
その日を境に、きーんとponziさんの間には、不思議な交流が始また。ライブの後、きーんはponziさんにその日の演奏や観客の反応をメセージで伝え、ponziさんはそれに対して、時に辛辣でありながらも本質を突いた批評や、新たな視点を与えてくれる言葉を送てきた。
そしてある時、きーんは思い切て、ponziさんに新しい曲の歌詞の相談を持ちかけてみた。「今作てる曲があるんですけど、どうしても言葉がしくりこなくて…もしよかたら、何かヒントをいただけませんか?」
ponziさんからの返事はすぐに来た。「どのようなテーマの曲ですか?」
「えと…『お金では買えないもの』について歌いたいんです。」
その日の夜、ponziさんから送られてきたのは、数行の短い言葉の断片だた。
「富は砂の城、愛は不朽の宝石。価値は秤にかからず、心に宿る。」
「過ぎ去る時は金なり、だが、刻まれた記憶は永遠。今を生きる意味を問え。」
きーんは、その言葉を見た瞬間、鳥肌が立た。それは、彼女が漠然と感じていたことを、研ぎ澄まされたナイフのように鮮やかに表現していたからだ。
この言葉を元に、きーんは一気に新しい曲を書き上げた。タイトルは、ponziさんの言葉から取て「お金では買えないもの」、そしてもう一曲、「今を生きる」。
下北沢のライブハウスで初めてこれらの曲を演奏した時、観客の反応はこれまでとは明らかに違ていた。言葉の一つ一つが、まるで聴く者の心に深く染み渡るように響き、演奏が終わた後には、これまで以上の大きな拍手が送られた。
ponziさんの言葉が、彼女たちの音楽に新たな息吹を吹き込んだのだ。そして、それはまだ、小さな波紋に過ぎなかた。

第4話今を生きる

しろぴあのコンサートは次第に盛り上がりを見せていた。

「次は新曲です。「お金では買えないもの」」
きーんはオーエンスにあいさつし、ゆくりとギターを奏で始めた。

「あらゆるものがカネで取引される時代。市場原理主義は正しいのか?だが、やはり何かがおかしい

民間会社が戦争を請け負い、臓器が売買され、公共施設の命名権がオークシンにかけられる

結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにして共に生きたいかという問題なのだ

大事なのは、出自や社会的立場の異なる人たちが日常生活を送りながら出会い、ぶつかり合うことだ

なぜなら、それがたがいに折り合いをつけ、差異を受け入れることを学ぶ方法だし、共通善を尊ぶようになる方法だからだ

われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも、市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか

自分の意志で自分の身体を売て、何が悪いのか?プレゼントの代わりに現金を贈るほうが合理的では?

あるものが「商品」に変わるとき、何か大事なものが失われることがある。その「何か」とは?

結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにして共に生きたいかという問題なのだ

大事なのは、出自や社会的立場の異なる人たちが日常生活を送りながら出会い、ぶつかり合うことだ

なぜなら、それがたがいに折り合いをつけ、差異を受け入れることを学ぶ方法だし、共通善を尊ぶようになる方法だからだ

われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも、市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか

われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも、市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか」
圧巻のパフマンスだた。聴衆の歓声が鳴り止まないうちに、きーんは、

「次も新曲です。「今を生きる」」

「わたしは誰かに何かを与えたり誰かを評価したりできるような偉い人間であたろうか?

博愛がモトーのわたしではありますが、今を生きるのに精一杯で誰かを思いやる余裕はない

死に至る病から生還し
終わりよければすべてよし
革新をデザインするイニシエー
不幸から抜け出すモチベー

今を生きる、今を生きる
未来は全部「今」の積み重ね
今を生きる、今を生きる
過去の自分もそのときの「今」

今を生きる、今を生きる
努力の自責性、時間の不可逆性
今を生きろ、しかり生きろ
過熱した時代に実存を誓う

今を生きる、今を生きる
未来は全部「今」の積み重ね
今を生きる、今を生きる
過去の自分もそのときの「今」

今を生きる、今を生きる
愛こそすべて、ジン・レノンの哲学
今を生きろ、しかり生きろ
みんな怯えながら生きてるのだから

今を精一杯生きていればそれで後悔はないというような刹那的な気持ちもあります

立派な経歴立派な人格そういたものとは最初から無縁のゴミためから始また第二の人生

僕はいつだて甲斐性なし
健常に動けるだけマシ
脱構築的なインクルー
パラダイムシフト的イノベー

今を生きる、今を生きる
損得勘定や打算でない愛情友情
今を生きる、今を生きる
理想と現実の狭間、終わりなき旅

今を生きる、今を生きる
彼女ひとり説得できない自分がいて
今を生きろ、しかり生きろ
自己実現じない歴史的使命感

今を生きる、今を生きる
未来は全部「今」の積み重ね
今を生きる、今を生きる
過去の自分もそのときの「今」

今を生きる、今を生きる
恋をしてはまたふられの繰り返し
今を生きろ、しかり生きろ
みんな怯えながら生きてるのだから」

観客の万雷の拍手と歓声はいつまでも続いた。



「お金では買えないもの」「今を生きる」の本当の作者はponziさんであた。

第4話しろぴあのメジデビ

「お金では買えないもの」「今を生きる」は、ライブハウスを中心に口コミで 徐々に広がり始めた。それまで、どこかキチーさに欠けると言われていた「しろぴあ」の楽曲に、ponziの哲学的な歌詞が深みとメセージ性を与え、聴く者の心に深く共鳴するようになたからだろう。
ライブの動員は徐々に増え、物販のCDの売れ行きも目に見えて伸びていた。これまで応援してくれていた古参のフンたちは、自分たちの応援してきたバンドが新しい光を浴び始めたことを喜び、新しいフンたちは、その歌詞の持つ力強さに惹きつけられていた。
きーんは、ponziに感謝の気持ちを伝えた。「ponziさん、本当にありがとうございます。あの歌詞のおかげで、私たちの音楽が変わりました。」
ponziからの返信は、いつものように淡々としたものだた。「言葉は道具に過ぎません。それをどう使うかは、あなた次第です。」
しかし、その言葉の奥には、ほんの少しの温かさが感じられた気がした。
そんな中、インデズ音楽専門のウブサイトで、「しろぴあ」の新しい楽曲が紹介されるようになた。特に「お金では買えないもの」は、「心に突き刺さる歌詞」「現代社会への問いかけ」といたキーワードと共に、音楽好きの間で話題を呼んだ。
そして、ついに小さなインデズレーベルから、アルバムリリースの声がかかた。「しろぴあ」にとて、それは大きな飛躍だた。初めて全国流通に乗るCD。きーんをはじめ、メンバーたちの喜びはひとしおだた。
アルバムに収録された楽曲のほとんどは、ponziが提供した歌詞を元に制作された。「何気ない日常に潜む真理」「人間の孤独と繋がり」「過ぎゆく時間の中で見つける希望」といたテーマを、ponziは時に詩的に、時に鋭利な言葉で表現し、きーんのメロデと歌声が見事に融合した。
アルバムは予想を上回るセールスを記録し、インデズチトの上位にランクインするようになた。ラジオのインデズ番組でも取り上げられる機会が増え、少しずつではあるが、「しろぴあ」の名前は音楽業界の内外に知れ渡るようになていた。
そして、ついにその時が来た。大手レコード会社からのメジデビの誘いだ。幾度かの話し合いを経て、「しろぴあ」はついにメジレーベルと契約を結ぶことになた。
記者会見の日、きーんは緊張しながらも、喜びを隠しきれない表情でマイクに向かた。「私たちの音楽が、もとたくさんの人に届けられるようになると思うと、本当に嬉しいです。これまで支えてくれたフンの方々、そして…ponziさん、本当にありがとうございます。」
ponziは、その記者会見をニスで見ていた。相変わらず薄汚れたアパートの一室で、安物の缶コーヒーを片手に。画面の中できらびやかに輝くきーんの姿は、どこか遠い世界の人のように感じられた。
メジデビ後、「しろぴあ」の勢いは加速した。ponziが書き下ろす歌詞は、その哲学的な深さと普遍的なテーマで、幅広い層のリスナーの心を掴んだ。テレビの音楽番組への出演、大型フスへの参加、音楽雑誌の表紙を飾るなど、彼女たちの活動は目覚ましく、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだた。
きーんは、いつしか誰もが知る人気ガールズバンドのボーカルとなていた。街を歩けば声をかけられ、サインを求められる。かつて下北沢の小さなライブハウスで歌ていた頃とは、まるで別世界だた。
しかし、その success の裏で、きーんとponziの間には、少しずつ距離が生まれていた。多忙なスケジルの中、きーんがponziに連絡を取る回数は減り、ponziからの返信も以前ほど頻繁ではなくなていた。
きーんは、ponziの才能に感謝しつつも、どこか複雑な感情を抱き始めていた。自分の歌声で多くの人を魅了しているのは紛れもない事実だが、その根幹にあるのはponziの言葉なのだという意識が、彼女の中で小さな影を落としていた。
そんな時、きーんは人気絶頂のイケメン俳優、カイトとドラマでの共演をきかけに出会た。爽やかなルクスと飾らない人柄で、女性フンを中心に絶大な人気を誇るカイト。多忙な日々の中で、彼と過ごす時間は、きーんにとて束の間の安らぎとなていた。
二人の距離が縮まるのに、時間はかからなかた。共演者として顔を合わせるうちに、互いの魅力に惹かれ合い、いつしか恋人同士になていた。
しかし、人気者の恋愛は、常に世間の注目を集める。そして、それは時に残酷な結末を迎えることもあるのだ。

第5話スキンダルからの復活

熱愛発覚のスクープは、あという間に週刊誌の一面を飾た。「人気バンドの歌姫、国民的イケメン俳優と禁断の愛!」という刺激的な見出しと共に、二人が都内の高級レストランで親密そうに食事をする写真が大きく掲載された。
記事が出た翌日、芸能界は騒然となた。「しろぴあ」のフンは、突然の報道に衝撃を受け、SNS上では様々な意見が飛び交た。祝福する声も一部にはあたものの、多くはきーんの行動に対する失望や批判だた。特に、これまでストイクに音楽活動に打ち込んできた彼女のイメージとのギプに、戸惑いを隠せないフンが多かた。
所属事務所は、事態の収拾に奔走したが、火に油を注ぐように、数日後には二人が人目を忍んでカイトのマンシンに出入りする写真が別の週刊誌に掲載された。世間のバシングはさらに強まり、きーんがこれまで築き上げてきたイメージは、音を立てて崩れ落ちていた。
テレビやラジオの出演は次々とキンセルされ、予定されていた全国ツアーの中止も決定した。スポンサー企業からは契約解除が相次ぎ、彼女たちの音楽活動は完全にストプしてしまた。
そして、最も大きな打撃だたのは、メジレーベルからの契約解除の通告だた。「社会的なイメージの著しい低下」という理由で、一方的に契約を打ち切られたのだ。
失意のどん底に突き落とされたきーんは、誰とも連絡を取らず、自室に閉じこもる日々を送た。窓の外の喧騒が、まるで遠い世界の出来事のように感じられた。自分がこれまで何を大切にしてきたのか、何のために歌てきたのか、何もかもが分からなくなてしまた。
そんな中、かつてのインデズ時代からの古参フンたちが、彼女を励まそうと動き始めた。特に、初期の頃から「しろぴあ」を熱心に応援してきた「にさん」と呼ばれる女性フンは、SNSを通じて他のフンに呼びかけ、きーんへの応援メセージを集めた。
「きーん、私たちの歌姫。どんなことがあても、私たちはあなたの味方だよ。」
「しろぴあの音楽は、私たちの青春そのもの。また、あの感動を一緒に味わいたい。」
「ゆくり休んで、また元気な姿を見せてください。」
温かいメセージの数々は、少しずつ、きーんの閉ざされた心に届き始めた。そして、フンたちの変わらない想いに触れるうちに、彼女の中で再び小さな火が灯り始めた。「まだ、終わりじない。もう一度、みんなと一緒に音楽を奏でたい。」
きーんは、勇気を振り絞て、かつてのバンドメンバーに連絡を取た。ベースのユイ、ドラムのハル。二人は、きーんの状況を知り、すぐに駆けつけてくれた。
「きーん、大丈夫?私たちはずと、きーんの帰りを待てたよ。」
久しぶりに顔を合わせたメンバーたちの温かい言葉に、きーんの目には熱いものがこみ上げてきた。
そして、彼女たちは再び動き出すことを決意した。原点回帰。まずは、かつて活動の拠点としていた下北沢の小さなライブハウスから、再び「しろぴあ」の音を響かせようと。
復活ライブの告知がSNSで流れると、かつてのフンたちが続々と集まり始めた。チケトはすぐにソールドアウト。久しぶりに見る「しろぴあ」のステージに、観客たちは熱狂した。きーんの力強い歌声と、ユイとハルの息の合た演奏は、ブランクを感じさせなかた。
下北沢での復活ライブの成功を皮切りに、「しろぴあ」は再びライブ活動を本格化させていた。千葉、埼玉、神奈川、そして徐々にその範囲を広げ、全国各地のライブハウスをツアーで回るようになた。かつてのフンに加え、彼女たちの音楽に再び魅了された新しいフンも増え、会場は熱気に包まれた。
一方、その頃、哲学者のponziは、学会でセンセーナルな論文を発表し、大きな波紋を呼んでいた。長年タブーとされてきたテーマに鋭く切り込んだその内容は、一部の若手研究者からは熱狂的に支持されたものの、保守的な重鎮たちの猛反発を招いた。
「学問の冒涜だ!」
「若造の戯言に過ぎん!」
激しい非難の声がponziに浴びせられ、ついには学会からの追放という厳しい処分が下された。世間から隔絶された場所で、ただひたすら真理を探求してきたponziにとて、それは大きな痛手だた。
さらに追い打ちをかけるように、ponziは重い病に侵されていることが発覚した。日に日に衰弱していく体を感じながら、彼は残された時間を必死で生きる。
そんな中、ponziの心には、かつて言葉を交わし、共に音楽を作り上げたきーんの姿が浮かんできた。あの時、彼女の歌声に乗せて、自分の言葉が多くの人々の心に届いた喜びは、彼にとて忘れられないものだた。
最後の力を振り絞り、ponziはきーんに、そして「しろぴあ」に、最後の新曲を書き下ろすことを決意した。それは、彼がこれまで生きてきた中で見つけた、愛の本質についての深い考察が込められた歌だた。タイトルは「愛するということ」。
病床でペンを執るponziの手は震え、時折激しい痛みに襲われたが、それでも彼は一文字一文字、魂を込めて言葉を紡いでいた。それは、かつて彼が与えた言葉への、そしてきーんへの、静かで深い愛情の証だた。

第6話武道館ワンマンライブ

ponziからきーんへ、一通の簡素なメセージと共に、手書きの歌詞が送られてきたのは、下北沢での復活ライブからしばらく経た頃だた。「新しい歌ができました。あなたに、そして『しろぴあ』に。」
久しぶりに届いたponziからの連絡に、きーんは胸騒ぎを覚えた。メセージを開くと、震える文字で書かれた「愛するということ」というタイトルが目に飛び込んできた。歌詞を読み進めるうちに、きーんの心は深く揺さぶられた。
それは、見返りを求めない無償の愛、喜びも悲しみも分かち合うことの尊さ、そして、たとえ形が変わても決して消えることのない、魂の繋がりを歌た壮大なバラードだた。ponziがこれまで語てきた哲学的な言葉たちが、温かく、切ないメロデを奏でるように、きーんの心に響いた。
「ponziさん…」
きーんは、すぐにponziに電話をかけたが、繋がらなかた。何度かけても、応答はなかた。胸のざわつきが収まらないまま、彼女はponziの消息を辿ることにした。かつて彼が下北沢のカフによく来ていたという情報を頼りに、いくつか店を回てみたが、手がかりは得られなかた。
数日後、共通の知人を介して、きーんはponziが入院している病院を知た。急いで病院へ駆けつけると、ponziはまたく意識が朦朧とした状態だた。痩せ細り、生気のない顔を見て、きーんは言葉を失た。
「…きーん、来てくれたんですね…」
かすれた声で、ponziはそう呟いた。
「ponziさん!どうして…何も言てくれなかたんですか?」
きーんの声は震えていた。
「…もう、長くはないんです…でも、最後に…あなたに、歌を…届けたかた…」
ponziは、そう言うのが精一杯だた。きーんは、彼の冷たい手を握りしめ、涙が止まらなかた。
ponziは、そのまま静かに息を引き取た。彼の遺した最後のメセージ、「愛するということ」は、きーんの胸に深く刻まれた。
ponziの死を乗り越え、きーんと「しろぴあ」は、再び歩み始めた。ponziが遺してくれた最後の楽曲「愛するということ」を、彼女たちは大切に歌い続けた。その歌には、ponziの深い愛と、生きるということへの静かな肯定が込められており、聴く者の心を優しく包み込んだ。
そして、ついにその日がやてきた。「しろぴあ」の武道館ワンマンライブ。インデズ時代から夢見てきた舞台。チケトは発売と同時にソールドアウトし、会場は熱狂的なフンで埋め尽くされた。
開演時刻を迎え、ステージに光が灯ると、割れんばかりの歓声が沸き起こた。きーん、ユイ、ハルの三人がステージに姿を現すと、その歓声はさらに大きくなた。
ライブは、「しろぴあ」の代表曲の数々で幕を開けた。力強いギターサウンド、うねるベースライン、そして魂を込めたきーんの歌声が、武道館全体を揺るがす。観客たちは、歓喜の声を上げ、体を揺らし、それぞれの想いを音楽に乗せていた。
ライブの中盤、きーんは静かに語り始めた。「今日という日を迎えられたのは、いつも応援してくださる皆さん、そして…もうこの世にはいないけれど、私たちに大切な言葉と音楽をくれた、ponziさんのおかげです。」
深々と頭を下げたきーんは、ゆくりと「愛するということ」のイントロを奏で始めた。会場は静まり返り、誰もがその歌に聴き入た。
《愛とは与えること 見返りを求めず
喜びも悲しみも 分かち合うこと》
きーんのメローでコケテな歌声が、武道館の隅々まで染み渡る。ponziの言葉が、彼女の歌声を通して、聴く者それぞれの心に深く語りかけてくるようだた。
曲が終わると、会場は割れんばかりの拍手とすすり泣く声に包まれた。それは、ponziへの感謝の想い、そして「しろぴあ」の音楽が人々の心に深く根を下ろしている証だた。
ライブの模様は、YouTubeとTikTokで世界中に生配信されていた。画面の向こうには、言語や文化を超えて、多くの人々が「しろぴあ」の音楽に心を奪われていた。
アンコールに応え、再びステージに現れた「しろぴあ」は、最後に最高のパフマンスを繰り広げた。きーんの歌声は力強く、メンバーの演奏は一体となり、武道館のボルテージは最高潮に達した。
歌い終え、深々と頭を下げるきーんの目には、熱い涙が溢れていた。それは、ponziへの感謝、フンへの感謝、そして、苦難を乗り越えて辿り着いたこの場所への、深い感慨の涙だた。
冴えない哲学者の言葉と、ガールズバンドの魂が共鳴し、生み出された音楽は、国境を越え、時代を超えて、人々の心に響き続けるだろう。「しろぴあ」の物語は、まだ終わらない。彼女たちの音楽は、これからも多くの人々の心を照らし続けるのだから。
付記
Gemini。改稿。
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