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「本当に奇跡だわ」
私は、宇宙服を脱ぎ捨てながら、笑うしかなかった。
錆付いた宇宙ステーションの残骸の下で、笑っていた。
何か残っているものがないか見回してみたが、さすがに何も残ってはいない様子だった。
まぁ、仕方あるまい。ステーションの錆を近くでしっかりと確認できたのだから、それで十分だった。
そう、長い年月を物語るように、ボロボロに錆付いていた。
この辺りの星は小さすぎて大気自体がないか、あるいはMZ星というテラフォームされた土地か、どちらかしかあり得ない。
物がこんなに錆びているのなら、それはつまり物を腐食させるだけの大気があるということだ。
MZ星の酸素に他ならない。
辺りは不毛の土地だが、単純にこの辺りが、砂漠気候だっただけということだろう。
テラフォームしても土が悪かったりすると、どうしても砂漠地帯は出来る。
そういう意味では、大当たりの落下地点とは言いがたいが、しかし砂漠地帯はそう広くなかったと記憶している。
おそらく歩いていける範囲内に、人の住む土地があるだろう。
「まさか、沢山の星の中から、MZ星に落ちるなんて、神様の思し召しは、本当にあったのね」
私は、そういえば同乗者の二人を置いてきてしまったことを思い出した。
ポッドの中ですごした時は、とてもギスギスしていた。
怖い人達だったけれど、それは生きるか死ぬかの状況で気が立っていたからだろう。
二人が来ないのであれば、しばらくしてから迎えに行ってもいいかもしれない、と思ったが、とまれしばらくは、宇宙服の中では長らくお預けだった、空気に満ちた風を体中の肌で味わっていたかった。
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