キスがシタイ【完全版】
キスがしたい。キスがしたい。キスがしたい。キスがしたい。
京都なまりの彼女とキスがした過ぎて、胸の内はその言葉でい
っぱいだ。
なにしろ、初めてできた恋人で、初めてその彼女の部屋にお邪魔して、京風味付けの手料理をごちそうになった後、まったりとしながらも、彼女が興味のあるゴッドオブスローンなんとかという海外ドラマのDVDを、ソフアーにカップル座りしながらながめているのだ。
オレの気分が上ずっているのも理解していただけるだろう。
しかし問題が一つある。
彼女はゾンビなのだ。
そう、あのゾンビ、腐乱死体なのに動き回って人を襲うあのゾンビ。
だけど、最近の科学技術の進歩は目覚ましく、防腐処理剤が開発され、整形手術もなされ、国からの福祉系補助金もおり、体臭はフローズンヨーグルト程度に抑えられている。
だから、あまり問題はないのだけど、唯一つ難点は、粘膜の接触により、キスをすると僕もゾンビになってしまうということだ。
これは、あまりいただけない。
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しかし、美人ゾンビの彼女を前にそんな理性は吹き飛んだ。
僕は、彼女をそっと引き寄せ、耳元で甘いささやきをつぶやくと、目を閉じ、彼女の唇に唇を近づけ……
そのとき、ゾンビな彼女がこう言った。
「ぶぶ漬け食べはりますか?」