てきすとぽい
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〔 作品1 〕
〔無題〕
(
わに 万綺
)
投稿時刻 : 2019.12.27 16:39
最終更新 : 2019.12.31 15:39
字数 : 8
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2019/12/31 15:39:38
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2019/12/28 15:28:10
-
2019/12/27 16:39:16
これからだから上っておいでよ
わに 万綺
よく行く新橋のはなまるうどんがつぶれていた。グー
グルマ
ッ
プにはそんなこと書いてなか
っ
たから意気揚々と行
っ
てみたのに、私たちの前に現れたのは空
っ
ぽにな
っ
たテナントだけだ
っ
た。
「あらー
」
なくな
っ
ち
ゃ
っ
てますねえ、のんびりした声でそう言
っ
て、タカハシさんはスマホを取り出した。
「近くにあるかな、はなまる」
「別にはなまるじ
ゃ
なくてもいいですよ」
小さな声で提案してみたけど、たぶんこの人ははなまるが食べたいのだ。もしくは丸亀。私もポケ
ッ
トからスマホを出して、グー
グルマ
ッ
プにもう一度「はなまるうどん」と打ち込んだ。昼下がり、ビルに遮られて日光の当たらないここは少し肌寒い。
ペアー
ズでマ
ッ
チングした人が料理人だ
っ
たのは今回が初めてではない。これでもう三回目だ
っ
た。
元彼と別れて半年とち
ょ
っ
と、これくらいのインター
バルをと
っ
たのだからもう次へ行
っ
ていいだろう、と適当に自分に言い訳をして新しい恋人を探すことにしたのが一カ月半ほど前。会社の同僚に声を掛けて合コン的なものに出てみたり、相席居酒屋に行
っ
たり、街コンに参加してみたりしたけど、なんだかいきなり対面で初対面の異性と話すのはあまり居心地の良いものではないと気がついた。相手の表情、視線、緊張した振る舞い、そういうもの全部が気持ち悪く思えてきてしまうのだ
っ
た。もちろん自分が選ぶ側だ、相手が選ばれる側だ、なんて驕
っ
ているつもりもないけど、なにも知らない異性を目の前にして「この人と恋愛できますか?」
っ
て問いを眼前に突き付けられているような焦りのある空気感にあてられてしま
っ
たのだと思う。
だから半月ほど前からそういうことを全部やめて、マ
ッ
チングアプリを使うことにした。今年に入
っ
てからやたら通勤電車で広告を目にするからユー
ザー
数は結構いるんだろうなあ、と思
っ
ていたけれど、登録して数日間、通知が鳴りやまなか
っ
たのは驚きを通り越して少し恐怖だ
っ
た。
新橋から少し歩いて、虎ノ門のはなまるうどんに入
っ
た。
や
っ
たー
、と嬉しそうに言
っ
てタカハシさんは扉を開ける。その後ろについて私も店内に入
っ
た。
「えー
め
っ
ち
ゃ
久しぶりですはなまる入るの。たぶん二年以上きてない」
はなまるうどんでこんなに喜んでいるのは外国人観光客と彼くらいじ
ゃ
ないだろうか。私は笑
っ
て、注文方法おぼえてます? とからかいながら揚げ物の小皿を手に取る。
料理人は舌が肥えているだろうし外食なら高級なところにしか行かないんじ
ゃ
ないかな、なんて思
っ
ていたけれど、マ
ッ
チングした料理人たちはみな日常的で非常に敷居の低い店に行きたが
っ
た。最初に会
っ
た、高級ホテルのレストランに勤めているというミヨシさんは”牛角”に行きたいと言
っ
て二人で焼き肉を食べたし、次に会
っ
た高級フレンチが有名なチ
ェ
ー
ン店に勤めるトドオリさんとは”俺のフレンチ”おいしいよ、と言
っ
てフレンチを立ち食いし、結構面白か
っ
たので次に会
っ
たときは箱根そばを食べた。
今日、初めて会うことにな
っ
たタカハシさんもその例にもれず「何か安くて懐かしい感じのものが食べたい」と言
っ
た。十一月下旬、つめたい風が少しずつその威力を増してくる季節に食べたいものと言えば、あ
っ
たかいそばやうどんや鍋。私は学生ときによく行
っ
ていたお店を適当にピ
ッ
クア
ッ
プして提案し、じ
ゃ
あ夜は湯島にある居酒屋のもつ鍋を食べようということにな
っ
た。ただ二人が観たか
っ
た映画の上映が妙に早い時間帯のものしかなく、観終わ
っ
た時点でまだ午後の二時にもな
っ
ていなか
っ
たのだ
っ
た。
そして今に至る。
「料理人だから安物は嫌いだ
っ
て思
っ
てたんじ
ゃ
ないですか」
卵のあんかけうどんをトレイに乗せたタカハシさんが、席について早々笑いながら訊ねてきた。割り箸をパキ、と綺麗に割
っ
て丼の中に滑り込ませる。私はマ
ッ
チングアプリで出会
っ
た人たちのことをマ
ッ
チングアプリで出会
っ
た別の人に話すべきかどうか一瞬思案した。
「
……
まあ、ち
ょ
っ
と呆気にとられはしましたね」
言わないことにした。
「マオさん
っ
て、アパレル関係でした
っ
け? 自社ブランドの服が好きでも、や
っ
ぱり他のブランドも着たいなあとか、ユニクロいいよなあとか、思いませんか」
「ユニクロはいいですね、確かに」
言いながら私もかけうどん小サイズを食べる。学生の頃は105円だ
っ
たのに、いつの間にか150円にな
っ
ていてび
っ
くりした。まあそれでも安いんだし、私も社会人にな
っ
たんだからもう少し高いものを頼みなよと思う。でもアパレル店員の賃金はあきれるほど低いから許してほしい。
「もちろんおいしいんですようちの店、び
っ
くりするくらい。自画自賛
っ
てち
ょ
っ
と恥ずかしいですけどね」
店内の有線は最近流行りのドラマ主題歌を流している。ああ、先週の録画まだ見てなか
っ
たなあ。
のんきでカジ
ュ
アルな店にいると、こ
っ
ちものんきでカジ
ュ
アルな気持ちにな
っ
てくる。
「でも休みの日くらい、そういう完全無欠みたいなのから離れたいんですよね。マオさんの希望には添えてないかもしれないですけど」
「いや全然」私はかぶりをふる。
「高級レストランなんて記念日くらいが丁度よくないですか」
それならよか
っ
た、とタカハシさんがまた笑うので、でもはなまるがいい
っ
ていう人はなかなかいませんよ、ともうひと笑いと
っ
ておく。
早い時間帯であろうとぜひ観たい、とい
っ
ていた例の映画はち
ょ
っ
とチー
プなアクシ
ョ
ンものだ
っ
た。洋画だけれど、ハリウ
ッ
ドみたいな大がかりでスペクタクル全開なそれではなくて、ばかばかしい感じのB級フ
ィ
ルム。十年前に流行
っ
たタイトルの続編なのだ
っ
た。最初はひとりで行くつもりだ
っ
たのだけれど、上映中に手でも握られない限り二人で行
っ
ても問題ないだろうと思い提案してみたら、彼も行きたいと思
っ
ていたのだという。十年前のタイトルもき
っ
ちり映画館で見たらしい。当時中学生だ
っ
た私はまだ洋画に興味がなか
っ
たので大学生にな
っ
てからDVDで見たのだ
っ
た。映画館で見た彼が少しうらやましい。
今日、日比谷の新しい映画館で観たそれは、十年前観たタイトルよりもずいぶん色々と整
っ
ているように感じた。タカハシさんも同じように感じたようだ
っ
た。
「なんだか低俗な感じがち
ょ
っ
と減
っ
ち
ゃ
っ
たよね。セ
ッ
トとかもだけど、ストー
リー
がわかりやすすぎたのかな」
確かに前作はストー
リー
展開が意味不明で、そこがまた面白か
っ
たのだ
っ
た。
「そうですねえ、いつの間にか死んでたり、生き返
っ
てたり、そういうのなか
っ
たですね」
「そうそう。前のやつは急に誰?みたいな人が出てきたりしてね」
ランチの時間帯を少し過ぎた虎ノ門は変に静かだ
っ
た。みな周りのオフ
ィ
スでPCに向か