てきすとぽい
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第13回 凶暴幻想短編コンテスト
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通り魔とJK
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2015.12.17 22:54
字数 : 1712
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通り魔とJK
茶屋
多分、決意したのはAmazonで金属バ
ッ
トを見かけた時だと思う。僕のうちにあ
っ
た不満やら絶望やら諦観が一緒くたにな
っ
てそいつをカー
トに入れさせていて、余勢を駆
っ
てスカルフ
ェ
イスマスクもカー
トに放り込んでいた。元々はゲー
ムでストレス解消でもするつもりで買
っ
てきたギフト券はそいつらの代金に消えた。
人を小馬鹿にしたような笑みに見える矢印が特徴的なダンボー
ルが届いた時には既に事故
っ
こうすることは既定路線にな
っ
ていたし、問題はいつやるかであ
っ
たのだけれども、箱を開けた瞬間に(今日やろう)と決めてしま
っ
た。は
っ
きりい
っ
て能動的なのか受動的なのかよくわからない決断のもとに、僕は通り魔をすることにしたのである。
不満のはけ口に通り魔を選んだのか、どこか衝動的だ
っ
たのか、それともどこか精神がおかしくな
っ
ていたのか、正直い
っ
てそこのところは僕にもわからない。ただ漠然と、僕は行動を起こそうとしていた。衣装ケー
スを明後日、買
っ
たはいいものの似合わずにあまり着ていない黒いパー
カー
と黒いスキニー
ジ
ャ
ー
ジに身を包みをスカルフ
ェ
イスマスクで口元を覆
っ
て、いつもかぶ
っ
ている黒いニ
ッ
ト帽を身につけると、新品の金属バ
ッ
トを持
っ
て闇の中を散歩する。
相手は、特に決めていない。
場所も、特に決めていない。
だから多分、最初に出会
っ
た人を殴る。
この金属バ
ッ
トで。
行き当たりば
っ
たりの計画性のない通り魔。
捕まるかどうかなんて別段考えていなか
っ
た。捕ま
っ
たところで、別にどうでもいいや、と思
っ
ていた。
しばらくぼんやり歩いていると墓地の近くで、人影を見かけた。
あいつでいいや。
そう思いながら近づくと、制服姿だ。確か市内の女子校の制服。こんな遅くに帰るなんて部活帰りか、塾帰りか。全く危ない。襲われたりしたらどうするんだ、なんて考えながえていると、はたと気がつく。
襲うのは僕だ。
相手はか弱い女子高生。JKだ。そんな相手を襲うなんて卑劣だ。卑怯だ。なんて思いが巡るも結局はそんなことはどうでもいいのであ
っ
て、僕は足早に彼女の背後に近づいてバ
ッ
トを大きく振りかぶ
っ
た。
そしてフルスイングで彼女の背中をぶ
っ
叩く。
彼女の歩みがピタ
ッ
と止ま
っ
た。
ん? なんか違う? 倒れたり、痛みのあまり叫んだり、し
ゃ
がみこんだりするんじ
ゃ
ないのか? こういうもんなのか?
少し不思議に思
っ
ていると、彼女は不機嫌そうな顔で振り向いた。
「駄目! 気持ちがこも
っ
てない! やり直し」
さすがにこの言葉には僕も耳を疑
っ
た。
「え?」
「だからー
、やり直し! 全然気持ちが伝わ
っ
てこない! 怒りも絶望も憎悪も悪意も殺気もなんにも伝わらない! そんな空
っ
ぽの攻撃なんて効かないから! じ
ゃ
、また歩くから、少ししたらもう一回ね!」
言いたいことを言いたいだけ言い放つと彼女はまた踵を返して歩き出す。
唖然としながらも気持ちを切り替えて、今度はバ
ッ
トを上段に構え、頭を狙
っ
て振り下ろした。
が、バ
ッ
トは彼女の頭蓋に到達することもなく、片手でが
っ
しりと握られた。
「な
っ
てない。全然な
っ
てない。そんなんじ
ゃ
ハエ一匹殺せない」
いや、バ
ッ
トでハエを殺すのは意外と難しいのではなかろうかと思
っ
ていると、「ち
ょ
っ
と貸して」と彼女は僕から金属バ
ッ
トを奪い取
っ
た。
彼女はニカ
ッ
と笑うと「お手本、見せてあげる」と言
っ
て、バ
ッ
トを振りかぶ
っ
た。
何が起こ
っ
たのかはよくわからなか
っ
た。
頭に衝撃が走
っ
た次の瞬間首に衝撃が伝わり、体全体から力が抜けてアスフ
ァ
ルトから横にな
っ
た世界が霞んで見えていた。
「どう? こうやるんだよ? わか
っ
た?
っ
て聞いてる? てか聞け! おい!」
次第に薄れ行く意識の中、彼女のパンチラが見えた。正直言
っ
て、そんな状態の僕にはどうでもいい光景だ
っ
たけど、これが人生最後の光景かと思うと少し悲しくな
っ
たのを覚えている。
まあ、それが彼女との出会いだ
っ
た。
最悪で最低でどうしようもない出会いだ
っ
た。
だけど、出会いということは最悪と最低はそれで終わりじ
ゃ
なか
っ
たんだ。
最低で最悪で苛烈な非日常がその日から始ま
っ
た。
元作品
企画:バー
ル神&キツネくん合同祭 30字小説賞
タイトル:金属バ
ッ
ト通り魔
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