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てきすと恋2016~サルでも読める恋愛小説大賞~
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車か、電車か
 投稿時刻 : 2016.12.24 02:28 最終更新 : 2016.12.24 07:02
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- 2016.12.24 07:02:12
- 2016.12.24 02:28:10
車か、電車か
三和すい


『明日は休み。予定ある?』
 彼からの短いメセージがlineで飛んできたのは金曜日の午後、遅めの昼食を休憩室で食べていた時だた。
『ないよ。どこか行く?』と慌てて返信。本当はカトの予約を入れていたけど、急いで美容室のアプリを開いて今日の夕方に変更。ついでにスタイリストのランクも上げておく。何しろ彼と会えるのは二週間ぶりなのだ。
 学生の時は毎日のように顔を会わせていたけれど、今は私も彼も会社員だ。平日は仕事で、ゆくり会えるのは土日くらい。その土日でさえも、彼の休日出勤でデートの約束が延期になることもしばしば。毎日lineでやりとりしていても、それだけではやぱり物足りない。そろそろ会いたいなと思ていたところだた。
『鳥、見に行きたい』
 返てきたメセージに、私は少し心配になる。いつもなら具体的な場所を言てくるのに曖昧な内容しか送てこないのは、彼が相当疲れている証拠だ。
(バードウチングは無理かな?)
 私も彼も鳥が好きだ。私たちが知り合たのも、通ていた大学近くの川辺でバードウチングをしていた時だ。今でもたまに二人で野鳥を探しに行くことがあるが、今回はあきらめた方がよさそうだ。野鳥を探してあちこち歩き回たり、野鳥が来るのをじと待たりと、野鳥を眺めるのにも体力と気力が結構必要なのだ。
『それなら鳥類センターに行てみない? 最近アカツクシガモのヒナが生まれたんて』
 鳥類センターは鳥ばかり集めた動物園だ。狭いけれど何度行ても飽きない場所で、高校生の時は毎月のように通ていた。クジクやフクロウや水鳥だけでなくケープペンギンもいるところがいいし、ケヅメリクガメが園内を自由に歩き回ているのも気に入ている。エサを買て鳥にあげることもできて、千円近く使てしまうこともある。まあ、エサを持て水鳥コーナーに入た時に大股で接近してくるフラミンゴはちと怖いのだが。
 会社近くで一人暮らしをしている今では足が遠のいてしまたが、鳥類センターのホームページやスタフブログは毎週のように確認している。
『少し遠いけど、天気もいいし、どう?』
『いいよ』
『じあ、9時に駅で待ち合わせね』
 何を着ていこうかと考えながら、私は残りのお昼を食べ始めた。


 翌日、駅前の駐車場に愛車を止めると、私はlineでメセージを送た。
『おはよ。今、駐車場に着いたよ。そちはどこ?』
『は? まさか車で来たのか?』
 彼からの返信に、私は(おや?)と思いながら顔を上げる。遮る物が何もないので、駐車場からは駅がよく見える。改札口から飛び出すように出てきた彼は、速歩で私の車までやて来た。
「お前、何で車なんだよ!」
 助手席のドアを開けるなり言い放たれた言葉に、私はキトンとする。
「何で……車じなかたらどうやて行くのよ」
 私と違て彼は車も免許も持ていない。だから私が車を出すものだと思ていたのだが、
「電車に決まているだろうが!」
「駅からかなり離れているよ」
「バスに乗ればいいだろう。調べたら本数かなりあるぞ!」
「電車の乗り継ぎが面倒じないの」
「車はすぐに酔うから嫌なんだよ!」
「休憩しながら行けば平気でし!」
「お前の運転が乱暴だて言てるんだよ!」
「そちの三半規管が弱すぎるのよ!」
 と言たところでいくつかの視線に気づいた。見回すと駐車場にいる人や通りかかた人たちがチラチラと私たちの方を見ている。大声で怒鳴り合ていれば注目を集めるのは当然の結果だ。
 気づいた彼も口を閉ざし、慌てて助手席に乗り込んだ。
「とりあえず、車出すわよ」
「おう」
 私の愛車は駐車場から公道へと出る。
(これからどうしよう……
 ハンドルを握りながら私は考え込む。このまま車で行くのは彼が嫌がるだろうし、家に車を置きに戻ると時間がかかるし、どこか有料駐車場に車を止めてもいいけどお金が無駄なような気がするし。
(あーあ。どうしていつもこうなるんだろう……)
 彼の前では笑ていたいのに、彼と一緒に笑いたいのに、何故か会うとケンカになることが多い。せかく一緒にいられるのに、こんな風にギスギスした空気のままでいるのは嫌だ。けれど、何て言えばいいのか、どうすればいいのかわからないまま車を走らせていると、
「やぱり、このまま車で行くか」
 助手席の彼が言た。
「鳥類センターに着いたら、車から降りるからな……手をつなぐのはそれからでもいいし」
 え? 何? どういうこと?
 私と手をつなぎたいから車は嫌だたの?
 戸惑う私の横で、彼は「それに」と言葉を続ける。

「運転しているお前の顔を、助手席からずと眺めているのも悪くないしな」

 やぱり車で来なければよかたと、私はハンドルを握りながら後悔する。
 だて、運転している時にこんな不意打ちをくらたら、赤くなた顔をそむけることも、ゆるんだ口元を手で隠すこともできないじないの!
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