でんしゃの  きてきが  なりました。

あなたは  どんな  でんしゃに  のりたかった  ですか？

きれいな  でんしゃ？

それとも  かっこいい  でんしゃ？

それでも。

でんしゃは  とまることが  できません。

あなたは  もう、のって  しまったの  ですから。

ですから。

ていしゃえきまで。

すこし  おはなしを  しませんか。


あなたは、いま  がたがたと  でんしゃに  ゆられています。

どこに  むかって  いますか。

きれいな  けしきの  みずうみ？

それとも、だれも  みた  ことの  ない  くらい  よる？

それは、だれにも  わかりません。

けれど、あなたは  のりたい  でんしゃに  のろうと  おもったのに  ちがい  ありません。

いま  でんしゃは  どこに  むかって  いますか？


わたしも  また、でんしゃに  のって  います。

くらい  くらい  だれも  みた  ことの  ない かなしい  たそがれの  うみへ。

たそがれが  くらい  なんて  おもった  ことは   ないかも  しれません。

あんなに  あかく、あなたの  かげを  みおろして  いるの  ですから。

でも、わたしには  しんかいの  こどくのように  くらい、くらい  ひかりの  ささない、まるで  すべての  おわりの  ように  みえます。


ほら、みて  ください。

あなたの  めには  ながれゆく  しゃそうの  まどが  あります。

いろんな  けしきを  うつしては  きえて、すぎて   いきます。

あなたが  すきだった  あのこ。

えがおで  だれかの  かたに  よりかかって、すぎて  いきます。

あなたが  すきだった  あのゆめ。

きらびやかな  あかりを  ともして、あなた  いがいの  だれかを  ともして  います。

あなたが  いま、こころの  おくそこに  かくして  しまった  あのひとの  えがおも。

みえますよね？


わたしにも  みえます。

わたしが  あいした  あのひと。

いつまでも  かわらない  あの  えがおで。

ずっと  しゃそうの  そとで  てを  ふって  います。

その  えがおは  いろあせない  ままで。

ずっと、ずっと  てを  ふって  います。

ふりかえしても、あのひとには  みえませんから。

それでも  ふりかえして  しまいたく  なるのです。

それが、あい  という  もの  なのかも  しれません。

はやく、わたし  のこと  なんて  わすれて  しまえば  いいのに。

でも、そんな  こえは  とどきません。

だって、わたし  たちは  ながれて  いって  しまう  しゃそうに  さえぎられて  いるの  ですから。


でんしゃの  きてきが  なりました。

けしきは  だんだんと  ゆっくり  となって、あなたの  みたく  なかった  けしきが  ゆっくりと、すぎて  いきます。

しっぱい  した  こと。

わすれたい  こと。

もっと、こうして  あげたら  よかった。

そんな  こうかいの  こうずい。

みえない  ふりは  やめて、みつめ  ましょう。

それが  あなたの、あなたが  いきた  あかし  ですから。


ほら。

みて  ください。

えきの  ほーむは、たくさんの  ひとで  あふれて  います。

みんな、いろいろな  かおを  して  います。

これからの  ことを  おもって、ものうげな  ひと。

あしたの  だれかの  ために、いきようと  みえない  あおい  ひかりを  もやして  いる  ひと。

あなたは  いま、どんな  かおを  していますか？    

しゃそうに  うつる  あなたの  かおを  みてみて  ください。

きっと、あなたの  こころが  そこに  あります。


わたし  ですか？

あなたは  ふしぎな  ひと  ですね。

わたしの  ことを  きにした  ひとは、あなたが  はじめて  ですよ。

わかりました。

おおしえ  しましょう。

わたしは  この  でんしゃの  こころ  です。

たくさんの  ひとびとを  のせて、たくさんの  おもいを  のせた  でんしゃの  しゃしょうです。

でんしゃにも  おもいが  あります。

この  でんしゃに  のって、あなたたちは  どうなって  しまうの  だろう  とか、この  でんしゃに  のって   ほしく  なかった  とか。

いろんな  ことを  おもいながら、こうやって  あんない  してるの  です。

あなたの  たどりつく  いきさきを。


ほら。

どあが  あきましたよ。

この  でんしゃの  しゅうちゃくえきは、あの  かなしげな  ひとが  のぞむ  くらい、くらい  たそがれの  うみ  です。

でも。

あなたには  まだ  おりる  えきが  あるで  しよう。

あなたを  みて、てを  ふってる  あのひとが  わたしには  みえますよ。


たくさんの  ひとが  のって  きましたね。

わたしの  こえが  きこえますか。

とどきますか。

あなたの  おりる  えき  ですよ。

それでは。

また、あう  ひ  まで。

その  とき  まで、どうか  おげんきで。

わたしは  いつでも、あなたを  おまち  して  います。

またの  ごりようを。


でんしゃは  どこまでも  おわる  ことなく  つづいて  いく。

あなたが  おりた  あさの  ひかりに  つつまれた  えきを  とおくに  ながめながら。

(了)

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