てきすとぽい
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第38回 てきすとぽい杯
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とらいあんぐる
(
ゆきな(根木珠)
)
投稿時刻 : 2017.04.15 23:19
字数 : 851
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とらいあんぐる
ゆきな(根木珠)
参吉は毎日、酒を呑んでは暴れていた。
ある日、おつうは尋ねた。
「あんた、どうしてそんなに呑んでばかりなんだい」
「うるせえ」
「たのむからし
っ
かりしておくれよ」
だが参吉は、ふいとそ
っ
ぽを向いてしま
っ
た。
ま
っ
たく困
っ
たね、とおつうは思う。
けれどもそれきり何も言わず、おつうは夕餉の仕度を始めた。
すると、参吉の弟が家に訪ねてきた。名を弐兵衛とい
っ
た。
「義姉さんすまね
ェ
、いつも兄さんが世話ンな
っ
て」
「まあ、夫婦なんてそんなもんさ」
「迷惑ついでとい
っ
ち
ゃ
なんだが、頼みがあんだ」
「なんだい」
夕餉をつくる手を止め、おつうは振り向いた。
「一緒にな
っ
てくんねえか」
「なにと」
「え
……
いや、だからその
……
」
弐兵衛はおつうの手を取り、引
っ
張
っ
た。
「ち
ょ
」
おつうは慌てる。しかし弐兵衛はおつうをつれて外へ出てしま
っ
た。
数間先まで歩いてから、弐兵衛は口を開いた。
「ち
ょ
っ
と来てくんねえか」
「もう来てます」
「あ、そうだ
っ
たな
……
、それで、あのう」
「駆け落ちかい、それとも心中かい」
「ど
っ
ちがいいかな」
「あたしに訊かないどくれよ」
すると弐兵衛は、袂から紐状のものを取り出した。
「あー
、これせ
っ
かく持
っ
てきたから心中で」
「そんな理由で
……
」
「オナシャス」
「ええー
」
一瞬の隙を突くように紐を括り付けようとしてくる弐兵衛を、おつうは身軽に躱しながら考えあぐねていた。
――
はて、どうしたもんかねえ。
参吉は座敷で一人、酒を呑んでいた。
ふと嫌な予感めいたものを感じ表へ出ると、おつうと弐兵衛がいた。
参吉は言
っ
た。
「お、おめえ、おれの弟になにしたんだ」
おつうは紐を、弐兵衛の首に駆けており、そのまま引きず
っ
て来たのだ
っ
た。
「なに
っ
て、参吉、あんたの男色をあたしが知らないと思
っ
ているのかい。
あんたと弐兵衛が想い合
っ
てるのは知
っ
てた。
だけどまさか、弐兵衛があたしを殺しにくるとはね。
ほんとはね、この遺体を河に棄てて来ようかとも思
っ
たんだ」
――
せめてもの慈悲だよ。
それだけ言うと、おつうはその場から去
っ
た。
参吉は、しばらくその場でとぼんとしていた。
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