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第48回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
〔 作品1 〕» 2  11 
夜のドライブ
 投稿時刻 : 2018.12.15 22:20
 字数 : 1320
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夜のドライブ
ふわ ゆー


 職場の陰湿な人間関係や残業続きで気分がふさいでいたので、友達二人が夜のドライブに連れ出してくれた。
 若い頃はこうやて、3人でよく遊んだ。
 オレたちはなぜだか最初から気が合た。
 夜の浜辺で花火をしたり、カラオケに行たり、高校生の頃にはロシア美女の住むアパートに下着泥棒に行たりした。だけど、これは未遂で終わた。

 オレは友達の運転する車の後部座席で、前の二人のそんな会話にあいづちをうたり、ほほえんだりした。
 塞いだ気分も少しずつ軽くなていく。

 と、気がついたらシクリが始まていた。
 オレは環境や気圧の変化でシクリが続くクセがある。
 今回も、どうにも止まりそうにない。

 前の二人もシクリをしはじめた。
 不思議とこういうところも、オレたちは気が合う。
「ペトボトル半分くらいの水分をとたら、すぐ治るんだけどな、ヒク」
 とオレが言うと。
「へえ、そうなんだ、ヒク」
 と助手席のBが感心する。
 でも運転しているAは、
「田舎道だから、しばらくコンビニも自販機もなさそうだぜ、ヒク」
 と言た。

「じあここはベタに、互いを驚かしたらいいんじないか? ヒク びくりしたらシクリが止まるていう民間伝承があるだろ? ヒク」
 とBが言たので、みんなでしばらく『驚くようなこと』を考えた。

 車内は沈黙し、低いエンジン音とともに窓の外を よるの森の風景が流れていく。
 本当に自販機どころか、灯りもない田舎道だ。

    *

「そうそう……、ヒク」
 とAがそんな沈黙を切り裂いて話はじめた。

「そういえば、この前行た結婚式の祝辞スピーチで、新郎側代表になたBが怖い話みたいなスピーチをしたことがあたじないか。あれは驚いたぜ」
「え、そんなことあけ?」
「ああ、『二人の馴れ初めは、オレたちが男女6人で山奥の古いお寺にきもだめしに行たときです』て、話はじめたときは不謹慎なやつだなと思たぜ」

「ああ思い出した。でも、実際あれで仲良くなて結婚したんだからなあ、ホントのところ」
 とBが憤慨してみせる。
「それで、あのとき本当に見ちたんだよな」
「ああ、アレびくりしたぜ」

 女子のうちの一人で霊感のある子が『小さくすすり泣くような声が聞こえてくる』て言い出して、みんなでその音の出どころを探したんだ。
 結局、雑草がおいしげる墓場の奥まで探しまわたんだよ。
 そしたら、無縁仏の石碑の影で、ぼーと光るように白いワンピースの少女が、うずくまて泣いている姿が……


「それが、今の新婦です!」
 て、ご列席のみなさん驚いてたなあ。

「へえ……、ヒク」
 でもオレのシクリは止まらない。

「なんだそれ? 誰の結婚式だよ?」とオレはAとBに尋ねる。
 AとBはシートから振り返り、声を揃えて「お前の結婚式だよ」と言う。
「え?」どういうこと、と思た矢先、

「そうよあなた」と白いドレス姿の女が隣で言た。


 Aが運転する車はいつの間にか停車していた。
 俺たちが行き着いた先は、高さ30メートルはある 海岸沿いにある岩場の崖の上で、地元では自殺の名所として有名だた。

「オレたちてほんとに気が合うよな」
 とAとBが、また声を揃えて言う。



 だだ、ひとつだけ幸いなことは、みんなのシクリは止まていた。
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