ピースフルコルドウォーフォーエバー
小さき者たちが世界を支配しようと蠢いていました。
この者たちは人間を憎んでいたりはしませんでした。ただ、人間と同じく、本能のあるがままに世界を支配しようとしていたのです。大きくて小さくてもどこでまで行
っても所詮は動物です。人間が人間のレベルに合わせた理屈を並べていろいろなものを正当化しつつ世界を支配したように、小さき者たちもこの者たちの理屈を持って世界を支配しようとしていました。もちろん支配などという悪い概念ではなく、この者たちなりの正当性を言葉にしたような概念を建前にしていましたけどね。
小さき者たちは人間の頭に寄生し、操ることを目指しました。現段階で世界を支配しているのは人間なので、勝つための手段としては正しいです。ただ、小さき者たちの中でもそれはやり方が汚いのではないかという声もありました。ここに3つの派閥が生まれました。
小さき者が支配した人間たち、小さき者たちに支配されおかしくなった人間に抗う人間たち、人間を操らないことを選んだ小さき者たち。
3つのグループはそれぞれの方法で争いました。武器を手に取り、毒を使い、言葉を用いて世界の支配権を得ようと戦ったのです。
最終的に残ったのは人間たちでした。
ただ、この人間たちが支配された側なのか、支配を逃れた側なのかははっきりとはわかりませんでした。どちらも争いに疲れ、停戦し、直接的な対立を控えるようになったからです。
それがずっと昔に行われた戦争です。
そうして、今、この世界があります。
僕らは他人の顔色を伺い、空気を読んで、敵ではないふりをするため笑顔で挨拶をし、みんな仲良く暮らしています。たまにミスった個体が過激になって攻撃しすぎてしまいますが、世界の空気は自然にそれを排除します。だって戦争を再び起こされたら嫌ですからね。どちらの派閥もそんな個体は黙らせたいです。
世界はどんどん平和になって行きます。
犯罪は減り、悪いことも減り、幸せに暮らせるようになっています。
なにも悪いことはありません。
ただ世界の支配者が2つに別れただけです。
それでいいじゃないですか?
だめだっておもいますか?
それともながくはつづきませんか?
そうかもしれません。
みんなほんのうであらそいがだいすきですから、きっといつか遠い未来に別のグループが現れて争いになるかもしれませんけど、もっともっと遠い未来では同じように平和な世界が訪れることでしょう。
いきものってそういうものです。
けんかはつかれますからね。