第77回 てきすとぽい杯
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時間と空間を書き換える男(未完)
投稿時刻 : 2025.05.17 23:40 最終更新 : 2025.05.17 23:41
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- 2025/05/17 23:41:41
- 2025/05/17 23:40:41
時間と空間を書き換える男(未完)
浅黄幻影


「ねえ、今の人だれ?」
 娘を助けられた母の厚い「ありがとう」を受けた青年は、「どういたしまして」と笑顔を返したが、しかしすぐに走り去てしまた。
 親子は彼のことをまたく知らない。それなのに、青年は身をていして、ほとんどひかれるかというところから女の子を救い出した。彼の行いに母も娘も名前くらいは聞きたかたのだが、しかし何も教えてくれなかた。

 青年は何者なのか、話は八十年ほど遡る。
 およそ八十年前、少年は戦争で焼け野原になたところをひとり歩いていた。靴はとくに千切れ、手も足も擦り傷だらけ、三日ほど何も食べていなかた。最後に食べた握り飯は兵隊さんからこそりわけてもらたものだた。
 その兵隊さんとは数日前に出会た。土手を歩いているところを名前を呼ばれて止められた。そして「実はおまえのお父さんから頼まれて、きみを一週間だけ預かることになている」と言われた。
「そんな話は聞いてないよ!」
 そう言たが、兵隊さんはぎと睨み、握り飯を分け与えたとは思えない手で少年の手を引ていた。戦時下、抵抗などできるわけもなく、少年は連れていかれた。しかし、兵隊さんは決して乱暴することもなく、戦争の大変さについて愚痴ても怒らなかた。「この街から少し離れたところにちといくだけ」と言うだけだた。
 夜中、少年は不安になて逃げだそうかと思た。兵隊さんの方を見ると、兵隊さんは火の番をしていたものの、きりとした真剣な目をして眠る気配はなかた。
 そして少年が起きているのを見て「眠れないか?」と声をかけた。少年はあまり眠れそうにもないと思たが、兵隊さんの目が怖くて「大丈夫」と言て眠た。
 翌朝、兵隊さんの姿はなかた。どこにいたのだろうと思たが、とにかくその小屋の中にはいなかた。
 そして、八月六日午前八時十五分、少年の家のほぼ真上で爆弾が爆発した。少年は家族を失たが、兵隊さんのおかげで彼だけは生き残ることができた。
 兵隊さんは何者なのか。そして話は、さらに三百年ほど遡る。
 地方の小さな町の殿様であた黒鳥十郎は、そのあたりで一番の名手である最中家の宴会の席に呼ばれていた。家臣の老中浅黄は、黒鳥十郎に「この話は気が進みません」と何度も注意するように話していた。
「ほかの家のものたちも呼ばれている。ただの酒の席だ」
「しかし、最近は京から越後で動きが慌ただしく、それを読んでのこともあるかと……
「ないな、考えすぎだ」
 老中の浅黄は何度となく考え直すように願たが、ついには殿を怒らすことになてしまた。
「殿には困たものだ……が、しかし、このまま見ているわけにはいかぬ」
 漏らしているところに、ひとりの家臣がやてきて、浅黄に言た。
「差し出がましいようではございますが……考えようにございます。殿の身に何かあれば、浅黄さまも最中さまに取り立てていただくことができるやも、しれません」
 浅黄はかとなた。
「おまえ! 黒鳥家を何と心得るか!」
 刀に手を伸ばし斬り捨てようかと思たが、しかし気づけば家臣の姿はなかた。
「けしからん……待て、今のは誰だ?」
 さて、浅黄は黒鳥の殿様を止めることはできず、酒の席へ行かせることになてしまた。散々に怒らせてしまた浅黄も同行させることはなかた。
 そして、黒鳥は討ち死にした。やはり、罠だたのだ。
「黒鳥家も終わりだ、浅黄家も最中家に見つかればどうなるか」
 けれど、あの家臣が言たことが的中したのか、浅黄は最中家に仕える気はないかと言われた。あの家臣はそれきり姿を見ることはなかたが、しかし、こうなると何か、物の怪が何かを吹き込みに来たのかもしれないとも思え、背筋が震えた。
 後日、最中家に近い殿様が町にやてきて、黒鳥氏にかわた。新しい殿様は城のことを浅黄に任せると言たが、浅黄は「武家を辞める」とし、以後は土地の農民の代表格として生きることになた。
 それから数度、町は合戦の舞台となり、新しい殿様も、最中家も滅んでいた。浅黄家は江戸に入ても生き続き、農家から商家へと道を進めることになた。
 家臣は何者であたのか。話は未来に進む。
「今、ぼくらは二十一世紀のご先祖様まで助けることができました」
「あと、何回の介入でタートの生成までたどり着ける?」
「現代への影響は徐々に現れ、世界は修正されつつありますが、少女の子の誕生は確認しています。世代間を三十年四十年と見ていますので……回の介入は必要になるかもしれません」
「」

 未完

 ※追伸
 浅黄家を出したがばかり、浅黄家世界の命運を握るかのような話になりそうになり、恥ずかしさで筆が止まてしまいました。浅黄家は実在しますが、黒鳥家、最中家は架空の武将です。
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