第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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金夜、近所で、金魚すくい
投稿時刻 : 2013.08.18 15:11
字数 : 1000
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金夜、近所で、金魚すくい
とおる改


 地元の夏祭りは金曜日から始まる。けれど、土日がメインだから屋台も半分くらいしかやていない。お祭りは始まているけれど、中途半端。それが金曜日。私たちは、金曜に少しだけお祭り気分をかじて、土日はデートで遠くへ行くのだ。
 ……、彼氏がいたら、そうしたいのだ。
 今年は夏祭りに行くつもりもなかた。ミカにもサチにも彼氏がいて、そんな二人のダブルデート計画において私は邪魔者でしかなかたから。
 大好きな小説家の新作を読みながら冷房の効いた部屋で週末を満喫する。それは完璧な計画のはずで、目に見えないお祭りの空気にイラつくのは時間の無駄なのだ。
「シズ、金夜に夏祭り行こうぜ」
 だから、いきなりお前がそうやて夏祭りに誘てくるのは完全に想定外で、男連中と遊んでいればいいのになんでまたあたしなんかを誘うのかな。
「いや、左腕折れてるとバカ連中と遊ぶのもキツいからさー。シズも暇なんだろ、金夜。久しぶりに行こうぜ、夏祭り」
 いやだ。
「おと、幼馴染を蔑ろにすると、いざという時に困るぞー?」
 どんな時だバカ。あたしには予定と計画と完璧な週末が待ているから、目の前から消えたまえ。
「冷たいね。まいいや。じあ、いつもの場所に六時な。金魚すくいしよう」
 おい、人の話を聴けバカ。
「まいいからいいから。うちの水槽、寂しくなてさ」
 ……死んだの? あの金魚。
「ま、長生きしたよ。シズの救た金魚は」
 そう。
「と、いうことで、シズ様の天才的な金魚すくいの腕前をお借りしたく」
 安い土下座せんでよろしい。そか、死んじたか。
「おい、あんまりしんみりすんなよ」
 うるさいなー。わかた。六時ね。お金持ていかないから。
「げ。わ、わかた。……浴衣で来るよな?」
 近所の夏祭りにわざわざ浴衣? 相手はあんたなのに?
「俺は、デートのお誘いのつもりなんだけど」
 いや、冗談はやめてよ。こちとら暑い日に熱々に挟まれてうだてんのに。誰でもいいんでし
「俺は、シズしか誘わねよ。金魚すくいの名人じなくても、浴衣じなくても、いいけど」
 な、なんでそんな顔真赤にしてんのよバカのくせに……
 ……六時ね。
「そう」
 あたし、金魚すくいて好きじないの。すぐに死んじうし。
「うん」
 でも、ケンの家の玄関で、元気な姿を見るのは、嫌いじなかたよ。
「うん」
 浴衣、着ていてもいいけど、土日の予定も考えておきなさいよ。近所のお祭り以外で。
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