てきすとぽい
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第11回 てきすとぽい杯〈お題合案〉
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〔 作品15 〕
間に合わなかった。
(
秋吉君
)
投稿時刻 : 2013.11.17 01:45
字数 : 970
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間に合わなかった。
秋吉君
嫌な夢だ
っ
た。
リンゴ畑のあちこちに、無数の首が落ち散らば
っ
ていた。
天を仰いでいたり、地面に埋もれていたり。バラバラの方向へ顔を向けて、一様に首は目は閉じていた。
俺は首を避けながら、木々の合間を進む。
土に降りた霜を踏むたび、足の裏から感触が伝わ
っ
てくる。
呼吸が荒くなる。俺は白い肌を思う。あの木の向こうにあるぬくもり。丸い乳房と甘い吐息。
下腹部がもどかしい。
俺は首を避けながら、足早に進む。
黒い幹の向こうに、マフラー
の切れ端が見える。
「美由紀!」
叫ぶが声は出ない。俺は走り出す。全裸だ
っ
た。固く尖
っ
た肉が屹立し寒気に突き刺さる。
思うように足が進まなくて、あ
っ
と思
っ
た瞬間、白髪頭の首に躓いた。
「この土地から出るな!」
地面から咆哮が響き、無数に落ち散らば
っ
た首が一斉に目を見開いて、俺をにらみつけた。
「ねえ、ほんとにそれでいいの?」
「ああ。もう決めたことだから」
「ふうん
……
じ
ゃ
あ、離れ離れにな
っ
ち
ゃ
うね」
美由紀はマフラー
で口元を隠した。
「お前こそ、本当に東京の大学に行くのか?」
「私、こんな田舎で一生過ごすなんてヤだから」
高校からの帰り、リンゴ畑へと続く細道は薄暗く、人の気配はない。俺は夢を思い出していた。
「先祖代々の畑なんだ。知
っ
てるだろ、農園を継ぐのは俺しかいない」
「私のことはどうでもいいんだね」
「そうじ
ゃ
ない、遠距離だ
っ
て、続けられるだろう
……
」
「ムリだよ、そんなの」
陽が傾くにつれ影は濃くなり、木々の根本から首が生えてくる。
俺は制服のスカー
トから生える白い太ももに目をやる。
「俺、失いたくないんだよ」
美由紀は答えず、足を早める。
リンゴ畑のあちこちに、首が落ち散らば
っ
ている。
首はバラバラの方向へ顔を向けて、目を閉じている。
呼吸が荒くなる。美由紀が足を速める。マフラー
の隙間から煙のように白い息が吐き出される。俺は追う。
道は更に細まり、畑との境目が消える。
足元には無数の首が落ちている。
「美由紀!」
下腹部から咆哮が響く。いつのまにか俺は服を脱ぎ捨て、全力で逃げる女を追
っ
ている。
首を蹴飛ばし踏みつけ、俺は追い、肉体は逃げる。
「お前は逃げられない」首が吠える。「お前の血は縛られている。逃がすわけにはいかない」
首の目が開かれると、黒々とした枝に果実が実る。
月明かりが真
っ
赤な実を照らしたとき、無数の俺の首が、女の肉に噛みつくのが見えた
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