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第13回 てきすとぽい杯
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苦情、処理しまくり
 投稿時刻 : 2014.01.18 23:15 最終更新 : 2014.01.18 23:24
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- 2014.01.18 23:24:56
- 2014.01.18 23:15:23
苦情、処理しまくり
ひこ・ひこたろう


 「公務員なのに真面目に働くヤツは無能」と先輩から教わたもんだから、私は勤務中に自分の席で女子高生とチトばかりやていた。しかし、それが上司・望月課長の目に触れたようで、私は早速「苦情処理係」の窓口に配属された。この職種は事実上の退職勧告といてもよい。市民からのどうでもいい苦情を一日中聞かされ、精神に異常をきたして辞めていく同僚が多いからである。

 翌日、私は窓口に座り市民からの苦情を聞いた。
「どうして砂丘は鳥取にしかないのか?」
「どうして日の丸の太陽は赤いのか?」
「うちで作たレモンパンを宣伝してくれ」
「日本は『にほん』と『にぽん』、どちらの読みが正しいのか?」
「日本共産党の書記局長が代わたので、名前を覚えてくれ」
 とまあ、こんな感じのしうもない苦情を聞き流すのである。ああ、しんど。女子高生相手に「おぱい触らせろ」とチトしていた昨日までの日々はいたい何だたのだろう。いくら憲法で国民の請願権が保証されているからといて、しうもない話に付き合わされるなんて、こんな安月給では割に合わない。たまに、望月課長と廊下ですれ違うが、もはや向こうは目を合わそうともせず、挨拶にも応えない。

 そんなある日、とうとう私を怒らせる苦情が舞い込んできたのである。
「国の借金は1008兆円、国民一人当たり792万円というが、国民は借金してくれと頼んだ覚えはない。借金は公務員がこしらえたものだ。公務員一人当たり16億円と発表しろ」
 はあ、何だ、こいつは? そう思いながら、私はつばを飛ばしながら憤る白髪の男性の話に耳を傾けた。確かこの男は共産党書記局長の名前、山下芳生氏の名前を覚えろとしつこく言てきた人物である。なぜか胸に「山本」の名札を着けている。どう見ても年金生活者といた風情なのだが、私に名前を売てどうするつもりなのだろう。もしや、選挙にでも出ようというのか。

 それはともかく、市民・山本の挙げる数字が正しいかどうか手元の電卓で確認してみる。
「1008兆円」て桁が多すぎて、自分の電卓じ入り切らない。公務員の数、ここでは国家公務員の64万人で割ればいいのか。まずは紙に書いてみて、「兆円」を「万円」で割て桁数を減らすことから始める。
「げ、やばいじん!」
 いやあ、国の借金てこんなにあたのですか。国家公務員一人当たり16億円。もう笑うしかない。
「これを死にもの狂いで減らしなさい」と、市民・山本は私に詰め寄る。そんなこと、山下芳生氏だてできやしないと思うぞ。

 だが、私はやてみることにした。まずは安倍総理に電話をし、「公務員を増やしてください」とお願いしてみた。1008兆円の借金を減らすのは難しいが、公務員を増やして一人当たりの金額を減らすことなら可能だ。
 翌日、地方公務員をすべて国家公務員にする特例法が成立した。「君の頼みなら聞かないわけにはいかないからね」と安倍総理。恩に着ますぜ。そして、公務員一人当たりの借金は、16億から3億に減た。やたね、自分! それに、さすが安倍総理。「地方の借金÷地方公務員の数」は分母がゼロになたので、無限大になたけど、ワシは知らん。だて、責任を取る地方公務員はもういないのだ。え? 分母がゼロの計算は不能だて? 文部科学省にでも尋ねてくれ。

 公務員一人当たりの借金が減たので、もうちと贅沢をしてもいいだろうということで、もともと放漫財政をやてみた。私は苦情処理窓口から栄転し、財務省の政務官になた。

 そんなある日のこと、市民・山本は本当に選挙に出て当選し、国会に私を呼びつけこう迫た。
「日本の財政は危機状態にある。公務員一人当たりの借金はもはや9億円になた!」
 しうがないので、日本国民、子供からお年寄りまで全員公務員にしてみた。そうしたら、公務員一人当たりの借金は減た。ざまあみろ、市民・山本。いや、代議士・山本。
「これでは以前の国民一人当たりと同じではありませぬか」代議士・山本が指摘した。「しかも現在は2400万円に膨れ上がている」
 ふうん、そんなに借金が増えたのか。日本国民の資産をはるかに超えてしまている。792万とか言てた頃が懐かしい。

 トルルルル……
 私は今度は中国の李首相に電話をした。日本を中国に売り渡すためだ。
「あなたの頼みなら」とこれまた気さくに応じてくれた李首相。やはり持つべきものは友達である。「よ、大統領! じなくて、首相!」
 翌日、日本と中国は合併。「東アジア連邦ドラゴン」というひとつの国家となた。人口15億、GDPたくさん。公務員一人当たりの借金も国民一人当たりの借金もばちり減た。
 私は早々と引退し、年金生活。野球は中日ドラゴンズを応援し、日本共産党は消滅したので、書記局長の名を聞くこともない。AKBのセンターは上海48の子だ。尖閣諸島の領土問題も消えた。めでたし、めでたし。
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