バワードズーヅ
閃光があたりを包み込み、すぐに爆発音が鳴り響いた。遅れて残骸が飛び散り、四方八方へと金属と超硬度プラスチ
ックの類をばらまいていく。続けざまにいくつかの衝撃が空気を震わせ、やはり爆発音がリズム良く鳴らされる。
「敵機斜め上!四時方向」
「四時ってどっち!?誰から見て!?斜め上って!」
「うっさい文句があるなら自分で探せ屑野郎」
「ひどいな!屑はないだろ!」
そう言いながらも索敵を進め、敵影を探す。
―いた。
とらえた瞬間にトリガーは引かれ、銃口から光が放たれる。
弾道は敵機のやや右に逸れ、青空へと消えていく。
「下手くそ!」
「だあああ!うるっせええな!!こちとら立った先パイロット童貞喪失したばっかりなんじゃ!!」
罵声を吐いてはいるが、意識は目の前の敵に集中している。敵も反撃の銃弾をこちらに浴びせかけてきている。
敵機が照準範囲から離れないようにカメラでとらえながらも、回避行動をとる。
無理な動きは禁物だ。うまく避けられたとしても、次の弾丸に貫かれる可能性がある。
「どいつもこいつも!」
反撃と反撃の応酬。
「皆死ねやくそがぁ!!!」
でたらめに撃っても当らないのは知っているが、それでも撃たずにはいられない。
当らない。
苛立ちに耐えきれなくなったのか、機体が上空の敵に一気に接近を始める。
うまく敵機に近づきつつ、弾丸を避ける。
業を煮やした敵機は近接戦闘用の剣状兵器に切り替え、応じようとする。
だが、機体は敵機の横をすり抜け、反転する。
太陽を背に、敵の視覚をかく乱すると、放たれた弾丸は敵機を貫いた。
「おっしゃあああああああ!!!!」
爆発と雄叫び。
どうしてこんなことになってしまったのかと、パイロットは思う。
どうして?
たった数時間前までは極々平々凡々何のとりえもなく何の特徴もない鈍感でモテない男子高校生だったはずなのに。