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第一回、でぎずどぼい杯
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一合目(既知との遭遇)
(
健太
)
投稿時刻 : 2014.02.15 22:16
最終更新 : 2014.02.15 22:22
字数 : 812
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2014/02/15 22:22:32
-
2014/02/15 22:18:30
-
2014/02/15 22:16:06
一合目(既知との遭遇)
健太
「生きるべきか、死ぬべきか…」
山に入
っ
て三日目、男にと
っ
てそれは問題ではなか
っ
た。
「生きないべきか、死なないべきか…」
それが問題ではあ
っ
た。男にはもう、人生に対し積極的に挑む勇気も退く勇気もないのだ
っ
た。
それに、次の一歩を踏み出すには、男はあまりにもこの世を知りすぎていた。「知らぬが仏」とはよく言
っ
たものである。「知りすぎていた男」は、山の途中で立ち止まらざるを得なか
っ
たのである。
陽が落ち始める。辺りは次第に暗くなり、リ
ュ
ッ
クの中を覗けば男の食糧は底を尽きかけていた。
「今引き返せば、まだ間に合う」
しかし、知りすぎていた男にはそれ以上進むことも戻ることもできない。男はとりあえず、今晩はそこにテントを張り一夜を過ごすことにした。
テントで仰向けになり、男は自身のこれまでの人生を振り返
っ
ていた。「俺は、これ以上この世を生きるには、少々知りすぎてしま
っ
た。何故どこかの段階で俺は知るのを諦めなか
っ
たのか。探キ
ュ
ウ心が強過ぎたせいか…」
そんな知りすぎていた男でも、まだわからないことが一つだけあ
っ
た。それは、今登
っ
てる山の名である。「この高く険しい山の頂きに辿り着きさえすれば、わかるに違いない。そしてその時、俺はこの世の全てを知るであろう…」男は眠りについた。
それから何時間経
っ
たのか。まだ暗闇が支配する山の中で、ざわざわ不審な物音がし男は目を覚ました。「熊か…」男は危険を察知し、熊撃退スプレー
を手に取り身構えた。知りすぎていた男は熊の習性も熟知していた。備えは万全である。
「この山の主か…それともこの世のものではない何者かか…」ほんのり月明かりが闇を照らすテント中、大きな影が男に近付く…
「ク
~
ん…」
その物音、影の正体は男が連れて来た犬であ
っ
た。そう言えば、エサをやるのを忘れていた。お腹を透かせていたのであろう。
「知
っ
てるよ、バカ
っ
。ち
ょ
っ
と忘れていただけだよ。ビビらせやが
っ
て…」男は熊撃退スプレー
で犬の頭を小突いた。
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