てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
【BNSK】月末品評会 inてきすとぽい season 2
〔 作品1 〕
»
〔
2
〕
〔
3
〕
…
〔
6
〕
恋のまなざし
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.04.27 19:00
字数 : 1171
1
2
3
4
5
投票しない
感想:2
ログインして投票
恋のまなざし
茶屋
初恋は多分、幼稚園児だ
っ
たか、それぐらいの時分。
父の手にひかれて桜並木の下を歩いていた。
舞い散る花びらを追
っ
ていると視線の先に、綺麗な女の人が見えた。
とても、とても綺麗だ
っ
た。
同じくらい綺麗な人は多分たくさんいただろうし、その人だ
っ
て女優並の美人
っ
てわけではなか
っ
たと思う。
けれど、彼女は特別で、輝いて見えた。単純な綺麗だな
っ
ていう感情とは別の何かがあ
っ
た。
圧倒されるように立ち尽くしてしま
っ
た。
それからだいぶしてから、それが恋という感情で、一目惚れ
っ
て呼ばれてるものだ
っ
て知
っ
た。
普通だ
っ
たらそれはそれでよい思い出にな
っ
たかもしれない。
すれ違
っ
た女性に一目惚れした幼稚園児。なんとも微笑ましい。
それで終わり。終わりのはずだ
っ
たんだ。
だけど、それが全ての始まりだ
っ
たんだ。
そう、全ての。
綺麗な女の人は、目の前で車に撥ねられた。
関節がおかしな方向に曲が
っ
て、血を流して、見開かれた生気の無い目はじ
っ
とこちらを見ていた。
桜舞い散る季節、それが僕の初恋。
今でも初恋の人のことは夢に見る。
この記憶が本当に目にした光景なのか、それとも幾度も記憶を反芻するうちに変質を遂げたものなのかはわからない。
目の前で初恋の人が死んだ。
死んだとは限らないかもしれないが、多分死んだだろう。助かり
っ
こない。少なくとも今までの経験上は。
そうだ誰も助からなか
っ
た。
皆死んだ。
幼稚園で三年間一緒だ
っ
た子を好きにな
っ
た時には普通の風邪のはずが別の病気も併発して死んで小学校の時好きにな
っ
た娘も夏休みが終わ
っ
てみると担任が彼女が事故で死んだことを告げ憧れのアイドルは薬物中毒で死に中学まで一緒だ
っ
た娘は中学二年の夏に首を吊
っ
て高校で優しか
っ
た先輩は通り魔に襲われて大学のコンパで出会
っ
た彼女は心臓まひで会社の取引先で出会
っ
た彼女はアパー
トの火事で焼け死んだ。
みんな、みんな、みんな、死んだ。
恋した相手は皆、死んだ。
中学生の時にはそのことに薄々気づいていたし、こんなに悲しい思いをするならばもう恋はしないとも誓
っ
たりもした。
けれども、駄目だ
っ
た。
その感情に気づいてしま
っ
た瞬間、それを消し去ることなんてできないんだ。
気づいてしま
っ
たら最後、あいつもこ
っ
ちのことに気づいてどんどん成長していく。
想いは止めることはできず、そしてそのせいで人が死ぬ。
絶望もした。自殺を試みたこともあ
っ
た。い
っ
そ外に出なければとも思
っ
た。
だけど、生きることを止める勇気は、なか
っ
た。
他人の命を奪
っ
てでも生きようとするクズなんだ。
どうしようもないクズなんだ。
もちろん、心を殺すように努め、なるべく恋はしないようにしてきた。
うまく行
っ
ていたと思う。
もう、誰も死なない。
おしまいだ。全部。
そのはずだ
っ
た。
君に出会うまでは。
でももう嫌なんだ。
誰かを死なせるのは。
多分、君はもう助からない。
だから、せめて、一緒に。
← 前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:2
ログインして投票