てきすとぽい
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てきすと怪2014
〔 作品1 〕
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…
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9
〕
ラビットゲーム
(
ほげおちゃん
)
投稿時刻 : 2014.08.08 21:30
最終更新 : 2014.08.14 01:10
字数 : 3133
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2014/08/14 01:10:14
-
2014/08/08 21:30:19
ラビットゲーム
ほげおちゃん
暑いから何か涼しくなる話をしてよ、と私は言
っ
た。
「涼しくなる話?」
「怖い話よ怖い話」
もう、察しが悪いんだから。
彼が腕を組み、うー
んと唸る。
ソフ
ァ
ー
に寝転び、期待せず待つ私。
しばらくして彼が口を開き、
「何も思いつかない」
や
っ
ぱりね、とはおくびにも出さず、私は残念そうな顔をする。
「少しくらい何か思いつかないの? 通
っ
ている学校の怪談とか」
そう言うと、彼は再びうー
んと唸り出す。
自分で無茶なことを言
っ
ているのはわか
っ
ていたけれど、その無茶なことに真剣に頭を悩ませる彼を見るのはすごく好きだ
っ
た。愛らしい、とまではいかないけれど
……
本当にバカね
ぇ
。
そう声をかけようとしたときだ
っ
た。
「あ、一つだけある」
彼がそう口を開いたのだ。
「本当?」
思わず素に戻
っ
て彼を見つめる。
「いや、別に怖い話じ
ゃ
ないんだけど」
「何よそれ」
思いついたくせに怖い話じ
ゃ
ない
っ
て、どういうことよそれ。
彼は尻込みして、話そうとしない。
私は少しイライラして、
「どんな話か気になるじ
ゃ
ない。話してみなさいよ」
「けど、本当に怖い話じ
ゃ
ないんだよ」
「いいから!」
私がそう怒鳴
っ
てソフ
ァ
ー
をバンと叩くと、彼はおずおずと話し始めたのだ
っ
た。
「これは俺が小学六年生のときの話なんだけど」
「自分の話なの?」
私が少し驚いて言
っ
た。
「うん」と照れ臭いように彼が言う。
私が驚いたのは、これから始まる怪談だか何だかよくわからない話が、彼に関わ
っ
ているからということではない。
彼の過去話を聞くのは、これが初めてだ
っ
たのだ。
別に隠していたわけではないだろうし、もし私が教えてと言えば、彼は躊躇なくむかしのことを話していただろう。しかし彼と出会
っ
てからこれまで、何故か灯台下暗しのようにその手の話題は避けられていたのだ。
「小学六年生のとき、山に遠足に行
っ
たんだ。なんていう山かは忘れたけど、階段が千段もある有名なところでね。しかも普通の階段じ
ゃ
なくて、山の自然の中に途切れ途切れにある階段だから、登
っ
ていくのが大変なんだよ。まだ小さい僕たちには結構キツくて」
私はふん、と鼻で息をした。
まあなんてことない導入部だ。
彼は昔を懐かしむように、やや俯き加減で話している。
「それでクラス全員、なんとか山の頂上まで辿り着いてね。それまでは疲労感でい
っ
ぱいだ
っ
たんだけど、子供のとき
っ
て不思議だよなあ。あ
っ
という間にまた走り回れるようになるんだ。弁当を食べた後、頂上は広場みたいにな
っ
ていたからド
ッ
ジボー
ルで遊んでね。あ
っ
という間に帰る時間にな
っ
た」
あの頃に戻りたい、そんな気持ちが彼にもあるのだろうか。
何となくそんなことを思いながら話を聞いていると、突然彼の口振りが変わ
っ
た。
「帰る前にさ、先生が点呼をと
っ
たんだよ。クラス三十人全員揃
っ
ているか
っ
て。けどいなか
っ
たんだ」
「いなか
っ
た?」
「うん、一人いなか
っ
たんだよ。木下くん
っ
ていう子」
彼は神妙な顔つきで口にする。
「木下くんは結構やんち
ゃ
なんだけど一匹狼なところがあ
っ
てさ。どうやらそのときも一人で遊んでたらしいんだ。森のほうに行く姿を同級生が見たらしいんだけど、そこから行方知れずで
……
とにかくそのままじ
ゃ
帰れないから、彼を探しまし
ょ
う
っ
てことにな
っ
た」
彼は顔を上げて、
「一時間ぐらい叫んでたな。『おー
い、木下くん。戻
っ
てこー
い」
っ
て。森の中に出かけると皆迷子にな
っ
ち
ゃ
うからさ。隣のクラスの、隣のクラスも一緒に遠足に来ていたんだけど、その体力自慢の男の先生が森に行
っ
て、残された僕らは広場でず
っ
と声を上げてた。ま
っ
たく手応えはなか
っ
たよ。喉は枯れるし日もどんどん暮れるしさ。男の先生は手持ち無沙汰で戻
っ
てきて、僕らの担任の先生は泣きそうだ
っ
た。まだ若い先生だ
っ
たからね。男の先生が必死で宥めて、とにかくこのまま暗くなると危険だから、一旦山を降りて捜索を依頼しよう
っ
てことにな
っ
たんだ。それで僕らは山を降りる準備を始めたのだけど、点呼を始める前にな
っ
て、木下くんがひよ
っ
こり戻
っ
てきた」
「戻
っ
てきたの?」
て
っ
きり戻らないものだと思
っ
ていた。
「うん、戻
っ
てきたよ」
彼はあ
っ
さり言
っ
て、話を続ける。
「木下くんが森のほうから半べそをかいて戻
っ
てきた。体中が土とか葉
っ
ぱとかで汚れていたけれど、怪我はなか
っ
たよ。どこに行
っ
てたの、
っ
て先生は怒
っ
たけれど、木下くんはビク
ッ
としてね。自分で迷惑をかけたことがわか
っ
ていて、見ていて可哀想だ
っ
た。とにかく戻
っ
てきたのは喜ぶべきことなんだから、さ
っ
さと山を降りてしまおう
っ
て。もう空も随分暗くな
っ
ていたし。夕陽が照らす中、僕らは慌てて点呼をした。まるで軍隊みたいな真面目さだ
っ
たよ。それで、点呼を終えたんだけど
……
」
「けど?」
「困
っ
たことに、今度は人数が増えてしま
っ
たんだ」
「増えたあ?」
想像外の出来事に思わずき
ょ
とんとする。
自分でもび
っ
くりなんだ、と言いたげに彼は両手を動かし説明する。
「クラスはき
っ
かり三十人、だけどそのとき数えてみると三十一人いたんだよ。おかしいだろ? 減るなら迷子だ
っ
てわかるけど、増えるなんて起こりようがない。しかもクラスの全員が、誰が増えたのかわかんないんだよ。みんな顔を突き合わせてみても、みんな自分のクラスの人だ
っ
て言う。もちろん僕だ
っ
てそうさ。一体何が起こ
っ
たんだ
っ
て、みんなパニ
ッ
クにな
っ
た」
「それでどうしたの?」
私は身を乗り出し聞く。
「そのまま帰
っ
た」
「は?」
口を開けてあんぐりとする私。
「そのまま帰
っ
たんだよ。僕らはみんなパニ
ッ
クにな
っ
ていたけれど、隣のクラスの先生が一喝したんだ。減るなら問題だが、増えたのなら別にいいじ
ゃ
ないか
っ
て。その言葉には疑問が残るけど、たしかに減るよりも増えるほうがマシだ
っ
て思
っ
て。慌てて山を降りたんだよ」
そして押し黙る彼。
「
……
それで?」
「え?」
「それで、どうな
っ
たの?」
私はそう口にせざるを得なか
っ
た。
「終わりだよ」
「はあ?」
私は両手で思い
っ
きり彼の頬をつね
っ
た。
「痛たたた
ッ
!」
「バカ、それで終わりなわけないでし
ょ
う! 増えたひとりはその後どうな
っ
たのよ!」
「そのまま小学校を卒業したよ!」
「え
っ
?」
思わず頬から手を離す。
彼は涙目で頬をさすりながら、
「結局そのまま、誰が増えたのかわからなか
っ
たんだ
っ
て
……
僕らもその後、誰が増えたのか調べようとしたよ? あの山について古い新聞をあさ
っ
ていると、どうやら何十年も前に、木下くんと同じように迷子にな
っ
たけど帰
っ
てこなか
っ
た子がいることがわか
っ
て。けど誰なのかはわからなか
っ
た。名前が出ていなか
っ
たんだよ。僕らはそれ以上調べようとしたけれど、先生たちは乗り気じ
ゃ
ない
っ
ていうか、むしろ調べるな
っ