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第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
〔 作品1 〕» 2  47 
三面悪王
茶屋
 投稿時刻 : 2014.08.16 16:05 最終更新 : 2014.08.16 16:17
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更新履歴
- 2014.08.16 16:17:11
- 2014.08.16 16:05:19
三面悪王
茶屋


 疾風迅雷。
 大軍の中央を引き裂くようにして、怒涛に突き進む破軍の王。
 蛮勇にして怜悧、豪放磊落にして奸佞邪智。
 魔軍を追放されて、人界にて覇軍統べる仮面の王。
 三面悪王の異名を持つこの王には顔がない。
 元々はあたのだが、魔軍から堕界する際にその力とともに顔を奪われてしまたのだ。
 人界においても妖魔と忌み嫌われた無面の彼はそれを隠すために最後の魔力で三つの仮面を作り上げた。
 そして仮面の力で賊徒を集め、皇領を侵し、覇王として君臨する。
 三つの仮面。それが三面悪王の異名の由来だ。
 手に入れた三つの仮面にはそれぞれ力が宿されていた。
 赤炎の面には正道も悪道も恐れぬ蛮勇と怪力、そして炎の術を操る力。
 青氷の面には全てを見通す千里の眼と怜悧、そして氷の術を操る力。
 黒闇の面には万人を恐怖させ、人を操る人心の術、そして闇の術を操る力。
 覇王はこれらの面を付け替えては使い分け、戦場を駆け巡るのである。
 血を得るために。
 彼の本性たる妖魔の力は人の血に由来する。血を集め、力を取り戻し、いつか己と力の顔を取り戻すために彼は今日も戦場を駆け巡る。
 だが、彼は思い出せずにいる。
 かつての自分という存在を。
 赤炎の面では豪放磊落、部下に慕われ、兵達の士気を鼓舞する。
 青氷の面では奸佞邪智、他者を騙し、陥れ、罠にはめる。
 黒闇の面では絶対の覇者として万民恐怖の王として君臨する。
 どれが果たして己の姿なのかと、自問する。
 魔軍にいた時の記憶も、無面であた時の記憶も、もはや失われつつある。
 もはや仮面を外すときはなく、いつ何時も己の無貌を晒すことはない。
 己はもはや仮面の器としてしか存在していないのではあるまいかと思てしまう。
 三つの仮面こそが己の本性ではないかと。
 そして、三つの仮面がなければ、今の己という存在は消え去てしまうのではないか。
 果たしてそれは本当であた。
 三面悪王はある時部下の反乱にあた。
 三つの仮面の力を恐れた部下たちは彼の二つの仮面を隠して封印の術を施した。
 そして王の寝込みを襲た。
 だが、赤炎の面を被た覇王の力は強く、そう簡単に破れることはなかた。しかし、屍の山を築きながらも王を跪かせた。
 そして、その仮面を剥ぎとたのである。
 そこには、無面はなかた。そもそも仮面を引き剥がした瞬間、王の姿は消えてしまていた。
 かくして三つの仮面は封印された。
 その全ての面の封印が解かれる時、再び王は現世に復活を遂げると言われている。
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