てきすとぽいトップページへ
【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 7
 1  5  6 «〔 作品7 〕
完全犯罪
muomuo
 投稿時刻 : 2014.10.12 00:00
 字数 : 2706
5
投票しない
完全犯罪
muomuo


 隆太が唐突に切り出したのは、SNSの各所でさえ実しやかに飛び交ている例の噂話のことらしかた。
「今、密かに宇宙人が攻めてきてるて話あんじん?」
 流行りは逃さず廃りは追わずのこいつらしい。が……
「宇宙人の仕業にしたらさ、今なら完全犯罪てできそうじね?」
 今回は話の落としどころというか底の浅さがすぐ見える風でもなく、いつもの低空飛行から突然旋回して一気に高度を上げた

ように感じられたのが、僕のちとした琴線に触れた。後先考えず適当にうそぶくだけならいつものことだが、意表をつく展

開を見せてもくれそうだたので、ついにどんな人間にも進歩というものはあり得るのだということが証明される日がやて来

たと、期待が膨らんだからである。
……ミス研がSFに走たら終わりだと思うけどね。ま、最後まで聞こうじないか。……で?」
 僕は努めて、平静を装いながらそう訊いた。
……え、何?」
「いや、だから完全犯罪てどういうことだよ。どういうトリクが出てくるんだい?」
「それを考えるのは君らの仕事だろ? 高梨クン、二ノ宮クン」
 ……期待は急速に萎むとむしろ心地よく感じることがある。だから今回も、わざとらしく無理やり期待値を上げて遊んだだけ

のつもりだたのに、思いのほか普通に失望している自分に当惑してしまた。この男には何を期待してもダメだと、頭ではも

う分かているはずだ。なのに……たいどこに、本当に期待する余地が残ていたというのだろう。
「隆太クン、殺したいヒトでもいるの?」
 ……こういうことを平然とのたまう人種こそ僕にとては宇宙人だ。だが、その一言で僕の疑問は氷解してしまていた。本

棚の奥に隠れて見えなくなている間、一時的に失念していたが、そういえば今日は珍しく二ノ宮が来ていたのである。だから

、二ノ宮に惚れている隆太がちと頑張てみたのかもとか、あからさまに隆太の純情を弄んでいるだけの二ノ宮が自分のネ

タを隆太に喋らせて僕の反応を見ようとしたのかもとか、ありがちなストーリーを無意識に想定したというのが真相なのだろう


「ボクはいるよ」
 ふいに怖気を感じたので、そう言われてもまだ僕は振り向くのを思いとどまた。
……高梨クン、キミだ」
 その思考も感情もまたく理解しきれないのだが、どうしようもなく興味を惹かれる(異性としてではない)のもまた事実だ

から仕方がない。世俗的に表現するなら、僕は端的に言て二ノ宮と和平交渉を進めたいのだた。
 何が原因なのか、とにかく僕は二ノ宮を怒らせてしまたらしい。そしてここふた月ほど、二ノ宮は部室に顔を出さなくな

ていた。隆太の話では僕がいないときを見計らて何度か来ていたようなので、退部するつもりでないことは分かていたのだが、いかんせん特進クラスの彼女とは校舎も違うためなかなか会えず、どうにかならないものかと鬱々とした日々を送てきたような次第だたのである。
「なんだい、それは……? 君をそんなに怒らせるようなことを、僕がしたのかい?」
 付け加えるなら彼女は極めて容姿端麗だ。隆太のような単細胞が興味を惹かれているのはむしろそちらの要素だろう。女王様然とした勝気な性格に映る所作とエピソードの数々とも相俟て、その手の層には堪らない魅力を放つ逸材として将来を嘱望されているという作り話を本人がしてすら違和感がないほどだ。
「特進クラスでもないキミが学年一位の座にあるのが気に入らない、といたら信じるかい?」
 ……そういえば以前、二ノ宮は全国模試で二番手になたらしいぞと言て隆太が自分のことのように喜んだことがある。してみると、結果など気にしたことがないので分からなかたが、僕は全国一位に昇りつめていたということだろうか。二ノ宮が頂点に立つのを阻んでしまたために彼女の逆鱗に触れたという、ただそれだけのこと……のはずはないのだが?
「ボクはね、自分より劣た男の子じないと好きになれないんだ。一種の母性本能というヤツが、このボクにもあるのかもしれないね。だから……キミはそれ以上賢くならなくていいんだよ」
 ……どうも話の落としどころというか、先の展開が読めなくなている。やはり彼女は創作のネタを僕に喋て反応を試しているのだろうか。……分からない。読ませない。彼女の真骨頂だ。だから僕は、どうしようもなく彼女に惹かれてしまう。
……それは一種の、愛の告白なのかい? 密かに君を思慕していた隆太が、木端微塵になているじないか」
 すると二ノ宮は、いつの間にか自分の鞄から取り出してきたらしい小瓶のようなものを掲げて言た。
「これはね、ボクが二月かけて完成させた薬だ。劇症性の拒絶反応もなしに緩やかに、人のDNAを細胞ごと入れ替えてしまえる薬なんだ。早い話が、外見や記憶はそのままに細胞だけを別人のものに変えてしまうという代物で、きと癌も根治させることのできる夢の薬なんだけどね……
 ……また、先が見えなくなた。面白い。二ノ宮なら本当にそんな薬も作りかねない。僕はただテストの成績がよいだけの秀才だけれども、二ノ宮はテストが苦手……というか面倒なだけの天才だから。
……き、隆太クンが言たことを聞いて閃いたんだ。この薬を悪用すれば、完全犯罪も可能だてね」
「ほう……それはどういうトリクだい?」
 二ノ宮はちと小馬鹿にしたように、勝ち誇たように続ける。
「ふふ、トリクも何もそのままだよ。DNA鑑定で本人であるという証明ができなくなるわけじないか。だから一言添えるださ。『お宅の息子さん、ホントに息子さんですかね? 宇宙人か何かがなりすましているんじないですか?』てね」
「ああ、なるほど。その後で……宇宙人として処分されたり、人権剥奪ということでどこかに収容され研究材料となたり……そういうことか」
 結局のところ二ノ宮は、隆太の希望通り即興でトリクを考えたのでそれを披露してみせたということらしい。僕がそう、やとオチを見つけた気分に浸ていると……しかし当の隆太は、流れ弾に当たてフラれたシクを引き摺ているのか沈黙したままだた。

    ◆

「話の流れの中で、やんわりフてあげる作戦だたんだけどな……
 あからさまに拒否したほうがシクも小さいかと思たのに、本気にせず逆効果に終わる日々が続いたため、しばらく部活動を控えたくなるほどだた。
「返て傷つけちうなんて……。あたしの繊細な想い、メセージ、ちんと分かてくれる男の人なんてどこにもいないのかな……
 二ノ宮静香は、今日も一人お風呂で憂鬱な溜め息をついて眠るのだた。

         (了)
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない