てきすとぽい
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第2回 クオリティスターター検定
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Eight in the bar
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.09.16 21:55
字数 : 1855
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Eight in the bar
茶屋
間接照明の橙の明かりが、カウンター
の奥に並べられた酒瓶を色とりどりに輝かせる。
小奇麗に片づけられたカウンター
の割には店主は強面で不愛想、髭を蓄えバンダナを頭に巻いている。サングラスでもかけてバイクにまたがれば様になりそうなあまりナイスではないミドルだ。
あまり話しかけたいタイプじ
ゃ
ないが、手話で注文するわけにもいかない。
多分、それは口論から始まるんだ。
まあ、大概、場末の酒場に男女とくれば口論はつきものだ。ほらご覧、今に女がグラスの酒を男にぶ
っ
かけるから。
違うと思うかい?
なら賭けるかい?
ほらや
っ
ぱりだ。激情した女がグラスをも
っ
て男に酒をぶ
っ
かける。
ところがなんてこ
っ
た。男は事もなげにするりとそれをかわす。
かわしたところが悪か
っ
た。
丁度男の真後ろに立
っ
ていた男にぶ
っ
かかる。
そんなとこにいつの間に男が立
っ
ていたか
っ
て?
話は少し戻る。
男が店内に入
っ
てきたのは少し前だ。
パー
カー
を着て、フー
ドを深めに被
っ
ている。目は神経質そうにき
ょ
ろき
ょ
ろと泳いでいて、いかにもこれから何かしでかそう
っ
て雰囲気だ。
そう、こいつはしでかそうとしていた。
強盗だ。
ポケ
ッ
トには357マグナム。
汗にまみれた手で、し
っ
かりと握りしめている。
店はどこでも良か
っ
たが、その後店主のいかつい背格好を見て少し後悔することになるし、その後それ以上に後悔する羽目になる。
何気ない風を装
っ
て店に入るが、店のドアベルにビビるくらいにはビビ
っ
ていた。
ビビ
っ
ていたが、やるしかない。
男はポケ
ッ
トから38口径を取り出すと、店主に向か
っ
てこう言
っ
た。
「金を出せ!」
丁度その時、女のぶ
っ
かけた酒が、男をそれて、その強盗にぶ
っ
かか
っ
た
っ
てわけさ。
「てめ
ぇ
何しやがる」
あまりに突然のことに強盗は銃口の先を女に向き替えてしま
っ
た。
女は当然仰天する。
ところが今度仰天するのは強盗だ。
店主は素早くカウンター
の下からシ
ョ
ッ
トガンを取り出し、強盗の頭に突き付ける。
「出ていけ。クソガキ」
これはもう強盗はそうそうに退散するしかなさそうなものだが、強盗もここまで来るとそうとう頭が混乱し始めている。
「うるせ
ぇ
。金だ。金出さね
ぇ
とこの女撃ち殺すぞ!」
「ふん。知るか。いいから黙
っ
て出ていけ」
緊迫した空気が流れる中、また一人の男が席を立ちあがる。
ダー
クスー
ツをば
っ
ちり決めた、いかにも仕事ができそうな男だ。
「すまない。なんなら金を俺が出そう」
「うるせえ!てめえは黙
っ
てろ」
強盗はもはや相当頭が混乱していたようで、男の建設的提案を突
っ
ぱねる。
「今日ここで大事な取引があるんだ。マスター
、すまないがこの男に金を払
っ
てやれんかね。あとでその金は私が立て替えるから」
「そういうわけにはいかん。あんたがグルじ
ゃ
ない
っ
て証拠はどこにある」
店主も男の提案を突
っ
ぱねると、ダー
クスー
ツはやれやれと言
っ
た様子でため息をつき、懐からオー
トマチ
ッ
クを取り出すと、店主に銃口を向ける。
「頼む。この通りだ」
そう。状況はややこしくな
っ
た。
女に銃口を向ける強盗に銃口を向ける店主に銃口を向けるダー
クスー
ツ。
そこにさらに状況は悪化する。
「Yeaaaahhh!!」
陽気な絶叫とともにご来店のお客様が一名。
さ
っ
そくいつものカウンター
に座ろうとするが、店内を見て一瞬き
ょ
とんとする。
何だこの状況は?
だがそのお客様はすぐさま状況に反応する。
「警察だ!動くな!」
そう彼は警察だ
っ
た。今日も帰りがけに行きつけのこのバー
で一杯ひ
っ
かけようとしていたところだ。
そこへや
っ
てきてみるとこの状況だ
っ
た
っ
てわけさ。
銃口は開いたところに収まるかのようにダー
クスー
ツの男に向けられる。
膠着。
ところがそれで事態は膠着しない。
笑い声が店内に響いた。
先ほどまで静かに飲んでいたメガネの男だ。
そいつが突然笑い出したんだ。何がおかしい
っ
てそり
ゃ
確かにこの状況はおかしいがその場で笑える度胸のある奴なんてめ
っ
たにいやしない。ところがこいつは笑
っ
た。
多分ど
っ
かがぶ
っ
壊れてるタイプの人間だ
っ
たんだろう。
ところがこいつも銃を持
っ
ていた。しかも二つ。
「も
っ
と盛り上がろうじ
ゃ
ね
ぇ
か!」
シリアルキラー
かサイコパス。最悪の状況に、最悪な野郎が混ざ
っ
てしま
っ
たようだ。
向けられた銃口の先は警官と俺。
俺はその時思
っ
ていた。
今日はついてない、
っ
てね。
最高についてない
っ
て。
簡単に済む仕事のはずだ
っ
たんだ。
時刻はPM
08:08。
俺は懐から銃を取り出すと、暗殺のター
ゲ
ッ
トに銃口を向けた。
そう。女と口論していた男。
とある組織の幹部の男に。
そうしてあの事件は始ま
っ
た
っ
てわけさ。
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