来たれ てきすとぽい作家! 800字小説バトル
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投稿時刻 : 2014.10.26 22:39
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偶然と運命の紙一重
晴海まどか@「ギソウクラブ」発売中


 バスロータリーに面した駅前広場には、たくさんの人が往来している。
 制服を着た学生。スーツ姿のサラリーマン。腰の曲がたおばあちん。老若男女。
 人、人、人。
 東京近郊のなんてことないベドタウン。けして大きな街じないけど、それでもこんなにもたくさんの人であふれてる。世界にはたくさんの人がいる。
 そんな中で、私はあいつと出会たのだ。
 なんて考えてみると、出会たその事実だけで、ものすごい奇跡みたいに思えた。
 だから私は、じと待つ。私の奇跡がやてくるのを。

 電車が流れて、人が流れて、時間も静かに流れていく。
 待ち合わせは午後四時のはずだた。気がつけば、時刻すでに午後六時半を回ている。
 さすがにこれは遅すぎやしないかね。
 募ていた不安が一気に膨らむ。少なくとも、あいつは遅刻しても約束を破たことはない。
 私の家は駅のこち側だけど、あいつの家は駅の反対側。
 家まで行たら迷惑かな、なんて思いつつ、でも押さえきれない焦燥感で駅前広場に背を向けて駅の構内に入た直後。
「あ」と上げた声が重なた。それから、「何やてんだよ」ていう声も。
「お前が来ないから」「こちだてあんたが来ないから……
 私と彼は顔を見合わせ、そして二人して吹き出した。

***

……何、なんでそれが結婚の決め手になるの?」
 私の言葉を母は鼻で笑た。
「そりね。生まれたときからケータイだのスマホだのがあたあなたにはわからないでしうね」
 いい? と母は、眉を寄せたままの私の鼻先を指さす。
「二時間半。ママとパパは、駅の反対側で相手が待てるのに気づかないで待ち続けてたわけよ? しかも心配になて、同時に駅の反対側に行こうとしてはち合わせたの。わかる?」
「ま、すごい偶然だね」
 リビングのソフでトドのようにぐでんと横になり、いびきをかいている父をチラと見て、母はこれ見よがしにため息をついた。
「その『偶然』が『運命』に思えた高校時代があたのよ」
 若いて怖い、と呟いた母に、私は深々と頷いた。
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