第壱回 書き出し指定大会
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新世界創世の讃歌
投稿時刻 : 2013.04.02 03:41 最終更新 : 2013.04.02 04:12
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- 2013/04/02 04:12:21
- 2013/04/02 03:58:36
- 2013/04/02 03:43:35
- 2013/04/02 03:41:12
新世界創世の讃歌
おぢさんプリン10億円


PM2.5が吹き付けてくる。
坂上田村麻呂は阿弖流為に 伸し掛かるように『「阿弖流為」て、なんて読むの?』と聞き出し、腰を引いて、上目遣いに毛穴を見た。
 阿弖流為は、口ひげの端をもじもじといじりながら、頬を赤らめ、潤んだ瞳で答える。
「ア、アテルイていいます……
「へー、アンタもアテルイていうんだ……
 坂上田村麻呂はそこで言葉を切ると、くると身体を一回転させてから、恥ずかしそうに首を傾げて言た。
「奇遇だね! アタイも、さかのうえのたむらまろていうんだ!」
 それを聞いて、阿弖流為はさらに頬を上気させた。
 武具を操てきた節くれだた両手を胸の前に当て、弾んだ声で言う。
「じ、じ……たむりんて呼んでいい?」
 田村麻呂は立派なあごひげを撫でながら、照れくさそうに了承する。
「アンタがいいなら、それでいいよ、ア……
「うふふ、たむりん……♡」
「ア……ふふふ……
 筋骨たくましい二人の武将は、潤んだ瞳で見つめあう。
 今、この石畳が敷かれた広場には二人きり。
 二人の親密さが醸し出す、濃厚な気配が漂た。
 そこへ一陣の強風が吹き込む。
「やだ、えちな風―」
 召し物の裾を押さえながら、阿弖流為が野太い声を上げる。
「あはは、アかわいい!」
 田村麻呂も低い声で笑う。
 だが、二人は異変に気づいた。
 風は吹き過ぎず、二人の前で渦を巻き始めたのだ。田村麻呂と阿弖流為は押し黙て、成り行きを見守る。
 周囲の空気が引き込まれていくにつれ、渦の中心に何かが形作られていく。
 渦巻きが消えたとき、そこには黒い砂で構成されたような人影が立ていた。
 今まで大気中に漂い、様子を伺ていたPM2.5が凝結した姿だた。
 PM2.5は、おぼろげな顔立ちから、抑揚のない声で告げる。
「おまえたちには失望した。もう用はない。死んでもらう」
 それを聞いて、田村麻呂は瞬時に激怒した。眉毛を逆立て、血走た眼を見開いて怒声を張る。
「おのれ! 物の怪風情がなめくさりお!」
 刀を引き抜き、雄叫びを上げた。
「うおおおおおおおお!」
 田村麻呂の質量が増大したかのごとく、石畳が割れてボコリとへこむ。その身体からは赤く輝く闘将のオーラが立ち昇た。
 阿弖流為も怒りに燃え上がた。顔中に青筋を浮かべ、徒手空拳の構えをとる。
「物の怪の分際で我が生命を所望するとは、身の程知らずめ! 許さん! ぬあああ!」
 叫びとともに阿弖流為の筋肉が膨れ上がり、召し物をビリビリと引き裂く。闘気の高ぶりが電光となて周囲に火花を散らした。
 PM2.5は、感情がないかのように臆することもなく、黒い両腕を前へ上げる。
「死ね」
 槍のように鋭くなた腕が、殺意を込めて田村麻呂と阿弖流為に伸びる。
 田村麻呂と阿弖流為は、それぞれ半身になて突きをかわした。と、同時に二人は前へ踏み込み、PM2.5に肉迫する。
 田村麻呂は、PM2.5の脇をすり抜けるように刀を振るた。その刃はPM2.5の首を切断する。
「一撃!」
 一方、阿弖流為は神速でPM2.5の背後まで回りこみ、手刀で股間から首までを切り上げていた。
「一閃!」
 PM2.5は首を失い、身体も真二つに裂ける。
 構造を保つ力を失たPM2.5は、破裂音とともに霧消した。
 二人のあいだを遮るものが無くなり、田村麻呂は刀を上げたまま、厳しい眼力をもて阿弖流為を睨めつける。
 阿弖流為もまた手刀を構えたまま、不屈の眼光でもて、田村麻呂の瞳を射抜いた。
 響きあう数瞬ののち。
 田村麻呂は刀を納めて、右手を阿弖流為に差し出した。数多の殺戮と救命を成してきた右腕を。呟きとともに。
「強敵(とも)よ……
 阿弖流為はそれに応えた。
「愛すべき強敵(とも)よ!」
 やはり頑強な右手を伸ばし、田村麻呂の手を固く握り締める。
 その結束は岩をも貫くが如くに漲る。
 
 この瞬間、新たな宇宙が生まれた。
 可能性の地平を切り開いて。
 未知の分岐へと。
 我々の世界においては、坂上田村麻呂に敗れた阿弖流為は処刑される。
 だが、PM2.5の介入によて、この世界における二人の武将は、無二の親友として生涯寄り添い遂げる。
 和解と信頼によて生まれた分岐。
 その世界では、人々はより良く生きられるだろうか。
 PM2.5を操ていた存在が、善きものか悪しきものか、それすらもわからない。
 確かなことは一つ。
 宇宙、それは……無限のフロンテ
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