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しゃん クリスマス企画 よみがな確認所
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ホーリー(大沢愛ちん)
(
伝説の企画屋しゃん
)
投稿時刻 : 2013.12.29 22:46
字数 : 6383
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感 想
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ホーリー(大沢愛ちん)
伝説の企画屋しゃん
※「なぜかジー
ンズだけが椅子の背凭れに掛けてある」
「弟のヒロトが毛布と布団を互い違いにかけて」
掛けて、かけて、の表記揺れについては、「かけて」にしたー
。
******************
カー
テンの隙間から見える梨地(なしじ)ガラスの内側は細かな水滴に覆われていた。お向かいの阿賀山さんは毎年12月になると壁面に色とりどりのイルミネー
シ
ョ
ンを這(は)わせる。LEDをネ
ッ
トにちりばめてドレー
プのように流したり、波や花火を象(かたど)
っ
たり。通り過ぎる車のハンドルが一瞬だけふらつく。今日は12月24日。明日でイルミネー
シ
ョ
ンは終了だ。週末には朝から大掃除を兼ねた撤去(て
っ
き
ょ
)作業が行われるだろう。五年前は脚立(き
ゃ
たつ)のそばではし
ゃ
いでいた阿賀山家の男の子も、二年前からは手伝おうともしなくな
っ
ていた。
窓枠から離れる。明かりのついていない部屋の中はノー
トPCのLEDが細かく瞬(またた)いている。壁際のオイルヒー
ター
が作動しているおかげで、吐く息はかろうじて白くならずにすんでいた。床の上にはコー
トとセー
ター
、シ
ャ
ツが脱ぎ散らされて、なぜかジー
ンズだけが椅子の背凭(せもた)れにかけてある。壁際のベ
ッ
ドに視線を移す。弟のヒロトが毛布と布団を互い違いにかけて寝息を立てている。帰りが遅いと母親に叱られて反論し、父親の一喝に遭
っ
て部屋へ引き揚げたのはほんの一時間前だ。かすかに喉が鳴る。
週に一度、母親が掃除機をかける上に消臭剤も置いてある。それでも部屋には脂じみたにおいが漂
っ
ていた。丸ま
っ
たパジ
ャ
マをよけてベ
ッ
ドに近づく。暗がりの中で目を凝らすと、ヘ
ッ
ドボー
ドの上辺に赤と緑のかわいらしい靴下が掛けてあ
っ
た。
ち
ょ
ww、なんだよこれ。もう高校一年生だから枕元に靴下を置くわけがない
っ
て思
っ
てたけど。これに何を入れてもらうつもりなんだよ。iPodとか? でもケー
スとか全部破棄して中身だけ入れることになるよ。殺伐(さつばつ)としたプレゼントだな
ぁ
。そんなので嬉しいの? 本当にアンタ、いつまで経
っ
ても考え無しのままだね。万札でも入れろ
っ
てか。もしそうなら、ち
ょ
っ
とお姉ち
ゃ
んの方へおいで。張り倒してあげるから。小学五年生の弟を張り倒すことに関しち
ゃ
、ち
ょ
っ
と自信があるからね。ぎり
っ
ぎりのところで泣かずに踏みとどま
っ
て、でも最後のひと言で泣き出すくらいの。泣き声を聞きつけた母さんが飛んで来れば、どうせ私が叱られるんだよ。だからアンタ、わざと大袈裟に泣いてみせるんだよね。本当、子ども
っ
て汚いよな
ぁ
。でも私が、すぐ泣くのは男の子じ
ゃ
ない、泣けば泣くほど萎(しぼ)んでい
っ
て女の子にな
っ
ち
ゃ
うよ
っ
て言
っ
たら、泣かなくな
っ
たんだよね。それからは本気で張り倒せるようにな
っ
た。馬鹿だけど、可愛か
っ
たよ。
ベ
ッ
ドの縁に腰を下ろす。部屋のにおいが濃くな
っ
た。暗がりを透(す)かして弟の顔を見つめる。
なんだかお
っ
さんくさくな
っ
てない? ああ、鼻の下にう
っ
すらと髭が生えているからか。つる
っ
つるだ
っ
たくせに、まあす
っ
かりケダモノ化しち
ゃ
っ
て。それにしてもこの香りは、ムスク? ち
ょ
っ
と勘弁してよ。ああそうか、ミホち
ゃ
んだ
っ
け? その靴下、あの子に貰
っ
たんじ
ゃ
ない。五月に告
っ
て付き合い始めて、初めてのクリスマスか
ぁ
。プレゼントが靴下
っ
てし
ょ
ぼすぎるみたいだけど、もちろんメインは違うんだよね。一大決心
っ
てやつ。それなのにアンタはまあ
……
。いいんだよ、それで。世の中にはね、いい加減にや
っ
てうまく行くよりも、一生懸命にや
っ
たけど失敗するほうが気持ちが伝わる
っ
てこともあるんだから。あ、でも二度目はないからね。半端な気持ちでなし崩しに、みたいなことをや
っ
たら、お姉ち
ゃ
ん、本気で張り倒すよ。この件に関してだけは、お姉ち
ゃ
ん、弟のアンタよりも女の子の味方だから。
暗がりの中に机が見える。鞄が置いてある。奥の本棚にはところどころ逆向きに参考書が挿(さ)してある。上には英和辞典の箱が載
っ
ていて、中にプリントが詰め込まれている。辞書の中身は見当たらない。
ああ、こり
ゃ
勉強してないね。高校入試をひー
ひー
言いながらクリアしたのをもう忘れたのか。ち
っ
とは懲(こ)りなよ、ま
っ
たくもう。あの鞄(かばん)、家に帰
っ
てから一度も開けていないし。そり
ゃ
未提出のプリントが溜ま
っ
て点も引かれるよ。ていうか、こんな感じで12月まで来てち
ゃ
、け
っ
こうやばくね? あと、枕の下から覗いているそれ、絶対にばれてるよ、母さんにも。あの子と会
っ
て来たときくらい控えろ
っ
ての。それにしても、なんかこう、うすらデカくな
っ
たね。後頭部に蹴りを入れても大丈夫だ
っ
たりして。小学校のときには私が右手でアンタの喉を掴んで肘を伸ばしたら、いくら手を振り回しても足を振
っ
てもまる
っ
きり届かなか
っ
たんだよね。アンタ、ぴー
ぴー
泣いてさ
ぁ
、かわいそう
っ
ていうよりもおかしくて。げらげら笑
っ
てたら母さんにぶん殴られた
っ
け。あれは痛か
っ
た。なんだか涙が出た。いや、痛か
っ
たからじ
ゃ
ないと思う。何だ
っ
たんだろ。ねえ、アンタ、憶えてるかな。
棚の上に丸い影がある。サ
ッ
カー
ボー
ルだ
っ
た。小学校のときに両親にねだ
っ
て買
っ
てもら
っ
たものの、地面の上で蹴るのは汚れるから嫌だと言
っ
て、以後は飾
っ
たままにな
っ
ている。
アンタ
っ
てそうだよね。どう頑張
っ
ても体育会系にはなれない。小学校のとき
っ
てスポー
ツができる順に人気があるから、まあどうしようもなか
っ
たね。中学校も三年くらいになるとさすがにスポー
ツ馬鹿の底が割れて来るから相対的にランクは上がるけど、でもアンタは単なる馬鹿だからな
ぁ
。汗臭いイメー
ジがなくて坊主頭でもない
っ
てだけで。でも背が伸びてきたおかげでそれなりに見てくれはよくな
っ
た。あのころ175㎝だ
っ
た
っ
け。私と同じか
ぁ
。生意気な。頭が回らなくてあんまり喋れないのをクー
ルだと勘違いした女の子を一時的に惹(ひ)きつけるくらいにはモテたでし
ょ
。でもさ
ぁ
、アンタに寄
っ
て来たの
っ