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真夏の冒険(うーくん)
(
伝説の企画屋しゃん
)
投稿時刻 : 2013.12.29 23:05
字数 : 4383
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真夏の冒険(うーくん)
伝説の企画屋しゃん
#シー
ン1
真夏のある日。降り注ぐ蝉の鳴き声のシ
ャ
ワー
。学校は夏休み。二人の少年が山に虫取りに。
二人の少年は虫取り網と虫かごを手に山へと昇
っ
ていく。
「あ
っ
ついね」
「あ
っ
ついな」
「蝉の鳴き声がい
っ
ぱいするけど、蝉ならすぐにとれるかな」
「どうだろうな。蝉も意外と木の高いところにいるからな」
山道には草木が鬱蒼(う
っ
そう)と生い茂
っ
て、ほとんどけもの道と言える。張り切
っ
て虫取りに出かけたものの、お目当てのカブトムシの姿はどこにも見えない。目算(もくさん)が甘か
っ
たと、二人の少年は少しが
っ
かりした様子。
「なかなか、カブトムシはいないね。」
「そうだな。ここらへんだとな」
「今度お父さんに連れて行
っ
てもらおうよ」
「いいなお前んちは。俺んちなんかそんなこと聞いてもらえないぜ」
「そうなの?気にしないで一緒に行こうよ」
「いいのか?」
「いいよ
~
。僕だ
っ
て一人じ
ゃ
虫取り行かないもん」
二人は話しながら山を登
っ
ていく。ふと、足元に、
「わ、なんかいた!」
「何、なんだこの黒い虫」
その虫を捕まえるのに虫取り網なんていらなか
っ
た。片方の少年が、片手でつまみあげ、虫かごに放り込む。
「さ
っ
そく一匹」
「けど、こいつはあんまりか
っ
こよくないな。ち
ょ
っ
と小さいし」
「この虫なんて名前だろうね」
「俺にはよくわかんないな。それより、も
っ
といいやつ見つけようぜ」
「そうだね」
とりあえず、虫かごはそのままに、二人はまた歩き出した。
#シー
ン2
二人はどんどんどんどん山の奥へ入
っ
ていく。木立の中を歩きながら時には獣道にまで入
っ
てい
っ
た。けれどもけもの道は予想以上に深く、ところどころ木の枝が飛び出ていて、や
っ
ぱり二人は断念した。それでも、何匹かの虫を見つけることはできたので、それなりに二人は満足することができた。
「いて
っ
」
「大丈夫か?けがすんなよ」
「うん、大丈夫」二の腕を擦りむいたのか、少年Aは、肌をさすりながらうつむきがちに答えた。
「うお
っ
、あれなんだ?」
少年Bの指差す先には、大きなルリボシカミキリがいた。
「す
っ
げー
、ルリボシカミキリだ」
少年はそうい
っ
て、飛び出す枝もなんのその、木に向か
っ
て猛ダ
ッ
シ
ュ
してい
っ
た。
「ち
ょ
、ち
ょ
っ
と!」
少年Aはおいて行かれないように、必死でダ
ッ
シ
ュ
した。
少年Bが手づかみで虫かごに放り込み、急いで蓋(ふた)を閉めた。虫かごの隙間から、二人で一生懸命中を覗き込んだ。
「すごいね。よく捕まえたね」
「へへー
。すごいだろ。」
二人でまじまじとカミキリムシを見つめながら、戦勝を称えあ
っ
た。
木々の枝をかき分け、元の木立の中を通る道に戻
っ
た。二人の少年は、森の中の湖へ向か
っ
た。
#シー
ン3
二人が湖についたとき、太陽はち
ょ
うど空の一番高いところにあ
っ
た。二人で水辺に腰かけて、母親の作
っ
たおにぎりを食べた。一方の少年がバナナを持
っ
てきていたので、二人でそれを半分こした。
「お前、用意いいな。」
「いや、お母さんが持
っ
て行け
っ
て。」
「へー
、それならお前のお母さんにお礼言わないとな。」
「いや、いいよ。たぶん・・・」
「ま
ぁ
でも、家近いから顔合わせるとき結構あるし、今度言
っ
とくよ。」
「あ、うん。」
少年Bが立ち上が
っ
て、湖畔の小さな小屋のほうへ行
っ
た。小屋の中には、錆(さ)びた車のエンジンのようなものがそのまま置いてあ
っ
た。古くな
っ
たタイヤや、なんだかよくわからない小さなネジなども落ちていた。
「なんだろうな。これ。」
「うー
ん。よくわかんない」
少年Bが地面に落ちていたプラグのようなものを手に取
っ
て言
っ
た。
「も
っ
て帰ろ」
そう言
っ
て少年はポケ
ッ
トにプラグのようなものを突
っ
込んだ。
雨が降
っ
てくるような気配はなく、二人の頭上で太陽は燦々(さんさん)と輝いていた。少年二人は汗をかきながらせ
っ
せと山の中を探検してい
っ
た。
二人が見つけた湖は、周囲を木々に囲まれていて、二人が来た道の一本と、上流から流れてきている川辺くらいしか、他の場所へ通じるような道はなか
っ
た。
林の中は、木が茂
っ
て、薄暗く、苔が生えているところもあ
っ
た。そういうところには少年たちは近づかないようにした。
湖の周りをぐるりと一周して、少年たちは、川沿いの道を登
っ
ていくことにした。魚が泳いでいるのが見えたが、少年たちは釣竿を持
っ
てきていなか
っ
たので、しばらくじ
っ
と魚を眺めていただけで、またすぐに歩き出した。
「こんど図鑑であの魚調べてみようぜ」
少年Bが元気に言
っ
た。
「この辺にはあんまり虫がいないね」
「そうだなー
。や
っ
ぱり木のほうにいるんだろうな」
「うん・・・また森の中に入
っ
てい見る?」
「いや、俺はこの川がどこに続いているのか見たいんだ」
「わか
っ
た。じ
ゃ
あ僕もついていくよ」
そうい
っ
て二人はまた歩き出した。二人の親が見ていたら、はらはらするような冒険である。よく両親は許可をしてくれたものだと思う。
しばらく歩いていると、道の傾斜が緩くな
っ
てきて、短い草が生えている、平地に出た。
そこに、錆びて朽(く)ちかけた砲台があ
っ
た。
「なんだこれ」
少年Bが興味深そうに近寄る。それを少年Aが遠くで見ている。
「おー
い。こ
っ
ち来てみろよ。中に入れるぜ、これ」
「う、うん」
そうい
っ
て少年Aも砲台のほうへ走
っ
て行
っ
た。
砲台の砲塔がある反対側に回
っ
て中を覗き込んでみると、少年Bがすでに中に入
っ
て、何かをいじくりまわしていた。
「すげー
。こ
っ
から外が見える」
砲台の内側はコ
ッ
クピ
ッ
トのようにな
っ
ていて、飛行機のようなハンドルと、鉄板で覆われた装甲には長方形の監視用の窓がついていた。
少年Aも中に入
っ
て、その小さな横長の窓から外を眺めていた。視界の先には青々とした木々の葉
っ
ぱと、錆びた銃身が斜め45度くらいの角度で、ま
っ
すぐ伸びていた。
「これで、何か撃
っ
たのかな」
少年Aがゆ
っ
くりと口にした。
「そうかもな」
少年Bが腕を組みながら言
っ
た。
「この辺に兵隊とかいたのかな」
少年Bがそういうと、そのまま二人は黙
っ
てしま
っ
た。
どこからか風が吹き抜け、さらさらと風が草木を揺らす音が聞こえた。どこからか男性の叫び声や怒号と、銃声のようなものが聞こえたような気がしたが、それはき
っ
と二人の少年の勘違いである。
遠くでセミの鳴き声が響いていた。
何度かハンドルをがち
ゃ
がち
ゃ
と動かしてみたが、ロ
ッ
クされているのか、銃身が動くような気配はしなか
っ
た。少年Bは飽きたのか、ハンドルの前に座
っ
て、両手を頭の後ろで組んでいた。
少年Aは黙
っ
て後ろからそれを眺めていた。虫かごの中で、カミキリムシが退屈そうにもそもそと動いた。
ぽつぽつと雨が降
っ
てきて、一気に豪雨にな
っ
た。少年二人は、しばらくそこから動けなくな
っ
た。
「大丈夫。すぐ止むだろ」
「うん」
少年Bがそうい
っ
たが、その予想に反して、雨は長く降り続いた。二人の少年は時計を持
っ
てこなか
っ
たので、どれだけの間、雨が降
っ
たのかはわからなか
っ
た。
二人でじ
っ
としていると、突然霧(きり)が晴れたように、雲が切れて、太陽の光が差し込んだ。二人が外に出ると、む
っ
とした水蒸気の熱気と、太陽に照らされてきらりと光る草露が見えた。
少年たちは外に出て背伸びをした。カミキリムシがぎー
ぎー
鳴いた。
「カミキリムシ
っ
て鳴くんだ」
「おお
っ
。俺も初めて聞いた」
太陽の光がだんだんと黄金色に染ま
っ
てきたので、二人は道を引き返して帰ることにした。
「今日はここまでだな」
「うん」
そうい
っ
て二人は急いで引き返した。
帰り道は早か
っ
た。川沿いを歩いて、すぐに昼におにぎりを食べた湖についた。それでも、日が落ちるスピー
ドに追い付かれ、東の空は、青と紺色に染ま
っ
ていた。
林道に入
っ
てしばらくすると、コウモリが飛び始めた。さすがにこちらにぶつか
っ
てくることはなか