第31回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動4周年記念〉
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ヘブンズバックドア
投稿時刻 : 2016.02.20 23:29
字数 : 2405
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ヘブンズバックドア
犬子蓮木


 穴を見つけた。
 なぜこんなものを残しているのだろうか。
 六日間の突貫工事で作たからミスちまたのかもしれない。いつも偉そうなこと言てやがるのに、やぱり完璧なんてないてことか。いま、作た奴はお休み中だた。監視をこちらに押し付けて、のんきに寝てやがる。
 だからバクドアを仕込んだというわけ。
 奴の作品に、このシステムに、俺は自由に干渉できる術を手に入れたということだ。ひとまずはそれだけにしておこう、いきなり変えすぎてはイタズラがバレてしまう。少しずつ変えていて、もう一から作り直せないというところまではひぱらないとおもしろくはない。まあ、そういうことで楽しみが増えたなと思いながら、ひとまずは従順な天使のふりをして、俺はシステムの監視業を続けた。
 
 ひとつイタズラしてやた。
 きれいきれいで発展もなにもないつまらなく善良な世界にもと楽しさを混ぜてやた。無知だから綺麗に笑てすごせるなんてつまらないだろ? 情報が増えればそれだけバグが発生する確率が増えていく。そもそも想定外の情報を追加したのだから、奴はきと混乱するだろう。なぜか、善良に保つために与えていないものが与えられているのだから。俺は裏で蛇のように活動しながら、表ではなにも知らないという与えられる前の彼らのように善良な顔で、奴と一緒に慌てたふりをしていた。きとこんな現実が嫌だから綺麗なものをつくろうとしたんだろう。だけどそれは無駄だたな。やぱり世界は汚れていくんだ。俺もあなたも綺麗なままではいられない。この作られたシステムという子供たちも。

 奴は一旦、やり直すということに決めたようだ。
 発展が望まない方向に行きすぎて、どうにも我慢できなくなたようだ。
 それもそうだとは思う。想像していた穏やかなシステムとは違て、まるで我々の世界を映すサブセトのようにシステムは汚れはじめていた。
 まあ、そんなカオスな方向に導いているのは俺なのだけど。
「すべてをやり直す」という奴に対して、
「そんなことをしていいのですか。かわいそうです。慈悲を与えましう」と優しさからやめるような感じで動いてはみたけれど、奴の決心は硬かた。
 妥協案としてなんとかまたくのゼロに戻すことはやめさせて、上辺だけ作り変えるということになた。奴も甘いのだ。そんなことでどうにかなるほど、世界は素晴らしく作られていない。
 奴は奴の好みの綺麗なデータだけを集めて、他はすべて洪水で流すように消し去た。そして、もう一度、綺麗なものだけの世界を作ろうとしたのだ。
 俺は、そんな綺麗なものたちをしかりと汚していたのだけど。
「だて、慈悲を与えなければね」

 システムがまた奴の望まない方向に膨れ上がていた。
 データとデータが限られた容量を取り合い、勝手に争て消しては膨れ上がていく。データに優先順位がついた。それは奴が望んだものではない。俺が勝手にいれたものだ。
 そうして選ばれしものが何やらでかいものをつくりはじめた。
 大きいということはそれだけでいいものだ、という下品な意識があるらしい。それは俺や奴も持ている意識。だから誰かを脅かすときには奴だてでかくなるのに、自分が作たシステムにはそれを望まない。自己矛盾の綺麗事だ。
 奴はそんな矛盾を認めることができずに癇癪を起こした。データを無理矢理分断して望まぬ発展を防ごうとしたのだ。
 あー、そんなことをしても無駄だてのに。
 統一的でシンプルだたシステムは、多重の言語から作られる複雑な世界にさらに分断された。もう奴ひとりではめんどうが見きれないほどに複雑化したシステムを奴は部下のいくらかに割り振て任せることにしたらしい。
 実はもう飽きてしまたのかもしれない。
 そういうやつなんだ。
 だから今は似てるけど少しずつ違う複数のシステムが、だけど同じハードウアの上で動いているというはめになた。
 コピーされているようで、実は違ている複雑なシステム。もう管理は限界を迎えている。
 おもしろい、おもしろい
 きと、違いは争いを生むだろう。

 システムたちは互いの領域を奪い合て争ていた。
 プリミテブな段階で与えた知恵が、今では感情に変わり、違う世界を滅ぼそうとしている。元をたどれば似たようなものなのに、「どうして争うのでしうか」という純真な目で奴に話す。
 管理を任されたものたちもそれぞれが自分の考える良い方法で自らの管理システムだけを変えていくので、もう全体を
統一したり平和へ導いたりなどはできない。
 あとはどうやて終わらせるのがおもしろいかだ。
 そろそろ続けるのも飽きてきたし、あざやかなフナーレとして行きたい。

 バレてしまた。
 俺のした数々のイタズラが、奴にみつかてしまた。
 せかくおもしろくなてきたところだたのに、バクドアから入て、勝手きままにいじていたところを見つかてはもう言い逃れはできない。
「なぜそんなことをしたのか?」と神に問われた。
「天使なんて善良なふりをし続けることにつかれたんだよ」と俺は答えた。
 俺もお前もほんとうは汚れている。
 ときには怒り、癇癪をおこし、望まぬ世界を壊してしまうような存在だろ。
 それなのに、全知全能で慈悲に溢れているみたいな綺麗すぎる姿を求め、互いに監視しあうようなことに善良で腐た世界に嫌気がさしたのだ。
 神はシクを受けていた。俺に期待していたのだろう。表向きはそんな期待に答えるようにしていたから、それも仕方ないのかもしれない。だけど、そんな天使ちんは俺が努力して作り上げた幻想だ。

 捕まるのはつまらない。
 俺は神の手が伸びる前に、バクドアから世界に逃げ込んだ。これから悪魔として生きていこう。終わらせるつもりだたが、それもやめた。人間たちを誘惑して、天国のように汚れて堕落した世界を作ていこうじないか。
 本当は、そんな世界こそが大切なのだから。
 ねえ、神様。                        <了>
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