オレンジ色
門限が遊ぶ時間を制限させる。
小学生の夕焼け、染まるのはオレンジ色の顔と決められた門限の針。
「間に合わなか
ったから鍵かけるよ!」
家に着くとすぐに飛んできたのは母親の声、おかえりのかわりに鍵をかけて締め出す母親の門限破りの刑は、子供心に切なくて痛かった。
「いやだぁああ!」
走りながら別の入り口から家の中に入ろうとする私に、その裏をかくかのようにすぐにその場所も鍵がかけられる。小学校の運動場を走ってこいという命令がさらに加わり、泣きながら鍵のかかった扉を後にする。小学校の運動場になど行くはずもなく、竹林で時間を潰す。見つからないように身をかがめて。
いくら身をかがめても、人が来ればすぐに見つかるその場所は、あっけなく母親に発見され連れ戻される。
連れ戻される足取りを見て思う、連れ戻すくらいなら小学校の運動場に行けなど言わなければいいのに、と。
その日の晩御飯は覚えていない。
だけど私は、その門限ぎりぎりのオレンジ色の風景が大好きだった。
それまで楽しく遊んでいた友達との別れ、家に帰る時間が何時になるのか逆算できない恐怖。このまま時が止まってしまえばいいと一日が終わっていく様を見ていると、山の向こうのオレンジ色に吸い込まれたいという衝動にかられていた。
太陽がまだ、高い位置にある時間は学校でどうでもいい話をする。
小学生とはいえ、多感な時期、女子と男子にわかれて遊んだり、一緒にかくれんぼをしたり、運動場には今よりもたくさんの遊具があった時代、子供達の声はあたり前に賑やかで、休み時間が終わる鐘の音が声を張り上げて歌わなくては、皆に聞こえないほどだった。
好きな人の話が出ても、私は言えずにいた。
片思いの彼はその後、ずっと片思いのままになるのだが、当時、好きな人は何人もいて、常に一番に君臨していた彼の前ではあまりしゃべれなくなるという女の子だった。
惚れるという意味もなにもわからず、彼の消しゴムを切ってもらったりするのが宝物で、使わずにずっと持っていようと思っていたのだが、今となってはどこにもない。ただ、好きだった。なにがしたいとかの欲望もなく、ただ、見つめるだけの好き。
惚れる意味を知ったのは、そのまだずっと先の話になる。
ー終わりー
次のリレーは、「風船」に関するお話をお願いします。