お題リレー小説
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投稿時刻 : 2016.02.28 23:08
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風船と、旧友と
クロノ@ワサラー団@/次イベ10月


風船とは何か。子どもであたり、あるいは認知症を患てしまた人に尋ねられた時に答えられる人は多いだろう。風船は伸縮性の高い色鮮やかなゴムの中に空気を入れることで大きな楕円形を形成する子どもに人気の高い玩具である。
    玩具としての用途以外にも、何らかの式典があればその時には大量に用意され、ハトと並ぶ平和の象徴として用いられている。それだけではなく、バラエテ番組でも大きな音とその見た目の派手さ、そして破裂の際のリアクシンの取りやすさから大変よく使われるシンプルながらも万能とも言ても怒られることはないであろうものだ。かくいう俺も、この玩具のことは幼少期から大好きであり、ことある事にねだり自宅に持ち帰ていたものだ。

    ……あのさ、さきから何してるのさα。居座り冷やかしはお断りだて前にも言わなかけ?」
    ……
    「ねえ、聞いてるの!?ちと、α!」
    「あーもうギせえなβ!」
    「お前が話を聞かないのが悪いんだろ!大体何時間居座てるんだよ、もうお前が来てから5時間は経てるぞ5時間!何も買わねえなら帰れよ営業妨害だ!」
    ……おお、もう5時間経たのか……んじあこれ頼む」
    ……はいよ、まいどあり。風船セト1個で678円だ」
    「1000円で」
    「はいはい、322円のお釣り」
    「おう、たしかに……ぱいいもんだな、風船て」
    ……まあ、それに関しては同意するよ。風船ほど私たちの心を惹き付けたものは無かた」
    「ああ。この小さなゴムの中にすげえ夢の見てたもんだよ。空飛んだり、億万長者になたり……

    「シスター、まだ元気にやてるかな?」
    「元気にやてるとは思うよ。最後に行たの1年前だけどその時もピンピンしてたし」
    ……ならいいんだけど。私もう10年会てないし……
    「覚えてるか?俺らがまだガキだた頃……
    「もちろん覚えてるよ。あの時だたもんね、私たちが初めて風船に出会たの」
    「シスターが街に出かけて行た時の土産物だたな……
    「あの時一番食いついてたのαだよね。今でも笑えるわ普段クールキラで通してたαがあんなに食いついてたの」
    「ハ!?いやいや、俺じねえて!Δだよ!」
    「あれ、そうだけ?」
    「そうだよ、間違えんなよな!……そういや最近Δに会てねえな……今どこにいるんだろ」
    「ああ、あの子なら今は──おと、噂をすればなんとやらてやつだね。いらいΔ」

    「また来たよβ。どう?繁盛してる?」
    「んー、まあボチボチてところかな?こいつがもと客寄せパンダになてくれたらいいんだけどねえ」
    「こいつ……?」
    「よ、久しぶりだなΔ」
    「おお、αじないか!久しぶりだな!元気にしてたか?──あ、β!またいつもの頼む」
    「はいよ。アレてことはまたなにかイベント?」
    「ああ、今度は国際貿易ターミナル開港式典さ」
    「国際貿易ターミナル開港式典?」
    コイツ、一体何の仕事をしてるんだ?
    「なんだ、α知らなかたのか?国際貿易ターミナルを作てよりスムーズな貿易を世界規模でやろうていう動きがもう6年前からあるんだぜ?6年間かけてようやく完成てわけ。俺の仕事はそういたおめでたい式典を企画運営することさ」
    「ホ、そいつは凄い」
    「本当にわかてんのか?まあいいけど。んで、αは何してるんだ?」
    「児童養護施設の経営。一応これでも慈善事業やてるんだぜ?聞いたことないか?児童養護施設爽風園」
    「え、マジ?あの施設の敏腕経営者てαだたの!?予想外!」
    「βお前ほんと可愛げないとこあるよな」
    「お前次料金倍取るからな覚えとけよα」
    「ボタクリかよ」
    「正当価格よ」
    「お前ら夫婦かよ……
    「こんなヤツと夫婦なんて死んでも嫌ね──あ、また委託して送ておけばいいかな?代金はこちで貰うし着払いだけど」
    「ああ、それで頼む」
    「はーい。いやー毎度悪いね、ウチの1番のお得意様だよ、どこぞの誰かさんとは違て」
    あ、今こいつ明らかにこち見やがた。ほんと可愛げねえやつだなβは。だからいつまで経ても結婚出来ねえんだよ。
    「α今度あたら殴るね」
    「なんでだよ!?」
    「だて今α女性に対してすごく失礼な事考えていたでし?」
    「ま、自業自得てやつだと思て諦めろα」
    「救いはねえのかよΔ!?」
    「ハハハ相変わらず面白いやつだな!今日来てよかたよ」
    「俺は全く笑えないんだけどな」
    「さて、俺はそろそろ行くよ。式典は中継もやてるし、観覧なら無料で自由にできるから良かたら来てくれ」
    「はいはい、時間があたら行くよ」
    「そうだな、俺も子どもたち連れて行くか」
    「じあな!」

    「うん、そろそろ俺も行くわ」
    Δが去てからしばらく見て、施設で待つ子どもたちが気に入りそうなものに目星をつけてから帰ることにした。
    「また来るよ、今度は子どもたちを連れて」
    ……わかた、今度来るまでには絵本とか、風船とか、娯楽道具いぱい用意しておくよ」
    「悪いな」
    「ただし、料金は倍だからね」
    ……はいはい、わかりましたよ」
    たく、βにはなぜかガキの頃から勝てる気がしないな。
    「じあな」
    「──あ、待てよα!」
    「あ?なんだよβ……
    「はいコレ、持ていきな!」
    そう言てβは1本の傘を手渡してきた。お世辞にも綺麗とはいえず、使い古した傘だた。
    「雨降てるからさ、それ使いなよ」
    ……いいのか?」
    「当たり前よ。遠慮はいらないわ、どうせかなり前に客が置き忘れたものだし、αが濡れてると子どもたちが心配するんじない?」
    ……違いねえ。ありがとな、次来た時は返すからさ」
    「ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております。また来てね、α」
    「おう」

    少し重い木製の古びたドアを開け、外に出る。βが言ていた通りそれなりに雨が降ていた。たしかにこの雨ではせかくの風船も雨に濡れてしまうだろう。
    季節は冬、晴れていてもかなり寒いのに雨のせいでより一層寒さを強く感じる。あやだやだ、早く春になてくれないと子どもたちが風邪をひかないか心配で疲れる。

    ……さ、帰るか……
    寒空の下、厚手のダウンジトに身を包み手袋とマフラーをした俺は1人、時に寄り道をするでもなく施設に帰た。帰たら、子どもたちと山にようにたまた仕事が待ているんだろうな、とかそんな、他愛もない事を考えながら。
   


《次のお題》チケ
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