てきすとぽい
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第38回 てきすとぽい杯
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夏の三角形
(
おかゆまくらげ
)
投稿時刻 : 2017.04.16 00:01
字数 : 1379
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夏の三角形
おかゆまくらげ
ち
ょ
っ
と聞いてよ。
今日ね。カレにデー
トに誘われたの。
ええ。だれだれ? 同じクラスのひと?
あたしが、夕日も傾く頃、赤い日差しが差し込む放課後の喧騒の中で、そう打ち明けると、仲良しグルー
プの三人が奇声をあげる。
1組のカレなんだけど
……
。
ウソ!? カレ!? やだあ、本気で狙
っ
てたのに。
言葉では軽い調子のように聞こえるけど、目は笑
っ
ていない。三人が狙
っ
ていた、1組のミヤトくんを、よりによ
っ
て、仲良しグルー
プのあたしに盗られたことをいいようには思
っ
ていない。
いろいろなアドバイスをくれる。
こんな服を着ていけとか、こんな話をしろとか、いい感じにな
っ
たらこうよ
っ
て。
だけど、女のあたしならわかる。
全部、嘘だ。あたしが恥をかいて、ミヤトくんに幻滅されることを願
っ
てる。
そんな女同士の牽制のし合いに、あたしは飽き飽きしていた。
だ
っ
て、そうでし
ょ
? 相手から声をかけた。別に断る理由がない。だから、うん
っ
て言うしかなか
っ
た。
なのに、なんであたしが悪者だよ。
ぴー
ちくぱー
ちく、言い合いを続ける三人を見ながら、あたしは小さくため息をついた。
誘
っ
てきた男に恥をかかせるほど、あたしは人間ができていない。もちろん、恋愛圏外の男だ
っ
たら、即お断りするけど、スポー
ツもできて、成績も優秀。顔もイケてる。そんなカレからの誘いを断るなんて、あたしにはできないもの。
お誘いの内容は、
『今夜、一緒に星を見に行こう。今夜はとても、いい輝きが見られるから』
正直、その文面が書かれた手紙を、下駄箱に入れられてても、特にき
ゅ
ん
っ
てするわけがない。でも、誰も知らない場所で、夜を過ごす。そのシチ
ュ
エー
シ
ョ
ンに、ロマンを感じただけ。
やいやい言う三人と別れて、あたしは本屋によ
っ
て予習をした。
夏の大三角形。
デネブ。アルタイル。ベガ。
その単語を見て、あたしは、ふと思い当たることがあ
っ
た。
容姿端麗のカレには、常に女の影が噂されている。もちろん、とられたくなくて、嘘の噂かもしれないけど、アルタイルのように、琴を弾くのが似合う、和風美人の絵里。デネブのように、はくち
ょ
うのように麗しい容姿をも
っ
たのぞみ。
残
っ
た、こと座の端くれのようなひと星にあたしが選ばれたと思うと、すごくげんなりする。
もしかして、そういうこと?
あたしは、星座の本を荒々しく閉じて、本屋を後にする。
行くのやめようかな。
なんて、あたしは思い始めていた。だけど、や
っ
ぱりあきらめきれなくて、夜の八時。あたしは、ち
ょ
っ
としたおし
ゃ
れをして、こ
っ
そり家を出た。
はじめて見上げる夜空に、あたしは思わず足を止めた。
そういえば、ベガとアルタイルは織姫と彦星だ
っ
け。
帰り道に読んだ本を思い出して、ち
ょ
っ
とだけ首をかしげる。1年に1回、出会えるふたり。とてもロマンテ
ィ
ッ
クで切ない。
でも、女は寂しさには勝てないの。
だから、織姫は夫と会えない間、別の男と出会
っ
てる。き
っ
と、近くの星と。
それは夫も同じだ。妻と会えない日々を、果たして耐えられるかな。
たぶん、無理。
だから、あたしが選んだのは、そのどちらでもないデネブ。
いつでも飛んで消えていけるように、その翼をひろげているの。
待ち合わせの場所いは、いつもと変わらないカレ。あたしは、いつもよりとびきりの笑顔。だけど、いつでも飛び立つ準備はできているの。
あなたは、彦星である限り、ね。
あたしは、あなたの織星になれないのだから。
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