てきすとぽい
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第41回 てきすとぽい杯
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〔 作品10 〕
エンディングは霧の彼方へ
(
白取よしひと
)
投稿時刻 : 2017.10.14 23:56
最終更新 : 2017.10.15 00:35
字数 : 2432
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2017/10/15 00:35:13
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2017/10/15 00:09:40
-
2017/10/14 23:56:17
エンディングは霧の彼方へ
白取よしひと
(フラ
ッ
シ
ュ
キ
ュ
ー
ブが眼に痛い)
パパラ
ッ
チの群れをかき分けて、スタジオ入りするとシ
ェ
リルは既にスタンバイしていて、シ
ャ
ー
プに剃
っ
た眉をつり上げた。
「もう、なん分待たせれば気がすむの!」
渋滞でおくれたのは僕だが、どうもこの高慢ちきな女は虫が好かない。それでも、新進のこ
っ
ちと違
っ
てあちらさんは、ハリウ
ッ
ドの看板女優だから勝ち目なんてないさ。
「ルデ
ィ
。時間が押してるからすぐスタンバ
っ
てくれ!」
監督もシ
ェ
リルには特別扱いだ。それは、彼女がGエンター
テ
ィ
メントの看板女優だからと思
っ
ていた。
今日はラストシー
ンの前撮りだ。喧嘩別れした部屋で、口をとがらせたカレンは、それでいて茫然としている。すると、開け放たれたマンシ
ョ
ンの窓から、静かな音楽がきこえてくる。微かな音に耳をすませる。それは、二人で行
っ
た映画「ムー
ンリバー
」のテー
マソングだ
っ
た。高ぶ
っ
た胸が鎮まると、彼の抜け殻を部屋に探し目を漂わせた。
(彼のノー
ト
……
)
静かにめくると、それは彼の思い出のメモだ
っ
た。バカンス、映画、ダンスパー
テ
ィ
。楽しか
っ
た想い出が綴られている。そして、それは終わりに近づくにつれ悲しみへと変わ
っ
ていた。
『この悲しみや、つらさを終わらせることができるのなら、彼女の前から立ち去ろう。それが、ただひとつのできることなら、そうしよう。だけれど、これはエンデ
ィ
ングノー
トなんかじ
ゃ
ない。僕は、いつまでも彼女を愛しているのだから」
(マー
ク!)
私はとんでもない過ちを犯してしま
っ
たんだわ。彼を不幸にしていたのは私だ
っ
たのよ。
そのとき、ドアがノ
ッ
クされた。聞きおぼえのある。大切な人の音だ。
「ごめん。忘れものをしてしま
っ
て
……
」
「忘れもの
っ
て
……
私じ
ゃ
ないの?」
「カレン
……
」
そうい
っ
て、彼のノー
トを差し出した。これは決してエンデ
ィ
ングノー
トなんかじ
ゃ
ない。
二人は強く抱きしめあい。失いかけたそのぬくもりを確かめあ
っ
た。
「OK!カー
ッ
ト!」
「よか
っ
たよ!すこし休んでくれ」
すると、休憩を待
っ
ていたかのように貫禄のある声がスタジオに響いた。
「あ
ぁ
。よか
っ
たよシ
ェ
リル!」
それは、Gエンター
社長のモリスンさんだ
っ
た。モリスンが歩み寄るとシ
ェ
リルは抱きつき頬にキスをした。
「モリスンさん。こんにちは」
「やあ、ルデ
ィ
。がんば
っ
てるようだね」
撮影は夜中にまでおよんだが順調にすすんでいる。ホテルへは寝るだけのために戻
っ
ているようなもんだから、ベ
ッ
ドに入ると、すぐに朝を迎えた気がする。
寝ぼけまなこで新聞をひろげると、その眠気もぶ
っ
飛んだ。
(シ
ェ
リルとモリスンが不倫だ
っ
て!)
昨日のパパラ
ッ
チはそれを嗅ぎつけていたんだ。
その時、ベ
ッ
ドサイドの電話が鳴
っ
た。
『モリスンさまからです』
「はい。ルデ
ィ
です」
それは、モリスンからのデスボイスだ
っ
た。
彼は、シ
ェ
リルとの恋愛相手は僕だ
っ
たことにしてくれと言
っ
てきた。それに従わないなら、契約を打ち切ると言うのだ。や
っ
と掴んだ俳優のチ
ャ
ンスだ。僕は逃したくなくて、それを了承した。
テレビでは、モリスンが釈明会見を開いていた。そこにはシ
ェ
リルも一緒に座
っ
ている。モリスンは、この映画はト
ゥ
ルー
ラブストー
リー
だと豪語した。このスキ
ャ
ンダルを、宣伝に利用しているのだ。シ
ェ
リルは横で幸せな女性を演じている。
テレビの箱の外にいる自分はピエロなのか?自分は仕事欲しさに、不倫の片棒を担いでしま
っ
たんだ。憤りじ
ゃ
ない。このやり切れない気持ちは、いつのまにか感じていた彼女への憧れだ
っ
たと気付いて僕は茫然とした。
その後、ルデ
ィ
が失踪して撮影現場はパニ
ッ
クに陥
っ
た。パニ
ッ
クにな
っ
たのは、現場だけじ
ゃ
ない。シ
ェ
リルも同じだ
っ
た。ゴシ
ッ
プ記事は何とか演じて切り抜けてみたものの、その彼氏が失踪したことで、またパパラ
ッ
チに追い回されるようにな
っ
た。新聞の見出しには、ムー
ビー
スター
の破局と掲載されている。
「まい
っ
たよ。破局カ
ッ
プルの共演なんかじ
ゃ
。興行成績も伸びやしない」
それはモリスンの言葉だ
っ
た。彼はいつも金儲けのことしか考えてはいない。
(私はただの飾りなんだわ
)
テレビでは、モリスンフ
ァ
ミリー
の映像が流れていた。かわいい犬を連れた娘たちと笑
っ
て歩いている。
シ
ェ
リルは浴室に入ると、手首にカミソリをあてた。
モノクロー
ムのテレビジ
ョ
ンでは、僕らのニ
ュ
ー
スが流れている。彼女は大変な思いをしているだろう。元気な顔を確かめるだけでいい。そう思うと、いてもた
っ
てもられなくなり、彼女のホテルを訪問した。
ノ
ッ
クしたが返事がない。胸騒ぎがした僕は、フロントに頼んでドアを開けてもらうとそこには倒れたシ
ェ
リルがいた。
傷の浅か
っ
たシ
ェ
リルに大事はなか
っ
たが、精神的にまい
っ
ている。僕はできる限りのことをしようと決めて毎日通
っ
た。
元気を取り戻したある日、彼女はGエンター
テイメントとの契約を破棄すると申し出た。そこでモリスンとの真実も暴露したのだ。これがマスコミに漏れて、各社一面に報じられる。モリスンの人望は失われ、Gエンター
の株は暴落した。
ある日、シ
ェ
リルに業界二位のシネマワー
ルド社からオフ
ァ
ー
があ
っ
た。先方の申し出は、独占契約をする代わりに、Gエンター
との違約金を補填する内容だ
っ
た。彼女が同意の意思を示すと、シネマ社長のアレ
ッ
クスはモリスンと交渉した。
「『エンデ
ィ
ングは霧の彼方に』の配給権を譲
っ
てくれないか?」
このままでは配給もできないフ
ィ
ルムだ。経営困難に陥
っ
ていたモリスンは承諾をした。
「アレ
ッ
クス。もうひとつ条件を伝えるのを忘れていたわ」
「条件
……
? 何だね?」
「ルデ
ィ
とも契約をして欲しいの。それが条件よ」
彼は笑
っ
た。僕もそのつもりだ
っ
たと。
シ
ェ
リルた
っ
ての希望で、ラストシー
ンを撮り直した。ドアで二人が抱擁するシー