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第42回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
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脳VS脳
茶屋
 投稿時刻 : 2017.12.09 23:54
 字数 : 1187
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脳VS脳
茶屋


 ピンク色か灰白か。それは大した問題ではない。大した問題ではないのだが、こだわるやつはこだわる。
 俺はどちでもいい派を決め込んではいるものの、灰白のほうがすこしはかこいいのではないか思う。
 だから俺が今沈み込んでいるこの柔らかくてぬめりけのある組織は灰白の、脳だ。
 あのしわしわの、梅干しの種みたいなやつ。
 ゆくりと、ゆくりと、そしてずぶずぶとかどぷぬぷとかそんな擬音が表示されそうな心地を覚えながら沈み込んでいく。一瞬呼吸ができなくなた可能な錯覚を覚えるが、それはあくまで一瞬であり、錯覚だ。それを認識する頃には、この巨大な脳と一体化する。
 三年前、突然正体不明の敵が脳によて認識された。認識された瞬間、そいつらは敵となた。敵は圧倒的武力と破壊力で人類を滅亡寸前まで追い込んだ。そんななか、人類は秘密裏に対「敵」用決戦兵器を開発。一大反攻作戦に打て出た。
 そう、その対「敵」用決戦兵器がこの脳だ。

 びたん、びたん。
 脳が飛び跳ねるたびに、そんな荒野に轟音が鳴り響く。脳は低速移動するときは芋虫のように這いずて動くが、高速移動するとき飛び跳ねながら動くのだ。
 びたん、びたん。
 情報によれば敵の反応が認められたのはかつて大都市として栄えた廃墟群だ。
 なぜこんなところに敵は潜んでいるのか。敵の敵である我々人類の重要施設はそこにはない。
 罠であろう。
 作戦部の大方の見解もそのようにまとまたが、偵察機を送てみても対した成果は得られず、放ておくわけにもいかず脳が出撃する運びになた。大した決戦兵器だ。
 都市について、ずりずりと低速していると突然敵の反応が現れた。すぐさまそちらのほうに神経を集中させる。
 巨大な影が高層ビルの間から姿を見せる。
 そんな馬鹿な。ありえない。
 そこに現れたもの、それは脳だた。
 間違いなくそれは対「敵」用決戦兵器、脳だ。

 まるで間合いを詰めるかのように、脳はじりじりとこちらの脳へ詰め寄てくる。相手の脳は次第に戦闘色の色合いを増している。どうやら味方ではなさそうだ。
 敵も脳の開発に成功していたのか? だが、脳とどうやて戦えばいい。徐々に相手との間合いは詰まていく。だが、次の瞬間、背後からの衝撃を受ける。背後の神経を活性化させると、今度は脳が後ろにいた。
 どうやて一瞬で移動した? 脳が飛び上がた気配はなかた。こちらにはない移動機能を持ているのか?
 再び衝撃。
 また違う方向だ。
 速い。まるで認識が追い付いていない。
 認識?
 そうだ、脳は騙されやすい。これはおそらく、何らかの錯覚を利用したトリクだ。
 だが、そのトリクを説明するには制限時間がいささか足りないようだ。仕方あるまい。
 テストステロンのリミトを解除すると、脳からニキと筋骨隆々な腕が生え出でて、岩のような拳で大地を殴りつけた。
 廃墟の街は消滅し、敵の反応も消えた。
 やはり、暴力こそが正義だ。
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