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第43回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動6周年記念〉
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学生服はトイレの夢を見る
 投稿時刻 : 2018.02.17 23:05
 字数 : 1220
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学生服はトイレの夢を見る
ゆきな(根木珠)


 腹が痛い。
 かなり痛い。
 そろそろトイレに入らなければ僕は道端でもらしてしまい、その噂がまたたく間になぜか学校中に広まり、うんこまみれ男というあだ名をつけられ、高校を卒業するまで、あるいは卒業したあと同窓会でさえ呼ばれることになてしまう。一生うんこまみれ男だ。
 いやだ。
 そんなのは勘弁だ。
 だからお願いだトイレよ、空いていてくれ。
 そう思いながら僕はコンビニへ駆け込んだ。深夜のことだたのに、そのトイレにはすでに先客があた。しばらく待てみたがなかなか出てこない。しかたがないから他のコンビニへ向かう。しかしお尻は限界を迎えていた。
 やばい。
 やばいぞ。
 肛門にきと力を入れる。
 歩き方が不自然になる。
 道行く人々の視線が気になる。
 いやあの、違うんですよこれはきとなにかきとほらあれだ僕はこんなところで妙ちきりんな歩き方をしてはいるけれどもしかし僕は不審者でもなくましてや万引きしたわけでもなくただただトイレにいきたいというその一心で歩いているだけなのであてそんな顔で見ないでくれだて僕は……。は……、ここ信号長い……。ああ早く、青になてくれ……早く……。こんなに青色を求めたことは人生で初めてのことだ……。いい色だけれども……

 そのとき、暗い道の向こうから誰かが歩いてきた。女性のようだ。こんな夜中に大丈夫だろうか。しかし、なんだろう、近づくにつれ……なにか、どこかで見たような……。街灯に照らされたその顔をよく見ると、小泉景子である。小泉景子は僕にとてアイドル……いや女神だた。同じ進学塾に通ているのだが彼女はとても優秀で近寄りがたく、しかし僕はそんな彼女のをとが好きだた、おもに顔が。彼女はそしてこちらに向かてくる……いや……アイエエエ。待てくれ、今はだめだ、だてうんこをがまんしているこの歩き方を見られたら失望されてしまうではないか。話したこともないけど、それどころか最近はなぜか僕を見ると眉間にしわをよせてさと身をかわすようなしぐさをするけれど、彼女は僕にわずかでも気があるのかもしれない、それなのにこんな、奇怪な動きをする僕の姿を見たら彼女はきともう二度と進学塾のホワイトボードに何かを書いている最中に僕への愛をテレパシーで送てくれることも家にいるとき僕に会えないさみしさを鍵付きの日記に書くこともなくなてしまうだろう。
 であるからして僕は今すぐにその脇を知らん顔で通りすぎコンビニへと急がなければならずそうするとお尻の筋肉はより緊張させねばならずいよいよ危ないというときでさえそこに蛇がいようがぬえが出てこようがいかなければならないのでだから、
 あ
 違……
 小泉景子ではなかた。
 知らない人だ。
 よか……

 安堵して僕は、ついにもらしてしまた。

 そんな夢を見た。

 そう、これは夢……

 ……

 だたらよかたのに……




(おわり)

参考:『潜水服は蝶の夢を見る』
https://g.co/kgs/EcYGEJ

  
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