第43回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動6周年記念〉
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死ねばいいのに
(茶屋)
投稿時刻 : 2018.02.17 23:14
字数 : 928
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死ねばいいのに
茶屋


 私は彼の死を切望している。
 彼の死を誰よりも望んでいる。誰よりもというのは、彼の死を望んでいる人間なんていやしないだろう。彼は、誰からも好かれ、彼自身、誰をも愛している。
 まるで聖人君子。
 気味が悪いほどに。
 彼と私は幼なじみであり、人生に困惑し続けの私は、常に彼に助けられてきた。彼はいつも、泣き虫な助け、慰めてくれた。決断を厭い、何も選ぶことができない私に対して、的確なアドバイスをくれて、あるいは私に代わって選択してくれた。
 何も選ぶことができない。私だけでは何もすることができない。
 端的に言えば、
 私はクズだ。
 私は何もすることができない。
 何もかも、彼が助けてくれたから。彼が選んでくれたから。
 彼がいなければ何もできなかった私は彼のプロポーズを承諾せざるを得なかったけれど、そもそも彼が何故私を選んだのかはまったく理解できなかった。理解できなかったし納得はできないかったが、承諾はした。彼の選択を承諾することが私の人生であり、それ以外の生き方を知らなかったから。
「何故?」
 と問いかけてみても、彼は笑ってごまかすばかりだ。いつもなら、答えを用意してくれるはずなのに、この質問にばかりは答えを与えてくれない。
 それが、私を苛立たせる。他人にものを与えられるだけの癖に、そんなことで苛立ってしまうのは傲慢な事だろう。それは自覚している。そして、前にも言ったが私がクズであることも同様に自覚している。
 みんなが私を羨ましがる。
 なにせ、完璧な彼を手に入れたのだ。
 そうなのだろう。私はきっとこの上ない幸せ者なのだろう。
 社会的に見てみれば、統計的に見れば、私は幸福な人間だ。
 でも、私はちっとも幸せものじゃない。少なくとも、そういう類の神経伝達物質は、まったく出てこない。
 神経科学的には、私は不幸だ。
 私は考える。
 もし、彼がいなかったら。
 もし、自分自身で決断できる人生ならば。
 もし、私自身が自立して生きられるならば。
 勿論、結果は分かりきっている。野垂れ死ぬか、自殺しているだろう。私は決断も、自立もできるような人間じゃない。彼がいなければもっと立派になっていただろうなんて、自惚れを抱くほど自分を信じちゃいない。
 それでも。
 何かを期待し、夢見てしまう。
 だから、
 私は彼の死を切望している。
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