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゚+.゚ *+:。.。 。.世 紀 末 ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。
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〔 作品8 〕
世紀末UFOビーチボール仮面、誕生!
(
小伏史央
)
投稿時刻 : 2018.08.30 03:06
字数 : 2457
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世紀末UFOビーチボール仮面、誕生!
小伏史央
「ベントラー
、ベントラー
」
青年・藤巻ワタルは、ひとり砂浜でUFOとの交信を試みていた。時は世紀末である。ご
っ
たがえす海水浴客などを除外して考えれば、砂浜にはもはや人
っ
子ひとりいなか
っ
た。
ワタル青年は必死であ
っ
た。この終末の世で縋れるものなどひとつもなく、ただ、孤独の時間を埋めるのに必死だ
っ
た。
「すいませー
ん。ボー
ル取
っ
てくださー
い」
足元に転が
っ
てきた謎のビー
チボー
ルには目もくれず、ワタル青年はUFOとの交信を続ける。
そのとき! 願いが叶
っ
たかのように、空全体がぱあ
っ
と光り輝いた! 目も眩むような輝きだ! 足元のビー
チボー
ルが光を跳ね
っ
返し、まるでカラオケルー
ムで回るあれのように色を撒きちらす。
「うわなんだこれ。ミラー
ボー
ルみたいですね」
そうそうそれそれ。ボー
ルを取りに来た水着美少年が無邪気にもそれを持ち上げる。美少年のご尊顔が虹色に照らされた。空はまるで太陽がふたつ、み
っ
つあるかのごとく満遍なく輝き続けていて、さらに何本もの光線が駆け巡
っ
ている。その光線を受けたものはどれもミラー
ボー
ル状態にな
っ
ていた。
「ま、まさかUFOの襲来か!」
ワタル青年は空を指さす。空を覆う輝きの向こうに、わずかながら丸い輪郭が見えるような気がする。これはUFOに違いない。
『ふわ
っ
は
っ
は
っ
は
っ
は。その通りだ』
突然、その輪郭が強くな
っ
た。空を割るように、白銀の楕円体が姿を現す!
「うわ
ぁ
! 本当にUFOだ!」
楕円体の中央がぱかりと開き、中から蛍のような小さな光の粒が飛び出てくる。それは大きく旋回しながらこちらに近づく。そしてワタル青年と、依然ビー
チボー
ルを持
っ
たまま突
っ
立
っ
ている美少年の前に着陸した。
そいつは蜘蛛怪人だ
っ
た。
『我こそは宇宙第三連邦軍大隊長、クモー
ガである!』
八つの目をぎ
ょ
ろつかせ、ハサミのような口をしならせる。クモー
ガの登場によ
っ
て、砂浜を駆け巡る光線が、ワタル青年にはまるで蜘蛛の糸のように感じられた。
『青年よ、おぬしのメ
ッ
セー
ジ、しかと受け取
っ
た。この地球がいま終末の世にあるというのなら、我が連邦軍が取り仕切
っ
てやろうぞ』
「そんな
……
まさか本当に通じるなんて」
『光栄に思うがよい。おぬしは一級の奴隷として扱
っ
てやろう』
ワタル青年は、ただ、友達のいない寂しみをオカルトご
っ
こで紛らわせていただけだ
っ
た。海水浴場にだ
っ
て、家族に無理やり連れてこられただけで、本来ならば今頃家で「特選!オカルト映像
Vol.
2」を見ていたはずである。それがまさか本当に交信が通じ、よもやそのせいで人類滅亡の危機が訪れようとは。
ワタル青年は脱力した。こんなことになるなら、人のレビ
ュ
ー
を気にせずVol.
1から借りておけば良か
っ
た。
「まだ諦めるのは早いですよ!」
そこへ、威勢の良い声が入
っ
てきた。声の主は隣の水着美少年だ
っ
た。
美少年は虹色に輝いた顔のまま言う。
「こんな蜘蛛男、ぼくたちでや
っ
つけてしまいまし
ょ
う!」
『なんだと? 侮辱罪で叩き切るぞ!』
「さあワタルさん! このビー
チボー
ルを腰に付けて!」
訳がわからないままにビー
チボー
ルを受け取る。空の光を反射して輝いているのかと思
っ
たが、よく見るとそのボー
ルは自ら発光していた。
「さあ腰に!」
言われたとおりに、腰の前にひ
っ
つけるように持つ。するとビー
チボー
ルの輝きが止み、それはアメー
バのようにぐに
ゃ
りと歪んだ! 横長に変形し、ワタル青年の腰を一周する。
これぞまさしく、変身ベルトであ
っ
た!
「変身!」
片手を天に突き上げ、ワタル青年は叫ぶ!
ベルトが大きく伸び、繭のようにワタル青年を包んだ! 繭は穴の開いた風船よりも速く収縮し、人型になる。その頭はビー
チボー
ルだ
っ
た。
「世紀末UFOビー
チボー
ル仮面、誕生!」
ワタル青年改め、世紀末UFOビー
チボー
ル仮面は手を何度も握り直す。手の感触を確かめる度に、力がみなぎ
っ
てくる感覚を味わ
っ
た。
『むむ! 世紀末UFOビー
チボー
ル仮面だと!』
「覚悟です蜘蛛男!」
美少年が叫んだ。それを合図に世紀末UFOビー
チボー
ル仮面は蜘蛛怪人へと駆け出す。
ところが蜘蛛怪人は突如砂浜に座り込み、その腹から糸を吐き出した。世紀末UFOビー
チボー
ル仮面は咄嗟に横に跳び避ける。
「くそ! あれじ
ゃ
近づけない!」
「よし、ここは必殺技を打ちまし
ょ
う!」
「え、もう?」
「世紀末UFOビー
チボー
ル仮面の世紀末UFOビー
チボー
ル光線です!」
美少年の号令で体が動き出す。世紀末UFOビー
チボー
ル仮面はぐ
っ
と右肩を反らした。頭が沸騰し、視界がぼやける。直後すぽんと、ビー
チボー
ル(※頭)が首から発射された。高く高く世紀末UFOビー
チボー
ル仮面の頭が宙に上がり、しばらく上が
っ
た後に重力に従い落ちてくる。
世紀末UFOビー
チボー
ル仮面は反らした肩を大きく振りかざした。最高到達点で手とビー
チボー
ルが邂逅する!
「世紀末UFOビー
チボー
ル光線だ!」
ビー
チボー
ルの口がそう大きく叫んだ。
力強いスマ
ッ
シ
ュ
が光の速さで飛 ん で い く !
『ぐ、ぐわ
~
~
~
~
~
~
』
もろに食ら
っ
た蜘蛛怪人は、跡形もなく消滅した。
正義が勝
っ
たのだ。
「ありがとう。ワタルさん。おかげで地球は守られました」
美少年がワタル青年の頭を拾い上げる。変身は既に解除されていた。立ちぼうけていたワタル青年の胴体に、頭をド
ッ
キングする。
ワタル青年は目をぱちくりさせ、再び手をグー
パー
する。完璧につなが
っ
たようだ
っ
た。
「今更だけど、キミは
……
?」
「ぼくはハカセ。来たる終末に備えて仮面スー
ツの研究をしていました」
美少年ハカセは、ワタル青年へと手を差し出す。
「まだ戦いは始ま
っ
たばかりです。ワタルさん、一緒に世界を守りまし
ょ
う!」
ワタル青年は水平線を眺める。空を覆う輝きは収まり、UFOもどこかに消えていた。しかしあの空の向こうには、地球の存亡を脅かす者たちが所狭しとひしめいていることだろう。
「ああ、戦うよ。こんなに孤独な時間を忘れられたのは初めてさ」
力強く、その手を握る。
こうして、世紀末UFOビー
チボー
ル仮面の長い長い戦いの幕は切
っ
て落とされたのだ
っ
た。
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