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3月うさぎの「スイーツ感想」お茶会
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ポイズン
 投稿時刻 : 2019.03.27 02:01
 字数 : 886
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ポイズン
小伏史央


「オーホホ! ついに、ついにこの日がやてまいりましたわ。そう! 今日はこのわたくしのお誕生日。親族が一堂に会して、このわたくしの優雅でフラスな18の誕生日を祝てくださるのですわ!」

 令嬢は周囲に誰もいないのを確認してから、食器棚の奥から紙箱を取り出した。紙箱を開け、おそるおそる手を伸ばし、中にあたものを天に掲げる。それはシトケーキだた。

「ああ! シトケーキ! 魅惑のその響き、かおり、味! どんな味なのか、わたくしにはわかりませんが、ご学友たちが美味しそうに、とても美味しそうに食べているのを! 何度も何度も、そう! 何度も何度も目にしてきましたわ!」

 令嬢はシトケーキを手の平に載せたまま、俯き肩を落とす。しかしすぐに前を見据え、シトケーキが目の前にくるように腕を伸ばした。

「けれどそれも今日まで! 今日で、わたくしはシトケーキの味を知るのですわ! そして親族の全員も! ああ、その瞬間が楽しみで楽しみで気がくるてしまいそう!」

 令嬢は厨房を見渡した。巨大なテーブルには既に誕生日会用の料理が何品も用意されている。親族たちも続々と集またようで、大広間のほうが賑やいでいるのがここからでもわかる。令嬢がここに忍び込んだのはシフたちが出払い、配膳係の者がやてくるまでの間の時間だた。

「さ、今のうちに!」

 令嬢は手の上のシトケーキをつまむようにしてちぎり、欠片をテーブル上の料理に次々に仕込んでいた。見てもわからないように、少しずつ。すべての皿にシトケーキを仕込んでいく。

「できましたわ! これで、気付かれずに親族全員がシトケーキを食べてしまう! ああ、なんて罪深い! でもそれもこれもわたくしに甘味を禁じたお父さまとお母さまが悪いのですわ! 何が我が一族は砂糖に呪われているですか! 甘味をひとかけらでも食べたらたちまち死んでしまうだなんて、そんな迷信、時代遅れなのですわ! もう平成も終わろうというこのときに、血の掟なんて守てたてしうがないのですわー!」

 オーホホ! と、令嬢はふたたび高笑いを上げた。
 ひとつの時代が、終わろうとしていく。
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