てきすとぽい
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第53回 てきすとぽい杯
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〔 作品12 〕
私の木と神隠し
(
金銅鉄夫
)
投稿時刻 : 2019.10.21 20:00
字数 : 444
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私の木と神隠し
金銅鉄夫
境内が屋台のライトで照らされ、夜にな
っ
ても子供たちの声が聞こえる。今日は年に一度のお祭りの日。「昔は鳥居の外まで店が出てたのよ」何度も聞かされたお母さんの言葉を毎年思い出す。
お祭りに合わせて里帰りをする家族も多く、過疎化が進むこの村が一番賑わう日。
孫を連れたおじいち
ゃ
んおばあち
ゃ
んの笑顔。みんなし
っ
かりと手をつないでいる。私も友達が増えたみたいで、なんだか嬉しくなる。
夜が更けてくると、男女がライトから遠ざかるように社の裏手へとや
っ
てくる。
ときには槐の木のすぐそばにも来ることがある。なんとなく見てはいけない気がして、はじめのうちは目を閉じて、両手で耳を塞いでいた。だけど、微かに聞こえる音に好奇心を刺激され、薄目を開けてしま
っ
た。それも懐かしい思い出。
慣れてしま
っ
た今では、なんとなく背を向けて二人が去るのを待
っ
ている。一定のリズムで聞こえてくる呼吸も、春の雨や夏の蝉と同じように、風物詩みたいなもの。
このお祭りを、あと何回見るのだろう。
槐の根本に私の身体は埋ま
っ
ている。他にも七人。
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