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第58回 てきすとぽい杯〈夏の特別編・前編〉
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あんた、邪魔。
 投稿時刻 : 2020.08.16 18:16
 字数 : 2499
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あんた、邪魔。
ポキール尻ピッタン


 男子からJELLYの宮瀬いとに似てるとか言われてさ、ちやほやされて調子に乗てるE組の榊原がなんだかムカつく。あたしから見ればあんなのただの一本まゆ毛だし、目つきは悪いしババア顔だし、真黒なロングの髪先だけ少し巻いているのが色気づいてて気持ち悪い。休み時間に勉強なんてしているやつが、オトコなんて興味ないて澄まし顔をしてるやつが、なんであんなにモテるのかまたく理解できない。ユニブロー・ムーブメントなんて栃木の高校まで届くはずがないんだからさ、男子たちはいいかげん目を覚まそうよ。そいつ顔がクドいだけの地味な女だから。
「あんた最近さ、康晃とよく話してるじん。なに? 気があるわけ?」
 俯いたままあたしと目を合わせない榊原は、リスがエサを食べるみたいに頭を小さく振て否定した。
「そんな態度されると、あたしがいじめてるみたいに見えるじん。顔上げてはきり答えなよ」
 背中を丸めて被害者のふり。周りにアピールしてるんでし、助けてて。ほんと気に入らない。廊下に男子がいぱいいるけど、ひぱたいて泣かしてやろうかと思た。
「好きだとか、そういうんじなくて、その、共通の趣味で仲良くなて」
 「へえ、そうなんだ」
 二人だけの秘密ぽく話すものだから、余計に頭に血が昇た。
 D組の後藤康晃とは去年文化祭実行委員会で一緒になてから、ずとあたしといい感じなんだ。金曜日の放課後、康晃は図書室であたしに勉強を教えてくれている。土日はカラオケとかで何度も一緒に遊んだこともある。学校で噂になてるんだから、あんたも知ているでし? 邪魔しないでよ。
「面白そうじん。あたしも混ぜてよ。康晃の趣味て、どうせサカーでし?」
 夏に部活を引退してから康晃はサカー部の想い出を語ることが多くなた。平気な顔をしていてもやぱり寂しいんだろうなと、あたしは努めて優しい微笑みを作て聞いてあげている。
 でもなんか変だ。友だちの話だと、こいつはクラスのラインからハブられているはず。そんなやつが康晃と個人的に連絡を取り合ているとは、謎。
「いえ、サカーなくて、その、私昔からSNSいろいろやてて、情報を集めるのが得意というか趣味で。本当にたまたまなんです。後藤くんが大学について知りたいことがあるて聞いちて、私のフロワーさんが以前そのことを書いていたから、それで教えてあげたというか、後藤くんもツイターてるていうから、相互フローしただけの話で」
 康晃がインスタやてるのは知てたけど、ツイターは知らなかた。てか、興味ないて前に言てた気がする。ざけんな、嘘じん。
「はあ? 聞いてないんですけど。とりあえずあんたのツイター教えな。あとやり方も」
 こき使てやろうと思たのに、榊原は目を細めて口元を嬉しそうに緩めた。ドMかこいつ、卒業まで思う存分パシらせてやんよ。でも話してみたら思てたよりいいやつだた。頭いいだけあて、あたしが納得するまで操作を教えてくれた。こんなに便利なら康晃が都合よく使ているのも理解できる気がした。

「いや、一応友だちなんだけど」
 自分から榊原は都合のいい女だと言てくれれば安心するのに、康晃は困たような顔であたしの期待を打ち砕いた。ノートや教科書をいつもよりも雑にバグへ投げ込み、なんだか怒ているみたいだた。
「なんで? あいつが人気あるのて使えるからじないの?」
「そんな言い方するなよ。話してみるといい人だぞ、榊原さん」
 知てるよ、あたしも思たもの。でも康晃がそれを言駄目でし。いいかげんキレるよ。
「康晃、感じ悪くない? ツイターてるの教えてくれなかたし」
「サカー関係しかフローしてなかたからだよ」
「でも榊原とやてんじん」
 周りを見渡した康晃は口をへの字に曲げて、無言で図書室を出て行た。あたしは先生が止めるまで大声で泣きじた。見返してやろうとあたしに誓う。

 友だちに聞いたら、エチい画像を上げればフロワーが増えるて教えてくれた。榊原はやめたほうがいいて説教してきたけど、もうあたしはあんたの言うことなんて聞かない。敵だもの。あたしから康晃を遠ざけようと企んでいるに決まてる。
 暑いねて去年の水着写真をツイートした。悪口を書いてくるやつもいたけど、ほとんどは誉めてくれた。あたしてイケるんじね? マジでそう思た。お風呂で足を伸ばした写真をパシリ。綺麗だねてみんながあたしを持ち上げる。お姫様じん、最高。康晃見てるでし? あたしていい女なんだよ。
  ロワーが二千人超えたのに、康晃が好きそうな話をラインで教えてあげたのに、もう二日も既読無視。榊原と同じことをしているのに、なんであたしの扱いはこんなに酷いの? 見ず知らずの男たちは写真を上げればみんな誉めてくれる。好きな人には相手をされないのに、どうでもいい連中からは「会いたい」てダイレクトメールが届く。人生て上手くいかないものなのね。あたしこんな若さで人生悟てるよ。
 膨らみが分かるように、パジマの襟元に胸を寄せて一枚パシリ。きとまたほくろがセクシーだねて、おさんからのリプが届く。鬱陶しいしすごく冷める。もう、ツイターなんてやめちおうかな。
 スマホの画面を流れる無意味な文字列。ツイターは呟きて意味だと榊原は教えてくれたけど、あたしには誰かに伝わて欲しい言葉のように思えちう。神様なんてこれちも信じてないけど、あたしはなんとなく自分と康晃の運勢が知りたくて、ツイターで目についた占いのリンクを押していた。
 目が覚めたらリプとラインの通知がたくさん来ていた。ツイターが変だよと教えてくれた友だちの言うがまま、意味も分からずツイターを開くと、あたしはレイバンのサングラスの広告を寝てる間にツイートしてた。フロワーがいつのまにか三百人ぐらいまで減ている。なにがなんだか分からない。ダサいテアドロプ型のサングラスなんてまたく興味がないのに。涙を流したいのはこちだよ。
 助けて康晃。もうあたし無理。
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