てきすとぽい
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第58回 てきすとぽい杯〈夏の特別編・後編〉
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〔 作品11 〕
泣き女~夏の終わり・最後の蝉
(
すずはら なずな
)
投稿時刻 : 2020.09.05 01:40
最終更新 : 2020.09.05 09:21
字数 : 1087
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2020/09/05 09:21:48
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2020/09/05 09:21:03
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2020/09/05 01:45:41
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2020/09/05 01:43:28
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2020/09/05 01:40:57
泣き女~夏の終わり 最後の蝉
すずはら なずな
「実は知り合いだ
っ
たとか?」
斎場の庭の玉砂利を踏む音がして、後ろから声がした。
妹だ。遠巻きに僕とその人の話す様子を見ていたらしい。
どれだけぼんやりしていたのだろう。見回すともうさ
っ
きの婆さんの姿は無い。暑か
っ
た陽射しも少し和らいで、近くで鳴いていたツクツクボー
シが最後の一鳴きを残し、飛び去
っ
た。
「祖母ち
ゃ
んの幼馴染らしい。『最後の泣き女』、の娘だ
っ
て。」
──なに、それ?
言うのとほぼ同時に 妹はいつも何処でもいじ
っ
ているスマホでさくさくと検索したかと思うと、早くも目についたサイトを読んでいる。
「う
っ
そ
ぉ
、妖精さん?しかも、もうすぐ死人が出る家に現れて泣くんだ。でもさ、あの人
っ
て葬式に来たんだよ、順番違うじ
ゃ
ん」
──まさか これから誰か死ぬのかな。縁起でもない。
目はスマホ画面へ向けたまま、妹はぶつぶつと言い続ける。
「だからさ、あの人は、そういうのじ
ゃ
なく」
僕が言い切るより前に、妹は先を読んで続ける。
「なんだ、違う、違う。妖精さんは綺麗なお姉さんだし。ほら見て、お婆さんなんかじ
ゃ
ない」
僕の袖を引
っ
張
っ
て、掲載されたモデル風の女性の画像を示して来る。かなりな見当違い。
「そういう『泣き女』じ
ゃ
なく、ほらこ
っ
ち」
僕がその先の選択肢を指し示す。「葬儀で泣くのが仕事」の方だ。
──ああ、こ
っ
ちね、なるほど、なるほど。
まるで解
っ
ていたかのような返事をしながら文字を目で追い、妹はまた、す
っ
とんき
ょ
うな声を上げる。
「呪術とか 悪魔祓いとか
っ
て、書いてあるよ。じ
ゃ
あ、あの婆さん
っ
て魔女の類?」
コイツのものの理解の仕方には、ついて行けないことが多い。
「でも、不思議よね。今日のこととか誰も連絡してないんでし
ょ
?お母さんもあの人のこと知らない
っ
て言
っ
てたよ」
そう、僕だ
っ
てず
っ
と感じていた。
祖母と同じ、遠い田舎の言葉を使うあのお年寄りが、一体どうして今日ここに居たんだろう。祖母に手紙を貰
っ
てた
っ
て言
っ
てたけれど、それでも疑問は残る。
妹の言葉に引きずられた訳じ
ゃ
ないけれど、もともとそんな婆さんなんて居なか
っ
たんじ
ゃ
ないか、そんな気さえしてくる。だけど、ぽんと叩かれた手の感触はまだ背中に残
っ
ている。
──『泣き女』はタマシイを送り、『泣き女』は遺る人を癒す。だけど『泣き女』だけじ
ゃ
ない、島の『おばあ』は皆、不思議な力を持
っ
ているのよ
丈高い木々が静かに歌うような音を立て風に揺れる。見上げていると 遠い日、祖母が僕の手を包み込んでそう言
っ
たこと、その手の温もりが僕の心を安らかにさせたことを思い出す。
「お兄ち
ゃ
ん 今頃、泣いてるし」
妹がごそごそとバ
ッ
グの中からハンカチを取り出して差し出した。
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